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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「Why Aoshima?」紫電11型 序章

 零戦、コルセア、ヘルキャットと続いた”お気楽ナナニイ筆塗りシリーズ”である。
次はワイルドキャットとも思ったが青い機体に星のマークばかりも飽きがきた。ヘルキャットのライバルといえば戦場では零戦52型、ではあるものの登場時期、性能、規模などを考えればもっともふさわしいのは「紫電」だろう。そこで選んだのがこのキット…

え?タミヤじゃないんすか?なんでアオシマなんすか?ひょっとしてアホなんですか? という声が聞こえそうだ。

確かに1970年代を小学生で過ごした自分のようなモデラーにとって、「アオシマ のプラモデル」というフレーズはある種の意味合いをもってその耳に響く。それについては前回書いた通り。

sigdesig.hatenablog.com

そのアオシマ が21世紀間近になって突然1/72の紫電紫電改を発売したのである。紫電改が先だったか、紫電が先だったかは記憶がない、さらに言えば20世紀だったか21世紀だったかも定かではない)自分は半信半疑で模型屋の店頭で箱を開いてみて驚いた。ハセガワやタミヤを彷彿とさせる繊細なモールドと豊かなディティール。そこにはアオシマの本気が満ちていたからだ。

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アオシマは生まれ変わったのだ。聞けば前述のウォーターラインシリーズでも古いキットがリニューアルされ(ビスマルクも!長門も!)もはやシリーズの中核的な存在らしい。子供向けの手頃で楽しい”組み立てるオモチャ”路線ではなく、大人向けのスケールモデルへと舵を切ったのだ。ようやく、ではあるが……まあ、最近の子供はゲーム機ばっかでプラモデルなんか見向きもしないからナァ……

自分はアオシマ紫電紫電改に驚きはしたけれど、その時はキット購入には至らなかった。すまんアオシマよ。仔細に観察すればタミヤセガワには一歩も二歩も及ばぬところもあるが、理由はそれではない。その頃の自分にとって1/72というスケールに"今さら感"があったのだ。大戦機の場合、世間的にはスケールは1/48がメインとなっていた。実際、展示会などで広いスペースに並べると1/72では小さすぎてゴミ扱いされる。

昨今ではそれがエスカレートしてしまってスケールは1/32がベター、なろうことなら1/24などという凄まじい事になっている。1/32のモスキートをみんなで作って並べよう、なんて話が出た時には自分は目を回しそうになった。

「より精密に、より大きく、よりゴージャスに」というのがメインストリーム。色々チンケな自分であるからしてもうそんなロイヤルスーパースペシャモデリングは遠くから指を咥えて眺めているほかない。

最近の自分は「お気楽ナナニイ筆塗り」に活路を見出し「精密さよりも味わい、大きさよりも並べる楽しさ」で1/72の零戦、コルセア、ヘルキャットと作ってきた。キットそのものの出来にはこだわらず、あえて2線級を選んでいる節もある。(コルセアはタミヤだけど在庫優先でしたので)

さてこの度のアオシマ紫電である。

もはや1/72であることに購入を躊躇する理由はない。むしろ好都合ではないか。出来のいいタミヤでなくアオシマを選ぶのも「お気楽」でヨイヨイ。実機のメーカーが三菱や中島といった超一流ではなく2線級の川西であったという事実と符合して面白かろう。紫電は史実でもフィリピンに展開しているからゼロコルヘルと続いた「南太平洋上空の日米艦上戦闘機」繋がりでもある。

つまり”アオシマ紫電”は自分の次のターゲットとして格好の素材ということになる。

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甲型を選んだのはタミヤ甲型に対抗して、ではなく、台湾やフィリピンに派遣された機体という理由もあったが、日本機離れした翼下のゴンドラ機銃が紫電らしくて好きだから……なんでも見た目が大事なのです。 さあ作ろう。

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甘酸っぱい青島の思い出

青春ではなく青島です。都知事のじゃなくて事件は現場で起きてんだの刑事でもなくてプラモデルのアオシマ、です。

自分がプラモデルを作り始めた1960~70年代前半は電動可動全盛期であった。戦車も車もモーターかゼンマイでビューンと走ってはタンスに激突し、戦艦は艦底に”マブチ水中モーター”を抱えて池の真ん中であえなく転覆し、飛行機はブンブン空を飛び回る…のは無理なので脚が引き込んだりモーターでプロペラが回ったりする、そんなキットが当たり前だった。

プラモデルというのは動かして遊べることに重きを置いた”自分で組み立てるオモチャ”的な存在であったのだ。

そこに実機実車の”正確な縮尺模型”という精密スケールモデルの時代がやってきた。タミヤの1/35”ミリタリーミニチュアシリーズ”が幕開けだったと思う。宇宙戦車ビーグルだのキングアトラスだのを作って喜んでた自分はこのシリーズの”シュビムワーゲン”か何かを模型屋のオッチャンに勧められて買って「で〜っ、これ動かへんやつや〜ん!!」と地団駄を踏んだのを覚えている。

しかしこの”動かへんプラモ”がやがて模型界の主流になる。飛行機モデルもハセガワやタミヤグンゼレベルなどのリアルなスケールモデルが大勢を占めた。脚は引き込まないし風防もスライドしない。フラップもエルロンも固定され、動くのはプロペラくらいのものだった。

”お子ちゃま”だった自分もプラモを組み立てても、もう走り回らせたり爆竹で吹き飛ばしたりせずに、そうっと本棚などに飾ってシュッとしていたものだ。(シュッとする=関西弁で「垢抜けている」などの意味)

そんな中で、アオシマ社だけは60年代の”子供達のための楽しいオモチャ”的路線を守った。他社(イマイやバンダイなど)が版権を取ってテレビのヒーローなどをモデル化したのと違って、アオシマはどっかで見たような合体ロボットや怪しげなSFメカなどをせっせと出していたのである。

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こーいうのとか…デンジンザボーガーやん

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こーいうのとか…キャプテンスカーレットやん

悪く言えば子供だましだが、好意的に見れば価格を抑えて子供に買いやすくしたとも言える。また可動パーツ盛り沢山の飛行機模型なども60年代当時のまま販売し続けていた。1/72の”烈風”や”五式戦”、”紫雲”など他では見られない機種があり、自分は心踊らせて作ってはみたものの、間延びしたフォルムやガタガタ動く可動部の大きな隙間に物足りなさを感じた。

自分で作った烈風を見ながら「ほんまにこんな形しとったんやろか〜」と不満げに口を尖らせた記憶がある。いつのまにか”ただのガキ”から”マセガキ”になっていたのだろう。

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アオシマ1/72 烈風 この頃は”烈風”が戦争に間に合えばヘルキャットもP-51も屁のカッパ、だと信じていた。

さて当時、級友の間では静岡の模型メーカー四社の共同企画である”ウォーターラインシリーズ”という艦船模型がブームになっていた。これはクラスに「利根さん」という瞳の可愛い女の子がいたから、という訳ではない(僕はどちらかというと「村上さん」の方が好みだった)

ある時、友達のY君と一緒に近所のプラモ屋でウォーターラインの駆逐艦を買った。マセガキな自分はちゃっかりタミヤの”吹雪”あたりを選んだが、Y君は「名前がかっこエエし!」とアオシマ製を買った(おそらく”ユキカゼ”か何か)

そしてY君の部屋で一緒に作り始めたわけである。ファンタ・グレープとサッポロポテトなんかを食べながらワイワイと。しかし1/700の駆逐艦というのは船体もパーツも小さく、初心者の小学生には実はハードルが高いシロモノである。 かえって重巡あたりの方が作りやすいのだが、月に150円ほどの小遣いでは駆逐艦買うのがやっとなんだから仕方ない。

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と言っても自分はほどなく完成した。だってタミヤだから。畳の目を波に見立てて「魚雷発射ー!」なんてやって遊んでいる。その横でY君のユキカゼは全然進んでいない。やたらバリがあったり、砲塔のパーツ穴が小さすぎてうまくはまらなかったりするわけですな。

イライラがつのっていたのだろう。しまい目にはY君カンシャク起こして「もーっ!でけへーん!!」と叫ぶやユキカゼの船体を両手で握ってペキーッとへし折ってしまったのだ…

……なんも折らんでもええやんか〜とは言ったものの、まあ気持ちはわからんでもない。

数年ののち、自分もつい買ってしまったウォーターラインのアオシマビスマルクを製作していたところ、友人がタミヤシャルンホルストを先に完成させてしまい、共通なはずの副砲の精度の差を見た自分は製作意欲をあとかたもなく粉砕され、Y君と同じ悔しさを味わうことになる。さすがにビスマルクの船体はヘシ折るには大きすぎたので思いとどまったが……

…そしてそれ以降の模型人生において注意深く”Aのマーク”を敬遠してきた自分だったが…

[この項つづく]

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中心性漿液性網膜脈絡症

ちゅーしんせーしょーえきせーもーまくみゃくらくしょー

こんな早口言葉かお経かわからないような単語がすらすらと出てくるのだからお医者さまとは全く頭のいい人なのだと感服した。自分よりも少し年上の優しそうな目をした眼科医師は、検査結果を見て冒頭の病名を言い放つや、間抜け面を下げている自分にスラスラとメモに書いて渡してくれた。漢字を見たところでよく分からないのは同じだ。眼球の中の網膜と脈絡膜の間に水が溜まる病気だという。

水が溜まっていることで網膜の一点が押し上げられる。カメラのレンズでいえば焦点距離が狂っているので必然的に片方の目の視力だけが落ちる。フィルム面に凸凹があるから、方眼状のものを片目で見るとグニュグニョに歪んで見える。さらに黒いもやもやが浮かんでいる。白いバックになるとそれがハッキリとした黒い円形に識別できる。

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気づいてからもう数週間も続いている。なんだか右目の調子が悪いなと感じたのは半年くらい前だったと思う。めがねが合わなくなってきたんだと思って作り直すつもりが例のコロナ騒ぎで伸び伸びになっていた。 

「ここんとこ異常に目を酷使したからです、ブログネタでプラモデルを作ったりして、それも筆塗りで4mm角の機番を描いて、性悪女のヘルキャット姐さんに毎晩のように…」

などとカミングアウトしかけたが、女医さん(でした)はそれを優しく制して「目の酷使は関係ありません。この病気はワーカホリックと呼ばれる人に多く見られるもので、主に過労からくるものです」

はてね。自分は首をひねった。この数ヶ月はコロナ自粛でむしろ暇である。そもそも自分はワーカホリックにはほど遠い人間だ。むしろ穀潰しなんじゃないかと内心ビクビクしながらひっそり生息している方だ。そう言うと「そーれはまあ誰しも精神的ストレスはありますから」と苦笑しつつ諭された。

ほっておけば勝手に治るものであるとのことで少し安心した。ただし非常に再発しやすいという。右目の違和感は結構前からだからことによると再発しているのかもしれない。確かにここ数年からちょうど半年くらい前にかけては、ヒヒみたいな小役人やサルみたいなエゴ客やらに追いまくられていた時期だからそのせいにしておく。

再発の場合の治療方法としてはレーザー照射が一般的だが自分の場合はちょうど視点の中央に発生しているので使えないのだそうだ。光反応性の溶剤を点滴で流し込み目に光を当てて治療する方法もあると言う。ただしこれは入院が必要で費用もかなりかかるらしい。せっかくもらった特別給付金が泡と消えてもまだ足らぬかもしれない。あまり嬉しくない話だ。

お薬をもらって数カ月から半年様子を見る。長丁場になる。最後に「肉体的精神的疲労がよくないのです、十分休養をとってリラックスしてくださいネ」と泣けることを言ってくれる。「そいつが出来りゃあ苦労はねえさ」と心中で呟いて眼科を後にする。

さてそういった目玉状態だが日常生活で困る事はあまりない。

遠近感が狂うので食べ物を箸からとり落す、麦茶のコップをなぎ倒す、くらいのことはある。もとから乱雑でウロンな人間なので誰も気にしない。ただし急にめまいに似た感覚を覚えフラつくことが増えた。階段を下りる時などは気をつけている。車の運転は思ったよりも支障はない。ただし長時間になると目が疲れて肩が凝る。自転車もバカみたいなスピードさえ出さなければ平気だ。

問題はバイクである。右コーナーそれも深いヘアピンなどはほとんど当てずっぽうで回っている気がする。高速道路のインターのランプでは回り込んでいる内に平衡感覚を失う。単車は繊細な乗り物だと身にしみた。これでは危なっかしいのでしばらくバイクはお預けだ。

造りものやプラモデルなどは倍率の高い拡大鏡でなんとかなっている。ただし精密な作業は辛いし、スジボリやリベットやマーキングがどうしても歪んでしまう。まあ、もともとその程度の腕ではあるのだが。筆塗りに移行したのはいいタイミングだったかもしれない。もう一線級の精密な作品など無理だ。まあ、もともとその程度のモデラーだが。

ディスプレイ画面の特に高精細の動きの激しい動画は見ていてクラクラする。ひどく疲れて1時間が限界、これは腰痛の限界と同じ。眼と腰でぴったり息があってやがって最強最悪のタッグ。なので映画はお預け。わんわん。テレビはほとんど見ないのであまり痛痒を感じない。

パソコン作業も苦手だ。画面の設定をNight shiftにすると多少良いことがわかった。ただしほとんどセピア色なのでデジカメの画像の補正などは全く出来ない。カメラもフルオートのAFに頼りきり。それじゃつまらんわけでカメラもお預けだ。わんわん。

あとはスマホが見辛い。コロナ関連でケンケンガクガクと批判の応酬しているようなTwitterはまず開かなくなった。毎日のように仕事の愚痴や買い物自慢などをつらつら連ねるブログなどウンザリだ。昭和のオヤジギャグに溢れた長いプラモ記事も嫌になる。無論これらは正常な眼をもってしても尻尾を巻いて逃げ出したい類かもしれん。きゃんきゃん。

じゃあこんな下らない文など書かないで目薬でもさして寝ておれば良いではないかと言われそうだが実はこれ、音声入力なんです。

実用的なレベルには達していて、ここまでこの音声入力に夜5時脱字または誤変換の類は0と、褒めた途端に誤変換してくれているのだからまぁiPhoneの音声変換はややお茶目なところがあるのかもしれない。とは言え文章を検討したり推敲したりするのには読み直さないといけないので短くて良い文章は望むべくもない。

総じて趣味の大半はしばらくお預けとなったわけだ。わんわん。片目で出来ることなんて今の所ウインクくらいしか思いつかない。今さらそっち方面に趣味の方向を変えられないので、坪庭で燻製などしている今日この頃である。

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南太平洋の覇者

完成したヘルキャットを南太平洋で戦ったライバル達と並べてみよう。

同陣営のライバル比較

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初飛行はコルセアが二年も先。ところが野心的な設計が仇となって実用化に手間取り、平凡で手堅い設計で順調に開発が進んだヘルキャットに詰め寄られた・・・とは巷間よく言われることだ。実はコルセアの開発は誕生間もないダブルワスプエンジンの不具合解消にその多くが割かれた面もあるらしい。

コルセアが苦心して熟成したエンジンをちゃっかり頂いたヘルキャット、という事になる。「このドロボウ猫め!」とチャンスボード社が叫んだかどうかは定かではない。

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同じエンジンを積んでるとは思えないサイドビュー。プロペラボスの高さがほぼ同じなのが興味深い。

チャンスボード社の野心

「最もパワフルなエンジンに最も大きなプロペラをつける。主翼は空力面で理想的な中翼配置。これで我々は最強の艦上戦闘機を手にする!」

「閣下、中翼の長い主脚は着艦時に折れて危険です。プロペラが接地する恐れも…」

「わははは!翼を逆ガルにすればよい。それで全て解決だ!」

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「テストの結果、逆ガル翼は着艦時の失速特性が良くないようです閣下!」

「ふむ、私は楽観的だよ。スポイラーを付けて対応するのだ!」

 「閣下、タンクの主翼配置は被弾時に危険だという欧州戦線の戦訓が…」

「タンクは操縦席を後ろに下げてその前に配置する!素晴らしいスタイルだ!」

「ガソリンが漏れて操縦席に入ってくるとパイロット達からクレームが出ております」

アメリカ人ならそんなものには負けないはずだ。シーリングを貼っておけ!」

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パイロット達が着陸時の視界が悪いと申しております」

「またか!…良いことを思いついたぞ、パイロットに操縦させるのを止めればいい!」

「閣下、そんな機体が飛ぶのは50年くらい先になります」

「私はタフだがそこまで気長ではない。キャノピーを大きく、尾輪脚柱を長くする!」

「閣下、海軍がこれでは空母では使えんと言ってきております!」

「海軍がダメなら海兵隊に売り込めばいいではないか!」

 …この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは全く関係ありません…

京都竹屋町通り西入ル 蔵万鉄工所

「もうせんだっての山猫はんとおんなしでエエやんなあコレ。エンジン大きいしてー羽根ひくしてー」

「社長はん、そらよろしけど大きなフィレットがいりますえ」

「ほたら、その羽根なあ、ちょーっと上に付けてみ。ほで胴体断面をペタンコにしたら、デヤ?」

「いーや、社長はん見とおみ、プロペラと地面の間がキツキツやええ」

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 「どこにいい?うわエラ当たりやんかいな。こらエンジンの位置を上げんなんなあ」

「カウリングの下どないしやはりますん?がらんがらんなりますえ社長はん」

「せやなあインテイクでもつけとこいな。後ろは燃料タンクごっついごっついのんにして、ホイデその上に兵隊さん乗ってもらおか」

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 「景色よう見えて良ろしなあ社長はん、せやけど空気抵抗増えてスピードよう出えしまへんやろ」

「かめへんかめへん。こいでゼロ戦より速いねんさけ、600出たら上等上等。上等舶来や」

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「脚柱もエろう長ごうなりましたな」

「まあ折れんように太しとこか」

「ええけど重とおになるんちゃいますやろか」

「かめへんがな、ちょっとくらい。もともと肥えたはんねんし」

  …この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは全く関係ありません…

 

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結局、空母機動部隊は扱いやすいヘルキャットが主力となり、コルセアは着艦性能の悪さゆえ海兵隊の陸上基地に配備され対地支援任務に回される、、、とは何度も書いた通り。

しかし戦争末期になってコルセアの空母運用が可能になると一転して米海軍の主力機となる。太平洋戦争が終わるとヘルキャットは帰国途中の空母の甲板から閉店後のマクドナルドのポテトのように海中に投棄された。一方コルセアはその後も生き永らえて、朝鮮戦争ではMig15撃墜まで達成している。 

 零戦52型との比較。

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まさに大人と子供…

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全備重量ヘルキャット5.7tに対し零戦は半分以下の2.7t  f:id:sigdesig:20200628175034j:plain

1200馬力と2000馬力、最大速度で30~50km/hの差。

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ヤンキーの高校生二人にカツアゲされるメガネの小学生、といった雰囲気。

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コルセアは初登場時に「バレンタインデーの虐殺」で零戦にずいぶんな目にあわされている。相手は最強を誇ったラバウル零戦隊、当時の米軍の平均的なパイロットではクセの強いコルセアは扱いずらく速度の優位性を活かせなかったのではないか、と言われている。

一方ヘルキャットは逆に「マリアナ七面鳥撃ち」で零戦をバタバタ叩き落とす。…どちらもアメリカ人特有の大げさな言い回しにような気もするが…

ヘルキャットは他の連合軍機と違って運動性能も優れており、逆に重量が増えた零戦52型以降は得意の旋回戦に持ち込んでも逆転することが難しくなる。

なによりベテランパイロットの多数の損失が日本海軍にとっては最も大きな戦力低下となったのだろう。

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零戦のマーキングは44年グアム島の部隊、ヘルキャットは同時期にマリアナ戦に参加したホーネット搭載機。この両機は実際にあいまみえた可能性もある。特に意図したわけでもなく偶然の結果なのだが、南太平洋の上空でこんな死闘が繰り広げられていたのかもしれない。

 

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完成品画像 F6F-3 ヘルキャット ハセガワ1/72

F6Fグラマンヘルキャットは1942年6月に初飛行しました。同時期に初飛行したのはホーカー・テンペスト紫電などがあります。

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2000馬力のP&W ダブルワスプ、F4Uコルセアと同じエンジンを搭載。胴体には巨大な燃料タンクが内蔵され、その上の高い位置に配置した操縦席が特徴の機体でした。

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新奇で野心的なコルセアに対して保険機として手堅く無難にまとめた、といわれるヘルキャットですが、立体として手にしてみると同社のF4Fワイルドキャットとほぼ同じコンセプトの正統進化形ということに気づかされます。

f:id:sigdesig:20200626165306j:plain主車輪の幅が狭く着艦性能に難があったワイルドキャットの中翼レイアウトを低翼化し、タブルワスプエンジンを搭載すればこの形になるのです。

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F6F-3,F6F-5と改良されますが、ほとんど見分けがつかない程度の変更に留められています。多少の性能向上のために生産ラインを乱すよりも数で押し切る方が有利と判断したのでしょう。
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艦上戦闘機として要求される離着艦時の良好な視界、扱いやすさ。さらにこの大面積の主翼は高い操縦性能と航続距離をもたらしたのです。

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翼面荷重も他の連合軍機ほどは高くなく、旋回性能もそこそこ優れていました。一方、速度性能は600km/h程度と2000馬力クラスとしては物足りませんが、それでも零戦52型などに対して30km/h以上優速であり、日本機キラーとしては必要十分な戦闘機でした。

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さらに生産性、整備性、耐久性にも配慮し、航空機としてよりも”兵器”として優秀さを目指したのでした。言い換えれば合理主義の権化、それがグラマンヘルキャットなのです。

 

----------------------製作記はこちらから-------------------

 

sigdesig.hatenablog.com

 


 

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「性悪女に軍馬の手綱を」F6Fヘルキャット-7 ハセガワ1/72

筆使いと固定

細かいところを面相筆で描くにあたっては、飛行機模型では馬鹿でかい主翼や尾翼が邪魔になって仕方がない。 機体と右の掌のどちらかがグラつくと線がヨロヨロになる。…スイマセンねどうにも、鍛錬が足りないもので…対象物と自分の手指をしっかり固定することが大事。

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そこで当"1畳半工房"特製の「九九式三号仮置台横型」(発泡スチロールブロック)に機体を固定し、右掌の支えには「マ式加工台座一型改」(米栂二寸角+カッターマット)を縦にして使った。また面相筆も描く面に対し鉛直でありたいので発泡ブロックにツマヨウジを刺して角度調整するという、極めて原始的な方法が採用されている。単純明快というか低廉安直というか当"1畳半工房主人”の特性を如実に表していると言えよう。

さらに筆の穂先の延長線上に自分の目がくるようにした方がよさそうだ、とも気づく。この辺の筆の持ち方や固定方法などはNHK美の壷」の螺鈿職人か何かの回で見たのをマネている。この番組は草刈正雄木村多江のコメディ的かけあいが好きでよく視聴している。メーカー名や商品価格が一切出ないところも宣伝くさくなくていい。

凸凹 

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機番や国籍マークなどタッチアップを繰り返した部分の塗膜表面のデコボコはどうしても残る。コルセアの時は全体にマットバーニッシュを筆で塗ることでうまくゴマかせたのだが、今回のヘルキャットでは胴体後部に凸モールドを残したため、そこに塗料がたまってしまっていかにもペンキ塗り立てっぽくなってしまった。製作者の軽率な思いつきが後になって祟るという好例だ。

 

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…んッふふ〜ア〜ニキぃ〜、これガタガタのコッテコテじゃないの〜。どーすんのさ〜、ねえったらアーニキぃ〜

…ウッセエ馬鹿野郎!しょうがねえだろ筆塗りなんだからよ!これがお前、あ,味ってもんだよ!綾部のババアにもそう言っとけ!

 

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手跡筆跡は「味」として残しつつ、軽くマットバーニッシュを重ね、ラプロスでサンディングしてならす。1/72の飛行機の模型として最低限見苦しくない程度を目指した。凸モールド部分がハゲたのをタッチアップするつもりだったが忘れた。

仕上げとウエザリング

そしてついにキャノピーのマスキングを剥がす時が来た。

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…思ったより苦労したね〜アニキィ、え〜ここにくるまでさぁ。俺もっと早く出来っかと思っちゃったよ〜…

…そりゃオマエ四回も塗装をやり直してんだから当たり前だろ。

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排気汚れはタミヤのウエザリングマスター。ススで真っ黒になった部分と高温にさらされ白っぽくなった部分が混在している表現。これが一度やってみたかった。明るい色から順に擦り付けていくと良いようだ。

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…あら、いい感じに仕上がったじゃないのオサムちゃん…

小物

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プロペラは薄く整形した。製造メーカー(ハミルトン)マークも手描き。形を三つ揃えるのに難儀する。デカールはあるのだからおとなしくそいつを貼っておけばいいんだが…もはや意地になって手描きにこだわっている感がある。

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主脚カバーにも機番が必要…当然フリーハンドで手描きするほかない。左右の見た目がなかなか揃わず何回書き直したか。2mmx3mmくらいの小さなパーツに1時間以上かかった…ナナニイのお気楽筆塗りがいつの間にか筆塗り苦行になってしまっている。もう機番の手描きは二度と御免だと思った。

機体各部の細々した注意書きも省略だ省略。こんなの実機写真でもほとんど見えないし、第一ゴチャゴチャしていて好みじゃない。1/48でもあまり貼らない自分である。ナナニイ筆塗りではなおさらだ。

 

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脚と脚カバーを取り付ける。途端に農耕馬みたいに鈍重かつ頑健なイメージとなる。脚柱がズ太くカバーがブ厚いだけかも知れないが、この骨太さが軍馬として米海軍を支えたんだぜコンニャロー!と思えばむしろ雰囲気だ。

 

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真鍮管で機銃を作って…

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一本一本植えてやる。よく見るとアチコチそっぽを向いている…よく見ないとわからない、よく見ないようにしよう。

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実機写真では増槽まで迷彩塗装されているようだ。ハセガワのこの増槽は少し細過ぎる様にも思える。機体に装着すると対比で太いヘルキャットがさらに太く見える。もはやデブキャット。寸法的に正確を期するなら流用又は自作が望ましいが、デブキャットの方がイメージ通りなのでこのままでいく。

増槽の取付バンドもキットのものを切り飛ばして整形、プラペーパーで再現してみた。実機はもっと薄くて細いが、薄過ぎるとヨレるのでこのあたりが限界。"真鍮板"という手があったと気づくが、もはややり直すほどヘルキャットに対して「愛」は残っていない俺だった。

完成

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ともかくも完成。

グラマンF6Fヘルキャットの出来上がり。ふてぶてしい面構えだな〜と思ってもらえれば製作者の狙い通り、ということになる。

次回は完成画像。

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「妖かし猫に涙の機番を」F6Fヘルキャット-6 ハセガワ1/72

国籍マークの次は機番を手描き。

デカールのコピーから機番26を下書きする。

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はなっから歪んでるぜアニキぃ。

いいんだよ目安だから大体で。

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その裏側を4Bの鉛筆で塗りつぶす。周囲に両面テープを貼って…

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所定の位置に貼り付ける。

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その上からなぞる…

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転写される…小学生の時こうやって「変身忍者嵐」だの「快傑ライオン丸」だのの写真かなんかを「月刊 冒険王」からノートに写し取っていたのを思い出す。あの頃とやってる事はあまり変わらない…オツムの中身も10歳程度ということか…

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位置とバランスを検討しOKなら鉛筆書きを目安に筆を入れる…

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フリーハンドで手描き…ステンシル字体だから簡単だと思っていたが、直線、直角を求められるのでそれなりに難しい…

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な、なんとかこれで勘弁してくだせえ…

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直線直角に苦労したのとサイズを揃えるため胴体側面は外縁部分のみマスキングしてみた。

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タッチアップを繰り返すので結局フリーハンドと変わらない。セロテープをはがすと機番の下のガッシュが剥がれてしまったからチクショーメかえって藪蛇だ。しかし、それはそれでいい感じの剥がれだったのでそのままにしておいた。怪我の巧妙というか転んでもただは起きないというかヤケのヤンパチというか…

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反対側も同様に…

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右側面尾翼はもうマスキングなしで…

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だんだん手慣れてきた。空母ホーネットのGシンボルは白の円。これまた真円を描くのではなく、真円に見えるように描く。あなたが真円を描く時、真円もまたあなたを描いているのだ。

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胴体と尾翼で字体の雰囲気が違ってしまってらあ。泣けるぜえ…

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気になりだしたら止まらない、尾翼の機番を修正。

実際のところ修正後の方が数字単体ではイビツになってるのだが、パッと見はバランスよく見える。人間が抱く違和感というものは実に微妙なものだ。

 

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ま、このくらい離れればそれなりに見える、、、だろ。

 

さて今回はいろいろな発見があった。

求めているのは完璧な真円、直線を描くことではない。
人の目に真円に見えるように、直線に見えるように
描くこと。

実機通りの完全精密写実主義から解き放たれた心境が今、している。

小磯美術館のあの"荷馬車の絵"を思いだす。近くで見ると車輪はねじれ、木のフレームはよれている。それでも少し離れればそれはまごうことなき車輪であり、フレームはしっかり荷台を支えている。

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”技量”においては画伯にはるか何光年も遅れをとっていようが、少なくとも”心境”においては同じベクトルにあるのではないか。つまりあの荷馬車の絵と我がヘルキャットは、”絵を描く志し”においては同じ平面に立っている、そのくらいまで自惚れてしまった自分がいて苦笑する。なんだか「草枕」の一文のようだ。「この心境にいたったものはすべて名作をものするとは言えないが…」というくだりである。

…どうも真っ当なスケールモデラーからだんだん離れていく気がする。

 

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