筆使いと固定
細かいところを面相筆で描くにあたっては、飛行機模型では馬鹿でかい主翼や尾翼が邪魔になって仕方がない。 機体と右の掌のどちらかがグラつくと線がヨロヨロになる。…スイマセンねどうにも、鍛錬が足りないもので…対象物と自分の手指をしっかり固定することが大事。
そこで当"1畳半工房"特製の「九九式三号仮置台横型」(発泡スチロールブロック)に機体を固定し、右掌の支えには「マ式加工台座一型改」(米栂二寸角+カッターマット)を縦にして使った。また面相筆も描く面に対し鉛直でありたいので発泡ブロックにツマヨウジを刺して角度調整するという、極めて原始的な方法が採用されている。単純明快というか低廉安直というか当"1畳半工房の主人”の特性を如実に表していると言えよう。
さらに筆の穂先の延長線上に自分の目がくるようにした方がよさそうだ、とも気づく。この辺の筆の持ち方や固定方法などはNHK「美の壷」の螺鈿職人か何かの回で見たのをマネている。この番組は草刈正雄と木村多江のコメディ的かけあいが好きでよく視聴している。メーカー名や商品価格が一切出ないところも宣伝くさくなくていい。
凸凹
機番や国籍マークなどタッチアップを繰り返した部分の塗膜表面のデコボコはどうしても残る。コルセアの時は全体にマットバーニッシュを筆で塗ることでうまくゴマかせたのだが、今回のヘルキャットでは胴体後部に凸モールドを残したため、そこに塗料がたまってしまっていかにもペンキ塗り立てっぽくなってしまった。製作者の軽率な思いつきが後になって祟るという好例だ。
…んッふふ〜ア〜ニキぃ〜、これガタガタのコッテコテじゃないの〜。どーすんのさ〜、ねえったらアーニキぃ〜
…ウッセエ馬鹿野郎!しょうがねえだろ筆塗りなんだからよ!これがお前、あ,味ってもんだよ!綾部のババアにもそう言っとけ!
手跡筆跡は「味」として残しつつ、軽くマットバーニッシュを重ね、ラプロスでサンディングしてならす。1/72の飛行機の模型として最低限見苦しくない程度を目指した。凸モールド部分がハゲたのをタッチアップするつもりだったが忘れた。
仕上げとウエザリング
そしてついにキャノピーのマスキングを剥がす時が来た。
…思ったより苦労したね〜アニキィ、え〜ここにくるまでさぁ。俺もっと早く出来っかと思っちゃったよ〜…
…そりゃオマエ四回も塗装をやり直してんだから当たり前だろ。
排気汚れはタミヤのウエザリングマスター。ススで真っ黒になった部分と高温にさらされ白っぽくなった部分が混在している表現。これが一度やってみたかった。明るい色から順に擦り付けていくと良いようだ。
…あら、いい感じに仕上がったじゃないのオサムちゃん…
小物
プロペラは薄く整形した。製造メーカー(ハミルトン)マークも手描き。形を三つ揃えるのに難儀する。デカールはあるのだからおとなしくそいつを貼っておけばいいんだが…もはや意地になって手描きにこだわっている感がある。
主脚カバーにも機番が必要…当然フリーハンドで手描きするほかない。左右の見た目がなかなか揃わず何回書き直したか。2mmx3mmくらいの小さなパーツに1時間以上かかった…ナナニイのお気楽筆塗りがいつの間にか筆塗り苦行になってしまっている。もう機番の手描きは二度と御免だと思った。
機体各部の細々した注意書きも省略だ省略。こんなの実機写真でもほとんど見えないし、第一ゴチャゴチャしていて好みじゃない。1/48でもあまり貼らない自分である。ナナニイ筆塗りではなおさらだ。
脚と脚カバーを取り付ける。途端に農耕馬みたいに鈍重かつ頑健なイメージとなる。脚柱がズ太くカバーがブ厚いだけかも知れないが、この骨太さが軍馬として米海軍を支えたんだぜコンニャロー!と思えばむしろ雰囲気だ。
真鍮管で機銃を作って…
一本一本植えてやる。よく見るとアチコチそっぽを向いている…よく見ないとわからない、よく見ないようにしよう。
実機写真では増槽まで迷彩塗装されているようだ。ハセガワのこの増槽は少し細過ぎる様にも思える。機体に装着すると対比で太いヘルキャットがさらに太く見える。もはやデブキャット。寸法的に正確を期するなら流用又は自作が望ましいが、デブキャットの方がイメージ通りなのでこのままでいく。
増槽の取付バンドもキットのものを切り飛ばして整形、プラペーパーで再現してみた。実機はもっと薄くて細いが、薄過ぎるとヨレるのでこのあたりが限界。"真鍮板"という手があったと気づくが、もはややり直すほどヘルキャットに対して「愛」は残っていない俺だった。
完成
ともかくも完成。
グラマンF6Fヘルキャットの出来上がり。ふてぶてしい面構えだな〜と思ってもらえれば製作者の狙い通り、ということになる。
次回は完成画像。