随 筆 撰
自分が育った古い木造家屋の茶の間の水屋に、分厚い「広辞林」が置いてあった。 父親に物事を尋ねると「人に聞くよりコージリン引いてみい」と言われたものだ。 自主性を育む上では大変結構な教育方針ではあるが、 小さな頃の自分は大人を質問責めにするナゼ…
時折、タバコを買う。 自分では吸わない。 いつも机の引き出しにタバコの箱があるのはそのせいだ。
自分の家から自転車で漕いで行って10分くらいの所に新幹線の橋がある。 小さい頃はよく遊びに行ってみんなで「ひかり号」が通るのを眺めた。 新幹線がやってくるのは、まず音でわかる。線路が鳴動するのだ。。。
実家に帰った折に母親から高校の同窓の「T」くんを知っているかと尋ねられた。 たまたまその「T」の母親とおなじ趣味の集まりで会ったらしい。 「T?」あんなヤツ・・・自分は眉間に皺を寄せた。
「sigさん、路地裏が似合いますネェ〜」 たしかにそう、まさにそんな路地裏に知人を連れて行って、 お気に入りのバーの扉を開こうとした時、肩越しにそんな 言葉を投げかけられた。 なぜか無性に嬉しかった。。。
自分は大きな船の船員で、航海中のデッキのテーブルに座っている・・・ すると女性が現れた。 知っている顔だが、目尻のシワの割は随分増えた。 えらく高価なものを携えて羽振り良さそうだ。 傍らに「今度の彼」らしき年かさで白髪まじりの金持ちそうな男が…
つくばいに見立てた大きな庭石に井戸水が竹筒から流れ落ちている。 ふたかかえほどあるその石の窪みから溢れ出た水は、その石の下、 水門としてしつらえてある水の溜まり場に導かれる。 どこから落ちてきたのか胡麻塩模様を背中にまぶしつけたカナブンが ま…
水曜日、晴れ。 その男の物語が終わった・・・
それは突然やってきた。背中の右側に違和感を感じた。ギックリ腰かと最初は思った。しばらくすると「それ」が強烈に痛みだした。