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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

南太平洋の覇者

完成したヘルキャットを南太平洋で戦ったライバル達と並べてみよう。

同陣営のライバル比較

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初飛行はコルセアが二年も先。ところが野心的な設計が仇となって実用化に手間取り、平凡で手堅い設計で順調に開発が進んだヘルキャットに詰め寄られた・・・とは巷間よく言われることだ。実はコルセアの開発は誕生間もないダブルワスプエンジンの不具合解消にその多くが割かれた面もあるらしい。

コルセアが苦心して熟成したエンジンをちゃっかり頂いたヘルキャット、という事になる。「このドロボウ猫め!」とチャンスボード社が叫んだかどうかは定かではない。

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同じエンジンを積んでるとは思えないサイドビュー。プロペラボスの高さがほぼ同じなのが興味深い。

チャンスボード社の野心

「最もパワフルなエンジンに最も大きなプロペラをつける。主翼は空力面で理想的な中翼配置。これで我々は最強の艦上戦闘機を手にする!」

「閣下、中翼の長い主脚は着艦時に折れて危険です。プロペラが接地する恐れも…」

「わははは!翼を逆ガルにすればよい。それで全て解決だ!」

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「テストの結果、逆ガル翼は着艦時の失速特性が良くないようです閣下!」

「ふむ、私は楽観的だよ。スポイラーを付けて対応するのだ!」

 「閣下、タンクの主翼配置は被弾時に危険だという欧州戦線の戦訓が…」

「タンクは操縦席を後ろに下げてその前に配置する!素晴らしいスタイルだ!」

「ガソリンが漏れて操縦席に入ってくるとパイロット達からクレームが出ております」

アメリカ人ならそんなものには負けないはずだ。シーリングを貼っておけ!」

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パイロット達が着陸時の視界が悪いと申しております」

「またか!…良いことを思いついたぞ、パイロットに操縦させるのを止めればいい!」

「閣下、そんな機体が飛ぶのは50年くらい先になります」

「私はタフだがそこまで気長ではない。キャノピーを大きく、尾輪脚柱を長くする!」

「閣下、海軍がこれでは空母では使えんと言ってきております!」

「海軍がダメなら海兵隊に売り込めばいいではないか!」

 …この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは全く関係ありません…

京都竹屋町通り西入ル 蔵万鉄工所

「もうせんだっての山猫はんとおんなしでエエやんなあコレ。エンジン大きいしてー羽根ひくしてー」

「社長はん、そらよろしけど大きなフィレットがいりますえ」

「ほたら、その羽根なあ、ちょーっと上に付けてみ。ほで胴体断面をペタンコにしたら、デヤ?」

「いーや、社長はん見とおみ、プロペラと地面の間がキツキツやええ」

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 「どこにいい?うわエラ当たりやんかいな。こらエンジンの位置を上げんなんなあ」

「カウリングの下どないしやはりますん?がらんがらんなりますえ社長はん」

「せやなあインテイクでもつけとこいな。後ろは燃料タンクごっついごっついのんにして、ホイデその上に兵隊さん乗ってもらおか」

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 「景色よう見えて良ろしなあ社長はん、せやけど空気抵抗増えてスピードよう出えしまへんやろ」

「かめへんかめへん。こいでゼロ戦より速いねんさけ、600出たら上等上等。上等舶来や」

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「脚柱もエろう長ごうなりましたな」

「まあ折れんように太しとこか」

「ええけど重とおになるんちゃいますやろか」

「かめへんがな、ちょっとくらい。もともと肥えたはんねんし」

  …この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは全く関係ありません…

 

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結局、空母機動部隊は扱いやすいヘルキャットが主力となり、コルセアは着艦性能の悪さゆえ海兵隊の陸上基地に配備され対地支援任務に回される、、、とは何度も書いた通り。

しかし戦争末期になってコルセアの空母運用が可能になると一転して米海軍の主力機となる。太平洋戦争が終わるとヘルキャットは帰国途中の空母の甲板から閉店後のマクドナルドのポテトのように海中に投棄された。一方コルセアはその後も生き永らえて、朝鮮戦争ではMig15撃墜まで達成している。 

 零戦52型との比較。

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まさに大人と子供…

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全備重量ヘルキャット5.7tに対し零戦は半分以下の2.7t  f:id:sigdesig:20200628175034j:plain

1200馬力と2000馬力、最大速度で30~50km/hの差。

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ヤンキーの高校生二人にカツアゲされるメガネの小学生、といった雰囲気。

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コルセアは初登場時に「バレンタインデーの虐殺」で零戦にずいぶんな目にあわされている。相手は最強を誇ったラバウル零戦隊、当時の米軍の平均的なパイロットではクセの強いコルセアは扱いずらく速度の優位性を活かせなかったのではないか、と言われている。

一方ヘルキャットは逆に「マリアナ七面鳥撃ち」で零戦をバタバタ叩き落とす。…どちらもアメリカ人特有の大げさな言い回しにような気もするが…

ヘルキャットは他の連合軍機と違って運動性能も優れており、逆に重量が増えた零戦52型以降は得意の旋回戦に持ち込んでも逆転することが難しくなる。

なによりベテランパイロットの多数の損失が日本海軍にとっては最も大きな戦力低下となったのだろう。

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零戦のマーキングは44年グアム島の部隊、ヘルキャットは同時期にマリアナ戦に参加したホーネット搭載機。この両機は実際にあいまみえた可能性もある。特に意図したわけでもなく偶然の結果なのだが、南太平洋の上空でこんな死闘が繰り広げられていたのかもしれない。

 

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