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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

雷電-1「汝、雷(いかづち)の子として生を与えん」ハセガワ1/72製作記

おっとり刀で雷電の製作記を始める。実際は雷電から作り始めたのだが内覧会向けにテーマ「試作機」を急いだので烈風を突貫工事で完成させた。

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内覧会という事でテーマは来年に先送りとなったので急ぐ必要はなかったようだ。

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hiroK氏の「景雲」と並べることが出来て大慶至極。

後ろはBf109、同スケールとは思えない。

さて雷電

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セガワのベテランキット。

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結構バリがでているが…

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フォルムもモールドも合わせも悪くないと思う。細部は素っ気ないがまあこんなもんだろう。

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雷電は視界不良で随分叩かれたから改修で風防が大きくなっている。雷さまの内部がよく見えるから今回はコクピットに手を入れよう。

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といっても工房主のする事だからお気楽である。前回作った紫電のリニューアル前のパーツが残っているから…

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サイドコンソールやフットペダル部分を移植。

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雷電コクピットは「3人乗れる」「宴会ができる」などと言われたほど広かった。横幅1500mm、ということは標準サイズのユニットバス1616タイプくらいだ。風呂全体の真ん中に陣取ってシャワーヘッドを操縦桿代わりに握ったら気分はもう雷電パイロット…全裸の…。隼などは横幅半分くらいだからバスタブに浸かって操縦するようなものか…全裸で。

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胴体にフレームをプラ板で再現

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計器板はノッペラボーにデカールを貼るスタイルだ。

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球状のリューターでメーターを掘って…

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こんな感じ。

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スロットルレバーなども作ってやると「これ押したら馬力出まんねやー!」という気分が出て大変よろしい。

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座席後方の分割ラインを修正するのが面倒だったので無線機を削り飛ばし、プラ板を貼った上に作り直した無線機を載せてトボけておく。

 

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全自動マシンの過去と未来

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当方、手間の掛かる機械というのはシトロエンだのドカだの初期のMacだのと慣れてはいるつもりだ。異音異臭水漏れオイル漏れ、立ち往生にフリーズ爆弾とトラブルに満ち満ちてきた。警告灯の一つや二つ、どこかで常に点いているのが当たり前な人生だった。

ただしそれらは皆、手間を掛けるに足る愛すべき魅力を有したマシンであった。手間暇掛けて整備のかいあって十全に性能を発揮するや、その苦労が一遍に吹き飛ぶかのような魅力で持ち主を歓喜させる素晴らしいマシンである。

一方このコーヒーメーカーはどうか?

全自動は生活の質を一新してくれる、、、とまでも言えないし、完全に作動した時に思わず微笑みがこぼれるような可愛い気、、も特に無い。そもそも全自動独力ノーミスで淹れおおせたことは全部で10回あるかないか、くらいだと思う。味は前述の通りイマイチ。ミルの裏側に古い粉が溜まるのだ。

見た目はまあ洒落ている。動きさえすれば捨てはしなかったろう。しかし修理して使いたい、とまで思えなかったのはこの機械、"コーヒーを愉しむ"という本質をちょっと踏み外している気がするからだ。

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販売する雑貨店の開発担当者もこのマシンがここまで脆弱な仕上がりになるとは思わなかったろう。自分は以前販売業界にいてコーヒー用品なぞも扱った経験から、そんな困ったちゃん商品がこの世には結構存在する事は承知しているつもりだ。

しかし今でもまだ同じ商品がその雑貨店で当初の半額程度で売られているのを見ると「おいおい」と思ってしまう。改良版であることを願うが、でなければ残念なことだ。

なぜかというと「有名ブランドではないけど良いお品を扱っていますよ」というのがその雑貨店の創業理念だったはずだからだ。「見た目を良くする工程を省いて手頃な値段にしました。品質は変わりません」というデメリット表示は当時の流通販売業界では斬新だった。それが「すぐダメになるけど安くしたからいいだろ」なんて考え方だとしたら、いかがなものか。他社より1円でもお安く!の○マ〜ダ電気、じゃないんだから。

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このマシンを予約購入したのは自分の判断だ。ただしこれが製造メーカー名だけで全自動マシンとして家電量販店の棚に並んでいたら、正直言って購入を悩んだと思う。全国展開の品質重視を謳う”アノ”雑貨店がプロデュースしたものだから大丈夫だろう、と思ったのも事実だ。「ブランドが無い」のがブランド名だったのに、いつの間にかそのブランド名を盲信していたのだ。我ながら滑稽な話だと思う。

ナチュラル、サステイナブル、シンプル、そんなキーワードが思い浮かぶここの雑貨店は今やネットでも大好評だ。自分も長年愛好している。用もないのに店に行ってあれこれ買うのが好きだった。材質や使い勝手なども「ここのだったら間違いない」という安心感があった。過去形で書かねばならないことがなんとも残念だ。

このコーヒーメーカーに手を焼く様になってからはなんとなく足が遠のいてしまっている。廃棄を決めた今では

「"良品"だと思ってたら"不"を見落としていた」

なんてタチの悪い冗談まで思いつく。まあ逆の立場から見れば顧客の信頼というものはかくも簡単に崩れ落ちるものだという教訓だ。

未来について言えば、今後一切この店に行かない、なんてことは言わない。家電はともかく衣料などそこまで機能性能を問わないものはこの先また買うだろう。ただししばらくはカゴに入れる前に一つ一つシビアな目を向けざるをえない。

出来れば今回の経験を活かして新しいコーヒーマシンを開発し販売して欲しい。今度は見た目は素っ気なくていいから、味と使い勝手の抜群に良いものを期待する。それが失った顧客の信頼を取り戻す唯一の道ではないだろうか。次は予約はしない、発売されて3年くらい経ってから買うとしよう。

それまでにおいしい豆を売ってくれるカフェを探しておこうと思う。

 

全自動マシンの抵抗

"全自動"だ"全自動"だといっているが、自分は以前から電動ミルを使っていたから、挽いた粉をコーヒーメーカーに移し替える手間が省けるだけだ。毎回徹底的に掃除するとなると、節約した時間の数倍を使うことになり、わずかの”楽”に対して掛かる”面倒”が引き合わない。

さらに「ああ臼刃の裏側の粉が混じってんだろな」なんてくだんの画像を思い出しながら苦虫を噛み潰したような顔で苦いコーヒーを飲まねばならん。「飲んだら掃除をしなくちゃな」なんて思うと気もそぞろとなる。事務所でのコーヒータイムはかようにあまりリラックスできるものではなくなってきた。いきおいコンビニの百円コーヒーで済ますことが増える。これを精神的浮気と称している。

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そこへもってきて昨年お気に入りのカフェが店じまいして愛用の自家焙煎の豆の入手が叶わなくなる。仕方なく近所のスーパーで適当な豆を少量づつ買う。別段それを安物だ安物だと指弾して得意になる程のコーヒー通でもグルメでもない自分だ。むしろ手頃な分だけ気軽に飲めるから回転も早くなって豆にしていたのが粉でもいいかと思うほどのペースになる。コーヒーは豆のグレードも大事だが鮮度も同様かそれ以上に大事だと気づくことになってこれは望外の収穫だった。

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粉でいい、となるともはやミルを使う必要はない。臼刃の奥まで絵筆でほじくりエアダスターで吹いて顔じゅう粉だらけにするような毎回の掃除からも解放される。機械の隙間に溜まっている古い粉のことを思い出さなくて済むのが何よりありがたい。

以降このマシンは"全自動"ではなく、”半自動”コーヒーメーカーとして余生をすごすことになる。そういう事態を予期しているわけでもまさかなかろうが、ちゃんと粉から淹れるモードも付いているのは偉い。偉いは偉いがそれを使う限りは普通のコーヒーメーカーとなんら変わらないということになる。どうも不要な機能に大枚をはたいてしまった気もするが、生涯舗装路しか走らぬ四駆のSUV車がほとんど、とも聞くからそこまで落胆するにも当たるまい、と自分に言い聞かせておいた。

だが、しかし…

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今年に入ってからこの”半自動”マシンはやたらとエラー表示を頻発させる様になってきた。持ち主の愛情が薄れたことを微妙に感じ取ったのか能力をフルに発揮されぬ事を憤慨してかは知らないが「E05」だとかの機械言語を発しては業務を放棄する。説明書を引っ張り出してきて人間の言葉に訳すと「タンクをセットして下さい」との要求らしい。見ると給水タンクはきちんと入っておるではないか。はて面妖な。

タンクを入れたり出したりすると機嫌が直ることもある。おそらくセンサーの接触不良だろう。タンクに水を入れる際に水はねで外側が濡れるのでタオルで丁寧に拭ってからセットし直す、あるいはタンクの上からケトルで水をそうっと入れるようにしてみもするが、それでも「E05」「E05」「E05」…

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説明書を見ると、そういう場合は「タンク下部のマグネット式の電源接続端子を綿棒で清掃してください」とわざわざ黄色の紙で注意書きが入っている。「お願い」と大書されているその紙には一緒に「大きな豆が詰まるのは回転機構を守るための安全構造」との記載もある。やや詭弁に聞こえなくもない。機械を守る為にユーザーが我慢する構図である。ともあれ、少なくとも店側は販売時点でこれらの現象を把握してそれでもなおかつ販売に踏み切っている、ということはわかった。

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言われた通りに端子を拭き取ればようやく重い腰を上げてマシンは作動する。しかしコーヒーでも淹れようか、と思ってから実際に飲めるようになるまでにそれなりの時間を要する。お客さんが来た時どころか自分のコーヒーブレイクすら難事業に思えてきた。

ついには端子を掃除しようが何をしようが断固として「E05」を撤回しなくなった。ここにいたって”全自動”コーヒーメーカーはとうとう”全不動”コーヒーメーカーに転じたのである。そうして黙然とただ流し台にそびえ立ってこちらを見下ろしている。オメーは水掛け不動さんかいっ!

例の黄色の用紙には、端子を掃除してもE05が表示され続ける場合についての表記がある。むろんユーザー側に打つ手はなく修理依頼となるが、そんなケースまで既にして販売側に把握されているのか、それでもなおかつ販売に踏み切っているのかと思うと、さすがにちょっとこれは腕組みして考えざるをえない。

さあてどうしたもんかいのう、と販売元のサイトを訪れてレビューを見るとこれらは個体差ではなくいわゆる「お約束」であるらしい。ついには盛大に蒸気を吹き上げてそこらじゅうを水浸しにする、というはた迷惑な大往生を遂げるケースもあるという。さすがにそんな粗相をされてはカナわない。

残念ながらこのマシンは廃棄処分と決めた。センサーが直ったところで全自動機能を使う気は、もう自分には無い。実働3年、ただただ短い人生であった。

コーヒーは…とくの昔に"全手動"=ペーパードリップで淹れるようになっていた。

 

 

 

全自動コーヒーメーカーを分解する

さてこの全自動うっかりコーヒーメーカー。豆が詰まるのは自分のお気に入りな豆との相性が悪かったと諦めもつくが、実はこいつで淹れたコーヒーの味に今ひとつ納得がいかない。まったく同じ豆を使っている我が旧友のハラッチ君の淹れたコーヒーの方が断然美味いのである。

豆を売るカフェは少し遠いので自分はいつもバイクで行って、多めに買っては彼と半分コするのを常としている。その豆を手土産に持っていくとハラッチ君はお駄賃としてその場でコーヒーを淹れてくれるのだが、それが豆本来の実にクリアな味なのだ。その度に、ウチで飲むよりもぜんぜん美味しいやん、となる。別に競いあうつもりなどないが、同じ豆でこの差は何か、と思うのである。

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ハラッチ君のコーヒーに注ぐ愛情というか"食"に対する熱意と探究心はグータラなブログ主をはるかに凌駕するレベルであるから、てっきりペーパードリップで丹念に淹れているのかと思ったらごく普通のコーヒーメーカーだった。水も「水無瀬の離宮水ちゃう?」と聞くと「へえ?タダの水道水やで」との返答だ。同じ町内だからよもや水質に差はあるまい。

思い当たる節はあって、それは当方の横着全自動マシンのミルの掃除が行き届いていないのではないか、ということだ。臼歯は構造上、粉が内部に溜まりやすい。

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このマシンのメンテナンスは一応考慮されていて、ミル部分はワンタッチで着脱可能だ。

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ミルの部分が全部取れる。

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二対の臼歯も分離するので日常的な掃除はよほどな不器用でない限り簡単だ。

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付属のブラシだけでなく綿棒や使い古しの絵筆など(うちには沢山ある)を使えば細かいところも綺麗になる。しかし、ほぼ毎回掃除していたにも関わらず、どこかすえた臭いが取れないし、振ればいつまでもパラパラと微細な粉が落ちてくるのが怪しい。どっかに入り込んじまってんじゃねーのかあ?と疑い深い所有者は意を決してバラすことにした。

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開けるとやはり…粉だらけやん。

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カバー裏まで粉が回り込んでいる。臼歯のホルダー全体がスライドする事で豆の粒度を調節する機構だが、可動部品間に盛大なクリアランスがあり、そこからコーヒーの粉が混入する。自分はやや粗挽きが多かったからそこまで微粉は出ないと思ったが、この隙間の大きさではコメ粒だって通るだろう。

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さらに通常のメンテナンスではまず見ないところまで分解してやると…うーわ!

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鋼製の臼歯の裏側にビッシリ…絶句。

酸化した粉が裏側に詰まっていて驚いた。臼歯の裏の樹脂ホルダー部の成形精度が低い、というよりこれは設計の問題だろう。一部サビて黒変していたようだが下からお湯の蒸気が入り込んでいるのだろうか…あちこち隙間だらけだから無理もない。

詰まった粉は毎日飲んでいれば少しづつ入れ替わっていくのかもしれないが、自分は週に2~3回くらい、夏場はもっと間隔が空くから結構古くなってるはずだ。先週の月曜の微粉が新たに挽くコーヒー豆にも少し混入していた、なんて可能性は高い。そこまで味に影響を与えるかどうかは別にしても…あまり気分の良いものではない。

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この際だから全パーツを綺麗に洗ってやる。組み立てがまた一苦労だった。毎回こんな悪夢の様なことは出来ない。日常清掃はエアダスターで臼歯周辺の粉を入念に吹き飛ばす事にした。シンクの周りは粉だらけになる。肝心のコーヒーの味は良くなった気もするが、先入観が混じってしまってるだけかもしれない。

…なんだかんだが億劫に感じてきた。 

 

コーヒーメーカーは全自動の夢を見るか?

うちの事務所には全自動のコーヒーメーカーがある。とあるライフスタイル提案型の雑貨店のプロデュースによるものだ。

マシンと一体型のミルで挽いた豆を移し換えることなく、ボタン一つでコーヒーが出来あがるのを"全自動"と称している。この商品の”売り”はタイマー付きで朝起きたら挽きたてのコーヒーが既にサーバーに出来ている、というものだ。欧米人みたいにベッドで朝食を摂るなんてライフスタイルはむろん自分にはない。じゃまたなんでそんな横着なものを、と言われそうだが、むろんそれなりの理由はある。

自分は稼業が零細自営だから何もかも1人でやる。代表者として役人の責め句の矢面に立つことから事務所の前の掃き掃除にいたるまで全て一人で任じなければならない。綾部探偵事務所の京子チャンみたいなボインの秘書でもいれば話は別だがそんな甲斐性はまるでない。なので客が来れば湯茶の接待も当然自前でせねばならない。

この全自動マシンなら事務所のコーヒーを淹れる間にお客さんを放ったらかしにしないでいい、と考えたわけだ。来客の日時というものはウチの場合は予め定まっている事がほとんどだから、事前に豆と水とペーパーを仕込んでおき、チャイムが鳴ったらスイッチを入れる。ご挨拶などを済ませている間にかぐわしい香りが漂ってきて、挽きたての淹れたてのコーヒーをすっと出せる。

おおなんとスマートなんだ…

少し値段は張ったが、日頃よりこの雑貨店のコンセプトをたいそう気に入っていた自分は「おおこれこれ、ついに出たか」という勢いで予約して早速買い求めた。予約までした買い物というのはオリビア・ニュートン・ジョンのアルバム「水の中の妖精」以来のことである。(当然、予約特典の等身大ポスターがお目当てだ)

 

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等身大ポスターはついてこなかったが、この業務用っぽいシンプルな佇まいとコンパクトさが何より魅力である。全自動マシンはいままで存在しないわけではなかったがあまりにも家電家電し過ぎていて京子チャンの代わりには、いやいや、自分の審美眼に叶うものはなかったのである。これで麗しのオートマティックコーヒータイムが手に入った。自分はウハウハいやウキウキ気分であった。

 

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ところが…

この機械、豆を挽く音が盛大なのである。ミギャーガジョガジョガジョジャージャーと大音声がする。広くもない事務所だからその音を聞いたお客様はおおかた不審顔を浮かべて辺りを見回したりする。ミルが臼歯式なので仕方ないといえば仕方ない音なのだが、豆を挽き終わった後もしつこく回り続けているのでいたたまれない。

さらに豆の粒がミルの手前で詰まることが結構ある。詰まったらアラーム音でも出してくれたらいいのだが、コヤツは一定時間ガジョーガジョーとミルを回したらあとは問答無用にお湯を注いでしまう。実は豆が詰まってしまっていて挽いた粉が全然不足していてもまったくお構いなしである。当然、出来上がったコーヒーは全然薄くて飲めたものではない。これはマズい実にマズい。いや味だけでなく。

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どうも豆の粒が大きすぎると詰まる様だ。愛用のクラシックマイルドブレンドスペシャルティまたはパンタノ14の羊ではたいがい途中で詰まる。マシンの販売元の曰く「本品専用に選定されている当店純正の専用豆をお使いください」とのことである。

フェラーリが専用タイヤを必要とする、などはよく聞くが純正専用豆を要求するコーヒーメーカーというのは初めてだ。コーヒーというものは嗜好品である。お気に入りの豆を挽いて飲みたい、という欲求はコーヒー好きにとってはごく一般的なものとの認識だったが、コーヒーメーカーにそれを正されるとは思ってもみなかった。

仕方がないので「小さ目の豆はどれですか」と豆を売っている店で聞いてみたことがある。店員さんはこれぞ怪訝な顔の見本というような表情をなすったので即座に引き下がってきた。

このマシンは製品仕様上あるいは自由民権思想上又はその他の理由によって不当に大きな豆を挽くことを断固として拒絶する、というわけでもなく、詰まって空転していたらすかさず棒か何かで豆を掻き混ぜてやるとガジョーと機嫌よく挽き続ける。単に豆の流入口が狭いだけなのだろう。なので機械の横に陣取ってずっと見張ることにした。産業革命を皮肉ったポンチ絵の様で自分で自分の姿が滑稽だ。

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この時点ですでに当事務所における"全自動マシン"導入の意義がほぼ失われた。

宣伝文句の通りの優雅なモーニングコーヒーを夢見て買っていたらおそらくまずはガジョーの騒音で目が覚め、何回かに一回は薄い色付きのお湯を飲まされていただろう。朝一から人を不機嫌にするコーヒーメーカーも珍しい。

 

完成品画像 A7M1 "烈風" ファインモールド1/72

*注)約1500文字の記事です。長い文が苦手な方はキャプションや製作後記などを飛ばしてご覧ください。

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”烈風”は1944年5月に初飛行した海軍最後の艦上戦闘機です。同時期に初飛行した機体はグラマンベアキャット、ホーカー・フューリーなどです。

f:id:sigdesig:20201212145307j:plain昭和17年、1942年に海軍から出された要求は640km/hの最大速度と零戦同様の航続距離、旋回性能というものでした。三菱の堀越技師は要求性能を満たすためには、自社で開発中のエンジン"A20”(後のハ43)2,200馬力が必要と主張します。しかし海軍はこの試案を受け入れず、既に実用化の目処がついていた"誉"2,000馬力エンジンの搭載を強要したのです。

f:id:sigdesig:20201212145349j:plainさらに海軍から翼面荷重値の指定、空戦性能最優先などの指示があり設計の自由度が奪われます。雷電の開発に追われていたこともあり、その後も烈風の開発は難航し、二年が経過しました。長期的な視点から理想の戦闘機を追い求める設計側と、早期の戦力化を望む軍部との間に溝が生まれました。

f:id:sigdesig:20201212145510j:plain1944年春、業を煮やした海軍は"試製烈風"の早期完成がなければ開発中止と三菱に迫ります。このころ海軍はすでに有望な次期戦闘機を手にしていたのです。その年の元旦に初飛行し高性能を発揮していた"紫電改"でした。

f:id:sigdesig:20201212145627j:plain1944年5月、ようやく初飛行した"試製烈風"でしたが、速度や上昇力などの性能は零戦にさえ劣るものでした。調査の結果”誉”エンジンの不調が指摘されました。しかしたとえ”誉”が完調であったとしても大柄な"試製烈風"では”紫電改”の性能を上回ることは難しかった、との説が有力です。

f:id:sigdesig:20201212150359j:plain"試製烈風"は海軍から見放され、さらには”雷電”の生産を中止し、全生産力を”紫電改”生産に切り替える方針が出されました。

f:id:sigdesig:20201212145848j:plain大メーカーである三菱にとって屈辱的な決定でした。堀越技師はこれに強く反発します。その頃ようやく実用化された”A20”エンジンを”烈風”に搭載した”A7M2を三菱独自で開発することになりました。

f:id:sigdesig:20201212145943j:plainエンジン換装という大手術を5ヶ月の短期間で終えたA7M2"烈風"は1944年10月に初飛行。当初の海軍の要求に近い性能を発揮し正式採用を勝ち取ります。堀越技師の目論見通りでした。

f:id:sigdesig:20201212145749j:plainしかし試作指示から丸3年の月日が過ぎ去り、この間に時局はまるで様変わりしていました。

f:id:sigdesig:20201212150051j:plain"烈風"を搭載するはずの空母はすでにほとんど残っておらず、日本全土がB29の空襲にさらされる様になります。海軍と堀越技師はじめとする三菱設計陣が心身を砕いて手に入れた"烈風"の優れた航続距離、旋回性能、発着艦性能などは、もはや発揮する場がなくなっていたのです。

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”烈風”は量産第一号機の完成を待たずに8月15日を迎えます。機体も資料もともにすべて廃棄処分とされました。"烈風"の姿は現代に残された数枚の写真でしか見ることはできません。

 

ーーーーーーー製作記事はこちらからーーーーーーーー

 

製作者雑感

まさにこの烈風を作っていた時に、私自身も仕事で「公」的なところからの無茶な要求に頭を悩ませていました。論理的科学的な説明を繰り返すも一顧だにされず、"私の烈風"の青写真は結局実現されることなく終わります。専門的知見による正論は時に為政者からは煙たがられる、というアナクロニズムはいまさらともかく、何より受注側発注側の相互の信頼感が大切であると改めて学びました。

世に出るのが遅すぎた烈風もしかり、海軍が技術者の意見に素直に耳を傾け、三菱側も自社エンジンに拘ることなく真摯に応えていれば、と後知恵で考えるのは青臭い妄想に過ぎるでしょうか。

 

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烈風-8「夢かうつつか 幻しのA7M1降臨」ファインモールド1/72製作記

主翼上面はコンパスで軽くけがいて濃緑色を薄めたマジックリン+綿棒で落とす。f:id:sigdesig:20201211113100j:plain
あまり攻めて濃緑色側がハゲると後が面倒なだけ。ビビりチキンで少し小さめの円でOK。

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まずは赤丸。抜いた境界線手前まで塗りつぶす。ここもビビってチキって全然OK。

なぜなら白ふちで濃緑色と赤丸の境界をカバーしてしまうからなのだよ!
一発勝負のカラスグチ-コンパス、一気に思い切りよく素早く回すのが肝心。
息を止めて〜えいっクルーリ…

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ワオゥ!すばらしい!すオーフリィナイス!すパーラダイス!今までの苦労は何だったんだ〜!

今までの苦労… 

ただし線の幅のコントロールはカラスグチの口の幅と塗料の濃度、付ける量などに左右される。本番前に練習はしておいた。

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この後全身白丸だらけになったサンボルのオッちゃん。

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だがしかし問題は胴体なのであった。

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う〜〜〜ん、やっぱりうまくいかん。Rがきついのでカラスグチの先端が均一に接地しない。四分割くらいでぎぎぎ、ぎぎぎぎと回さざるをえない。サスペンション付きのコンパスでも自作するかね。

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タッチアップで誤魔化す。まあそれでもイチから筆で真円を塗っていた頃から比べれば断然に楽だ。片目が効かない今の自分にとってカラスグチはまさに救世主だよ、カァカァ。

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これで白フチ恐るるに足らず(胴体以外は)頑張ればラウンデルもなんとかなる…かも?

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味方識別色。こういうまっすぐな境界線もカラスグチを使うといいのかも…

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上からマットバーニッシュ。試作機だからピッカピカとは言わぬまでも均一な塗膜を心がけた。上面は例によってエナメル系のウォッシングやドライブラシは使っていない。

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キャノピーのマスキングを取り、脚、ペラその他小物を付けて怒涛のフィニッシュ。

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日本海軍が夢にまで見た幻の次期艦上戦闘機A7M1”烈風"試作機、ここに完成す。
仮組みからなんと7日間という当sig工房最速記録の猛スピード。

オー!モー完成?!

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…いやいらんて、それ…

次回は完成画像。

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