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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

腕時計いらず

こうやって腕時計の話をしていると、

いや、そもそも腕時計なんて今の世の中必要ないでしょ!という人が必ず現れる。そして言う「駅でも会社でもPC画面でも時計なんかどこにでもある。なければスマホ見りゃいいんすよ!」

ナルホド、そう言われればもっともに思える。
一つの意見だろう。

しかし一方で、腕時計があった方が何かと便利、という考えの人も当然いる。

「出先で時計探すとか、スマホ取り出す方が面倒だ。腕時計しない連中はそもそも時刻を知ろうと思い立つ回数が少ないのではないか、だからそんな他力本願で事足りるのだ」・・・なんか言うのである。

さらにさらに、腕時計をしない人間は社会人失格だ、という人だって出てくる。「腕時計は時刻を知るためのものに止どまらず、最低限のビジネスマナーだ。男のステイタス・シンボルでもあってその人物の経済力、社会的立場、信用度を表している」とまで言ったりする。

どれが正しいとかいうものでもない。どの意見に頷くかはその当人の職業環境ライフスタイルによって左右されると思う。

独身で毎日同じ電車に乗って会社に行って同じパソコンの前にいる事務職、趣味はもっぱらプラモとネットショッピング、なら確かに時計を身に着ける必要はあまりない。
逆に大工の棟梁で大家族、趣味はキャンプと磯釣り、ってんなら腕時計がないことにゃあ始まんねえぜコンチクショーメ、となる。
大企業のエリートビジネスパーソンで高級志向なら、え?ロレックスくらいは普通じゃないの?、とか言い始める。

それがその本人の価値観なら別段構わない。それで地球は事もなげに回っている。時計があろうがなかろうが、はたまた金無垢のロレックスだろうがチプカシだろうが男おいどん式日時計だろうが、誰の24時間も平等に24時間だ。

もちろん、自分の個人的な考えはある。

時計は必要だがステイタスシンボルだとは思わない。

ステイタス=格付けは大多数の人間が同じ土俵の上に立っていてこそ成立するものだ。今やTシャツにジャケット、腕にはGーSHOCKあるいはApple Watchは経営者や著名人にも数多く見られる。10年後にはスーツに高級腕時計なんて政治家かヤクザくらいになるかもしれない。誰もが高級時計や高級車に憧れたのは20世紀。懐かしむのはいいが、お一人でどうぞ、と思う。オーソリタリアン特有の"自らが優位に立てる価値観(のみ)を他人に当てはめ、一方的に見下しては悦に入る"という偏狭な態度を、警戒かつ自戒しているブログ主である。   

かといって腕時計不要とまでは思わない、今のところ・・・

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作業や商談でいちいちスマホを見られないケースは山ほどある。仕事に思わぬ手間が掛かるとか、道に迷うとか不測の事態も当然考えられる。Mr.スポックばりの正確ムヒな時間感覚があるというなら別だが、ヌルい時間管理では約束の時刻に間に合わないケースは多々出てくるはずだ。ゲージツ家や偉いセンセーでもない我々一般人は、そんな事やってりゃあ、やがて周りから総スカンを食らう覚悟が必要だろう。

時計もせずに友人の結婚式の二次会に大遅刻して幹事さんに迷惑を掛け、挙句に、「アホォ俺は昨日仕事であんま寝てへんのじゃ」なんて開き直る人間にはなりたくない。そう君のことだよ。もうイチイチ名前はあげないけどね。

昔、イージライダーという映画があった。名作である(B級映画の、というただし書きはつくだろう)
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冒頭で、ピーター・フォンダ演ずるキャプテン・アメリカが腕から時計を外して惜しげもなく投げ捨てる場面がある。

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社会の束縛を振り切る、旅立ちに相応しいシーンだ。その後に流れる曲、Born To Be Wildと共に強く印象に残っている。一切の過去に訣別する、それくらいの気概があってこそだろう。

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自分はまだまだそこまでにはなれないようだ。

この先引退して家族からも見放されて独り身になったら変わるかもしれない・・・

チプカシの人あたり

作業用時計としては不採用となってしまったチプカシ君はどうなった?
「どなたでも出来る簡単な軽作業。時給応談」にでも使われているのか?
はたまた引き出しの奥に眠っているのか?

そうではない。

老父母の家に介護に行く時に腕に巻くようにしている。
大工作業ほどハードさは要求されないし、薄くて軽くて楽だから。

それだけではない。

介助の場面ではコイツの肌あたりの良さが活きる。薄いから引っ掻けない。多少擦れてもウレタンバンドにプラケースは相手の肌を傷つけず、プラ風防だから触れてもヒヤリとしない。そう言えば看護師などの腕にチプカシを見掛けることも多い。医者は、、、流石にいない様だ・・・

それだけではない。

身につけている自分もどこか温和で優しい気持ちにしてくれる

これは何より一番の利点だと、最近思う様になった。
チプカシ特有の押し出しのない、ライトで平穏な感覚が丁度いい。

親の介護とは、側から見るほど微笑ましいものではない。本音を吐いてしまえば、イライラする事が多い。つい腹を立ててキツい言い方してしまう時だってやっぱりある。そして後で悔やむのだ。

経験のある人ならわかって貰えると思う。

年寄りのことは他人任せにして別天地でノンシャランと暮らしたい、誰だってそうだ。
なんで俺がこんな事をしなければならんのだ、なんで俺が、この俺が・・・
そんな、「俺が俺が」のトゲトゲしい我執は、

権勢欲や虚栄心とは無縁のチプカシを巻いて行くと薄れる。

強欲な不動産屋相手に渡り合うならオメガやロレックスもアリだろう。夜の街でひけらかしたいならブライトリングでもなんでもして行きゃあいい。そんな吸血ツツガムシみたいな連中とは縁を切ることが出来た自分は幸いだ、とは思っているが・・・
年老いた父母を支える身にはチプカシが一番しっくりくる。

引退して何か人の助けになる事をしたい、と半ば本気に考えている。
自分を大きく見せたり、人の腹を探ったり、上前をハネたり、酷く罵られたりしないでいい。
その時にはチプカシだな。
羨んだり、妬んだり、自慢したり、見下したりしないでいい。
色んな束縛から解放され、心が自由になれる。
誰にでも分けへだてなく優しく出来そうだ。

リベルテ、エガリテ、フラテルニテ・・・

ソウイウ モノニ ワタシハ ナリタイ・・・

Seiko5は地上の星である

さて奥方のSEIKO 5、つらつら眺めるだに「これイイよなぁ」となっていた。

機械式時計ならではの重厚さと有機的なメカニカル感。加えてSEIKOの信頼性と安心感。実にオーソドックスで外連味がない。金属ベルトは昭和感が残るが本体の質感は上々。革ベルトに変えれば見違えるだろう。それが諭吉お一人。

なぜこんなにお手頃価格なのか。
というかなんでイマドキ普及版の機械式時計をSEIKOが作っているのか。
そしてなぜ国内正規販売はしていないのか?
(先頃、一部の大径スポーツモデルのみ新ロゴに刷新し国内販売されたが)
疑問と共に興味が湧いて出た。

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調べるとSEIKO 5は中南米、または中東などがメインマーケットだとわかった。

なるほど、そういった国々ではクォーツの電池交換が難しい地域が多い。駅前の商店街の時計屋さんで1000円で交換、ってなわけにはいかない。だいたい駅前商店街なんてない、いや駅がない、なんなら鉄道すら通っていない、そんな場所では普及価格の機械式腕時計の需要が高いのは当然だ。真逆の環境の日本国内での販売がないのも頷ける。

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世界最強万能腕時計はG-SHOCKの電波ソーラーと思い込んでいたが、そうではなかったのだ。ソーラーだって二次電池交換が必要なのは前述の通り。電波時計は運用できない土地、スマートウォッチなんぞ論外な地域は世界中にゴマンとある。

SEIKO 5の内臓機械(ムーブメント)はいたってシンプルかつ丈夫な構造で、かれこれ50年以上作り続けられている。現在では製造は完全にオートメーションに移行しており、製造コストの低い海外生産でも品質は保てる。とやかく言わなければ数十年も平気で動き続けるらしいから、コストパフォーマンスは世界随一だ。

価格面では今では更に上(いや下か)をいく中国製ムーブメントも存在するらしいが、SEIKO 5が築いてきた実績、絶大な信頼感には及ばない。安価な事よりも壊れないことの方がはるかに大事だ。広大無辺な土地であれば尚更だろう。

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こういうStoryを聞くと機能主義大好きメカ好きな男子ならばグゥゥッとくる。くるだろう。え?こない?ふうん、そうかね。ならまあここから先は読んでもツマラナイかもしれないよ。

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SEIKO 5、道具としての存在感がある。懐古趣味ではなく現代においても機械式であることに合理的な意味を持つ腕時計が存在しているとは思わなかった。凝ったムーブメントを採用し、究極の精密感と装飾性を競う華美で瀟洒な貴族的世界ともまったく違う。自分はそういったお歴々の腕に巻かれている腕時計より、見渡す限りの砂漠や密林の大地や最果ての地で、懸命に働く人々の腕に巻かれている腕時計の方に心を惹かれる。それがSEIKO 5なのだ。

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中島みゆきの「地上の星」をふいに思い出した。

あのMVに出てくる、世界の国々の人々。労働者、庶民、消防士、医療従事者、放牧する人、畑を耕す人。みな日焼けし、皺の刻まれた顔で、それぞれにまっすぐにカメラを見つめる。傷だらけのSEIKO 5はきっとあの人たちの腕に巻かれ、しっかりと時を刻んでいるに違いない。

風の中のすばる、砂の中の銀河、

みんなどこへ行った 見送られることもなく

名だたるものを追って輝くものを追って

人は氷ばかりつかむ

つばめよ 地上の星

いまどこに あるのだろう

 

冠婚葬祭用メカニカル

自分の相方同様、腕時計はチプカシやG-SHOCKで押し通すという人も多かろう。時代はミニマル、ライト感覚である。因習や一時的なトレンドやらに踊らされる事なく、無理しない自然体なスタイルは好ましく思える。21世紀的人間合理主義とでもいうべきか。

しかるに・・・

世には冠婚葬祭というものがある。

こういう方面はまだまだ合理主義は未開化で、やれ焼香の順番がどうの献花の並べ方がどうのとおどろおどろしい八つ墓村的世界が残っている。最近では「平服でお越しください」なんて葬式案内状も多いが、うかつに黒のタートルネックにジャケットくらいで行ったら目も当てられないほど浮いてしまう。

なので相応の年齢でまっとうな社会人のクローゼットの片隅には黒の礼服が吊ってあるものだ。それに合わせる腕時計となるとやはり、嫌でも前世紀の価値観を引きずったものにならざるを得ない。

さて、軽快な普段用チプカシとは別にコンベンショナルな腕時計を冠婚葬祭専用で持っておくのであれば、ソーラーなら日照不足、クォーツなら電池切れが心配になるのは前回書いた通り。ならば機械式(メカニカル)腕時計はどうだろうか、と考えた。ゼンマイを巻けばいつだってチクタク動くのである。精度はクォーツに劣るものの、2、3日内であれば実用上差し支えがあるほど狂うわけでもない。

そこで今回買うことにしたのはコレ。

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SEIKO 5逆輸入版。

SEIKO 5なんて往年の70年代の自動巻き、まだ製造している事にも驚いたが、新品でも諭吉一人というから更に驚く。電波ソーラー修理代を越えないのなら、と相方も納得してくれた。国内販売はないので逆輸入。まあSEIKOのマークを付けている以上、機械は信頼してもいいだろう。

実物をみると、ケースや文字盤の質感は望外に良い。華やかさや高級感は微塵もないが、雑貨時計とは一線を画している。実にキチンと普通の腕時計である。これなら冠婚葬祭で口さがない親戚のオバチャン連中に見咎められる事もなかろう。同窓生で腕時計自慢になったりすれば別だが(男はよくある)

価格で数倍する停まった電波ソーラー時計の横に並べても特に差は感じない。文字盤は小振だがデザインがすっきりしていてむしろ時刻がよく分かる、と相方は気に入った様子だ。自分などは巻ベルトという点が気になる。チャラついてエッジもやや手触りが良くないのが値段相応か。その点電波ソーラーはムクの上質なものだった。交換しようと思っていたが、これでいい、むしろ軽いのでこっちの方がいい、と相方は言う。

ベルトのエッジは3Mのサンディングパッドで軽く当たっておいた

まあ少々放ったらかしでも振れば動き出す、というところが何と言っても安心な様だ。奥方様は今日もチプカシを巻いてお出かけである。

 

電波ソーラーの罠

さて一方、相方は軽くて気兼ねのない所が気に入ってチプカシばかりする様になる。メインの国産ブランドの腕時計はコロナ禍という事もあり、タンスの上で埃をかぶったままいつの間にか止まってしまっていた。

メンテフリーの電波ソーラーが、である。通常は室内照明でも大丈夫という事だったが・・・たまにショッピングモールに車で行って地下のパーキングに停めてお買い物、程度だとほぼ日光など浴びないし、やはり時折は強烈無比なる太陽パワーを直接受けねばならんのか。

電波ソーラーだから窓際にでも置けば即復活、と当初は軽く考えていた。ナルホド確かに秒針は動き始めたが、長針短針はあらぬ時間を差したままだ。

そんなもんリュウズ回して時刻合わせたらエエがな、、、えっ出来ひんのん?

この機種は電波受信オート補正のみで、マニュアルでの時刻合わせは出来ない。

なんでまたそんな設計をするのだろう。

リュウズに見えるのはただの押しボタンである。もう一つのボタンと組み合わせて入力操作する。取説片手に複雑怪奇な手順で試みるが、どうやら電力に余裕がないとオート補正を中断してしまうようだ。長針短針がグルングルン回るのだから補正には多大な電力が必要なのだろう。そこで10日くらい2階の南向きの出窓に置いておいた。しかし結果は変わらない。

どうも二次電池、いわゆる充電バッテリーまで完全に干上がったらこうなるらしい。ならば電池を交換すれば即復活、と当初は軽く考えていた。

なんならワシやったろかー?、、、エエ?ムーブメントの分解が必要?

この機種の二次電池交換は町の時計屋レベルでは手に余り、一律メーカーサービス送りとなる。

なんでまたそんな設計をするのだろう。

当然費用も掛かる。およそニマンエンと聞いてややのけぞった。修理は物理的には可能ではあるが経済的には合理性に欠ける。つまり新品買う方が利口、となる。最近の機械モノにはよくある話だ。そう思えばこの機種の設計の謎も解ける。すべからく生産コストを第一にしておりメンテナンスや修理の事はあまり考えていない。

しかし相方は頑なに、修理する、という。ほんの数回しか使わずに捨てるのはいかにももったいない。

気持ちはわかるが現実問題ここで大枚叩いてバッテリー交換したところで、この先何年かすれば同じ結末が待っているだろう。無論、放置しなけりゃいいのだが、それはつまり重くて気の遣う腕時計を嫌々身につけていくストレスも負い続けなければならん、ということだ。

結局、修理は諦めた。

だから電波ソーラーはダメだ、と言いたい訳ではない。使用頻度の低い腕時計にアナログの電波ソーラーは考えものだ、という事だ。レディスサイズはソーラーパネル二次電池も小さいということもあろう。自分のG-SHOCKはデジタルなので元から電池消費は少ないし、車のセンターコンソールに置いてあるので適度に日光を浴びている(その分樹脂の劣化が早いけど)息子のカシオの電波ソーラーも毎日通学に使っていて今のところ問題はない。(ただし使うほどに二次電池はヘタり、およそ10年で交換を要するらしい)

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相方はしょげ返っている。新しいのを買ってあげるよと言ったが、もう腕時計なんて要らない、チプカシでいいと言う。まあ気持ちはわかる。人の気持ちのわからんのは時計業界の方だろう。

とはいえ、そもそもくだんの電波ソーラー腕時計は法事の時などに着けていくのにフォーマルな時計がなかったから買ったものである。冠婚葬祭にチプカシは流石にどうだろうかと思う。相方は普段は合理的な考え方をする一方で、初詣や彼岸の墓参りなどは欠かさず行くなど、日本人としての伝統行事を決して軽んじない面も持ち合わせている。なのでその辺はやはり気になるようだ。

もちっとフォーマルにも向くデザインの手頃なクォーツで・・・

とも思ったが冠婚葬祭限定となると年に1、2回程度だしクォーツでも電池切れの不安が残る。法事や結婚式ならともかく一週間前に予定が分かってる葬式などまずない。かくいう自分も急な葬儀の時にフォーマル用のクォーツ時計が電池切れ。普段愛用のハミルトンカーキの革ベルト(白ステッチだった)を大慌てで金属バンドに替えるというドタバタを演じた事があった。

 

はていかにせむ。

 

作業用時計に求めるもの

てなわけでチープカシオがやってきた、ヤアヤアヤア。

薄い、そして軽い。

測ってみるとたったの20g。

普段愛用のハミルトンの自動巻きは革ベルトで70gほど、その1/3もないのだから、いかに軽いかがわかる。
実際、これだけ薄くて軽いと大袈裟ではなく着けているのを忘れる。着替えてメシ食ってそのまま風呂に入る時にようやく腕に巻いたっきりだった!と気づいた程だ。

しかしペラペラのヘナヘナである。相方のチプカシはレディスサイズなので薄くてもそれなりにバランスが取れていたが、コイツはちょっと・・・

あまりにヒョロヒョロ過ぎてブルーワーカーで鍛える前の貧弱な僕、といった趣である。

   右上のコマが貧弱な僕

まあ作業用だから誰に見せる訳でもない。オモチャだろうが高級感に溢れていようが関係ない。とはいえ、どうも心理的な頼りなさを感じてしまう。無理な力が掛かると見るからにパキッといきそうだ。プラ風防もケースより出っ張っていて引っ掻きには見るからに弱い。車いじりや大工仕事など荒っぽい作業にはちょっと気がひける。

むろん、ブツけた時にチプカシ君の方が弱ければバイクのタンクなどを傷付けにくい。お客さんのバイクを扱うプロのメカニックならそういう考え方もアリだろう。

しかし、どうせ安いんだから、と割り切れないのが自分の貧乏性なところである。車の下に潜るときなど気が気でない。結局、作業用としては不採用となった。別にチプカシは悪くない、自分のミスチョイスである。

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というわけで、現在の作業用時計は以前使っていたシチズンのダイバーズ風。G-SHOCKの前に使っていたものだが、いつ買ったのか、いくらしたのか定かではない。ウレタンベルトが切れて工具箱に入れたままになっていた。試しに電池を入れ替えてみたら何食わぬ顔でコチコチ動き出したので使い古しのNATOベルトを付けて復活させた。

ゴジゴジに傷だらけだったベゼルは安手の柔らかいプラ素材、それがかえってガラス面やバイクのタンクなどを傷めずに済んだようだ。そう思えばメタルベゼルの本式のダイバーズよりも作業用には好適なのかもしれぬ。

ベゼルの傷は一旦削り落としてサンドブラスト風に仕上げてみた。文字盤の安っぽいマークもブラックアウト。ケースも既にハゲチョロけだからもはや何の気兼ねもない。傷だらけの補修跡だらけ、かえってプロの道具っぽい。

薄さ軽さはチプカシに及ばないが、38mm径だから大騒ぎするほどの事でもない。G-SHOCK よりも袖への収まりは良く、時刻は格段に見やすい。(その点では数あるウチの腕時計の中でも傑出している)防水もバケツで雑巾洗う程度なら10気圧もあれば充分すぎる。

軍装オタクと自衛官の差・・・みたいな風情

ケース本体は真鍮メッキの安物。とはいえ金属には変わりない。腕に巻いた時の適度な重みと剛性感はヘナちょこのチプカシ坊やとは段違いだ。G-SHOCKと比べてさえ心理的な頼もしさはコイツの方に軍配があがる。少々手荒に扱われてもビクともしまい。ブツけようが踏まれようが平気の平左。

「さあ、これからチョッくらハードな作業といくか」

「ああ、いいぜ」

と言葉少なに返してくれる、無骨な荒武者の平左衛門、そんな時計だ。

やはりハードな仕事にはタフな相棒が心強いと言うことが今更ながらわかった。例の災害出動の折にも見にくいGSHOCKでなくこっちを身につけていきたいと思っている。

夜の街でオネエちゃんに見せびらかせたい御仁の腕にはまるで向かないが、何度も言うが作業用である。ペンキの付いたGジャンやオイル染みだらけの分厚いコットンの作業着とベストマッチだ。昼になったら近所のパン屋でベーコンサンドとコーヒーを買って、地べたにへたり込んでお日様を浴びながら齧り付くのだ。

俺はそれで幸せだ。

別にそこまでして作業用の腕時計など要らんワイ、と言われそうだが、腕時計もせずにチンタラやっていて日没、真っ暗な中でキャンプの撤収せざるを得ず、周りに迷惑かけまくる、という憂き目は見たくない。君の事だよN君。

 

 

 

 

チプカシの魔力

コロナ禍になる少し前の話だ。

相方が作業用に傷がついても気兼ねがない手軽な腕時計が欲しい、と言い出したのでチプカシを勧めておいた。ヨメが選んだのはテロリスト御用達80年代風デジタルやイマドキ風のユニセックスのではなく、レディース向けだがシンプルなものである。

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実物を見たいというのでジョーシンだかエディオンだかの実店舗で買ったのだが、それでもなんと2千円しなかった。

恐ろしく安い。

だからといって恐ろしく安っぽいか、というとそうでもない。

ホームセンターでよく見かけるなんだか知らないメーカーのはパッと見の高級感を出そうとしてキンキラキンのメッキやごちゃついた文字盤のデザインがかえってウソくさい。このチプカシはシンプルなデザインと樹脂素材、背伸びしない選択が気持ちいい。

チープ・シックとはこのことなのだな、と思った。

着け心地が良いので相方もそればかりするようになった。モノにこだわらないサラリとしたライト感覚が、むしろ現代にあってカッコよくさえ見える・・・池波正太郎がどういうか知らんが。

常に正確な時刻を知らせるという腕時計本来の役目には何らの不足もない。カシオだから機械的にも安心感がある。安くて軽くて薄くていつでも正確だ。

そういえば懇意のバイクショップのメカがチプカシのデジタルモデルを巻いてるのを思い出した。バイクや車いじりは狭いところに手を入れるから薄いほうがいいのである。

自分もチプカシが欲しくなった。昭和の文豪のボヤキなどもうお腹いっぱいなのである。

いままでバイクいじりやDIYなどの作業時にはG-SHOCKを腕に巻いていた。

[カシオ] 腕時計 ジーショック DW-D5600P-1JF ブラックコレ

・・・ちょっと見にくい。

そもそもデジタルは見やすくはないがデザイン重視で反転モデルにしたものだからなおさらだ。暗いところでは腕を上げるとモーションセンサーでバックライトが自動でつく。ただし点灯時間は2秒とない。

パッと腕を上げて時計を見ながら「ええ〜っとぉ〜」と目をしかめたり遠ざけたりしてるうちにバックライトがパッと消えてしまう。パッと腕を上げ直す、「ええ〜っとぉ〜」パッと消える。これを2、3度繰り返す。ヤレヤレ、である。最近、目の病気になってからはもうハナっからバックライトボタンを押しにかかる。作業中は右手が塞がってることが多いから実に面倒だ。

バックライトON (ナイロンベルトに無理やり交換してある)

「もう若くないサ」

と君に言い訳したね。君も見るだろうか"いちご白書"を・・・

むろんデジタルであるからきわめて正確な時分秒がわかるというメリットはある。しかし別に時限爆弾を解除する訳でもあるまいし、なにも現在11:59:55秒!だとわからなくても支障はない。スパナ片手にチラっと見て「お、そろそろ昼時かぁ」程度に時間がわかればそれで良い。

やはり時計はアナログに限る。

G-SHOCKにもアナログはある。

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ただしどれもこれも無闇にゴツい。クォーツとはいえチクタク動くアナログの機械を内蔵してG-SHOCKの耐衝撃基準を満たすためにはケースを強大化する必要があることは理解できる。ただしゴツいだけでなく無駄にゴテゴテと脳筋的ファッションで、ゴリラはどう言うか知らんが、少なくとも自分の好みではない。いままでなんとか腕に巻いてこれたのは、このDW5600系の薄さ、シンプルさ、スタンダード感があってこそだ。

別にサバイバルナイフでジャングルのアナコンダを仕留める訳でもあるまいし、何も鉄壁の耐衝撃性能がなくても支障はない。

そう思えばG-SHOCKはtoo muchなのである。

(ただし、自分には建築物応急判定士として大規模災害直後の被災地に赴く任がある。ハードでタフな活動が要求される。おそらくこの電波ソーラーかつ頑強無比なG-SHOCKをしていくだろう)

そんな折、チプカシがちょうどネットでセールになっていたので早速ポチる。

今までミリタリー系の時計ばかりだったから、無意識にそれっぽいデザインのを選んでしまう。

CASIO QUARTZ カシオクオーツ MQ-71-1B 腕時計 時計 メンズ 男女兼用 クオーツ 樹脂 ブラック カジュアル [並行輸入品] 

しかし、、、

本来ハードなミリタリーテイストと、この薄さ、フラットさ、チプカシのライト感覚は相性がもひとつよろしくない・・・なんてことが分かったのは到着して現物を見た時であった・・・

画像で見た時は気にならなかったのだけど。