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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

Seiko5は地上の星である

さて奥方のSEIKO 5、つらつら眺めるだに「これイイよなぁ」となっていた。

機械式時計ならではの重厚さと有機的なメカニカル感。加えてSEIKOの信頼性と安心感。実にオーソドックスで外連味がない。金属ベルトは昭和感が残るが本体の質感は上々。革ベルトに変えれば見違えるだろう。それが諭吉お一人。

なぜこんなにお手頃価格なのか。
というかなんでイマドキ普及版の機械式時計をSEIKOが作っているのか。
そしてなぜ国内正規販売はしていないのか?
(先頃、一部の大径スポーツモデルのみ新ロゴに刷新し国内販売されたが)
疑問と共に興味が湧いて出た。

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調べるとSEIKO 5は中南米、または中東などがメインマーケットだとわかった。

なるほど、そういった国々ではクォーツの電池交換が難しい地域が多い。駅前の商店街の時計屋さんで1000円で交換、ってなわけにはいかない。だいたい駅前商店街なんてない、いや駅がない、なんなら鉄道すら通っていない、そんな場所では普及価格の機械式腕時計の需要が高いのは当然だ。真逆の環境の日本国内での販売がないのも頷ける。

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世界最強万能腕時計はG-SHOCKの電波ソーラーと思い込んでいたが、そうではなかったのだ。ソーラーだって二次電池交換が必要なのは前述の通り。電波時計は運用できない土地、スマートウォッチなんぞ論外な地域は世界中にゴマンとある。

SEIKO 5の内臓機械(ムーブメント)はいたってシンプルかつ丈夫な構造で、かれこれ50年以上作り続けられている。現在では製造は完全にオートメーションに移行しており、製造コストの低い海外生産でも品質は保てる。とやかく言わなければ数十年も平気で動き続けるらしいから、コストパフォーマンスは世界随一だ。

価格面では今では更に上(いや下か)をいく中国製ムーブメントも存在するらしいが、SEIKO 5が築いてきた実績、絶大な信頼感には及ばない。安価な事よりも壊れないことの方がはるかに大事だ。広大無辺な土地であれば尚更だろう。

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こういうStoryを聞くと機能主義大好きメカ好きな男子ならばグゥゥッとくる。くるだろう。え?こない?ふうん、そうかね。ならまあここから先は読んでもツマラナイかもしれないよ。

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SEIKO 5、道具としての存在感がある。懐古趣味ではなく現代においても機械式であることに合理的な意味を持つ腕時計が存在しているとは思わなかった。凝ったムーブメントを採用し、究極の精密感と装飾性を競う華美で瀟洒な貴族的世界ともまったく違う。自分はそういったお歴々の腕に巻かれている腕時計より、見渡す限りの砂漠や密林の大地や最果ての地で、懸命に働く人々の腕に巻かれている腕時計の方に心を惹かれる。それがSEIKO 5なのだ。

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中島みゆきの「地上の星」をふいに思い出した。

あのMVに出てくる、世界の国々の人々。労働者、庶民、消防士、医療従事者、放牧する人、畑を耕す人。みな日焼けし、皺の刻まれた顔で、それぞれにまっすぐにカメラを見つめる。傷だらけのSEIKO 5はきっとあの人たちの腕に巻かれ、しっかりと時を刻んでいるに違いない。

風の中のすばる、砂の中の銀河、

みんなどこへ行った 見送られることもなく

名だたるものを追って輝くものを追って

人は氷ばかりつかむ

つばめよ 地上の星

いまどこに あるのだろう