コロナ禍になる少し前の話だ。
相方が作業用に傷がついても気兼ねがない手軽な腕時計が欲しい、と言い出したのでチプカシを勧めておいた。ヨメが選んだのはテロリスト御用達80年代風デジタルやイマドキ風のユニセックスのではなく、レディース向けだがシンプルなものである。
実物を見たいというのでジョーシンだかエディオンだかの実店舗で買ったのだが、それでもなんと2千円しなかった。
恐ろしく安い。
だからといって恐ろしく安っぽいか、というとそうでもない。
ホームセンターでよく見かけるなんだか知らないメーカーのはパッと見の高級感を出そうとしてキンキラキンのメッキやごちゃついた文字盤のデザインがかえってウソくさい。このチプカシはシンプルなデザインと樹脂素材、背伸びしない選択が気持ちいい。
チープ・シックとはこのことなのだな、と思った。
着け心地が良いので相方もそればかりするようになった。モノにこだわらないサラリとしたライト感覚が、むしろ現代にあってカッコよくさえ見える・・・池波正太郎がどういうか知らんが。
常に正確な時刻を知らせるという腕時計本来の役目には何らの不足もない。カシオだから機械的にも安心感がある。安くて軽くて薄くていつでも正確だ。
そういえば懇意のバイクショップのメカがチプカシのデジタルモデルを巻いてるのを思い出した。バイクや車いじりは狭いところに手を入れるから薄いほうがいいのである。
自分もチプカシが欲しくなった。昭和の文豪のボヤキなどもうお腹いっぱいなのである。
いままでバイクいじりやDIYなどの作業時にはG-SHOCKを腕に巻いていた。
・・・ちょっと見にくい。
そもそもデジタルは見やすくはないがデザイン重視で反転モデルにしたものだからなおさらだ。暗いところでは腕を上げるとモーションセンサーでバックライトが自動でつく。ただし点灯時間は2秒とない。
パッと腕を上げて時計を見ながら「ええ〜っとぉ〜」と目をしかめたり遠ざけたりしてるうちにバックライトがパッと消えてしまう。パッと腕を上げ直す、「ええ〜っとぉ〜」パッと消える。これを2、3度繰り返す。ヤレヤレ、である。最近、目の病気になってからはもうハナっからバックライトボタンを押しにかかる。作業中は右手が塞がってることが多いから実に面倒だ。
バックライトON (ナイロンベルトに無理やり交換してある)
「もう若くないサ」
と君に言い訳したね。君も見るだろうか"いちご白書"を・・・
むろんデジタルであるからきわめて正確な時分秒がわかるというメリットはある。しかし別に時限爆弾を解除する訳でもあるまいし、なにも現在11:59:55秒!だとわからなくても支障はない。スパナ片手にチラっと見て「お、そろそろ昼時かぁ」程度に時間がわかればそれで良い。
やはり時計はアナログに限る。
G-SHOCKにもアナログはある。
ただしどれもこれも無闇にゴツい。クォーツとはいえチクタク動くアナログの機械を内蔵してG-SHOCKの耐衝撃基準を満たすためにはケースを強大化する必要があることは理解できる。ただしゴツいだけでなく無駄にゴテゴテと脳筋的ファッションで、ゴリラはどう言うか知らんが、少なくとも自分の好みではない。いままでなんとか腕に巻いてこれたのは、このDW5600系の薄さ、シンプルさ、スタンダード感があってこそだ。
別にサバイバルナイフでジャングルのアナコンダを仕留める訳でもあるまいし、何も鉄壁の耐衝撃性能がなくても支障はない。
そう思えばG-SHOCKはtoo muchなのである。
(ただし、自分には建築物応急判定士として大規模災害直後の被災地に赴く任がある。ハードでタフな活動が要求される。おそらくこの電波ソーラーかつ頑強無比なG-SHOCKをしていくだろう)
そんな折、チプカシがちょうどネットでセールになっていたので早速ポチる。
今までミリタリー系の時計ばかりだったから、無意識にそれっぽいデザインのを選んでしまう。
しかし、、、
本来ハードなミリタリーテイストと、この薄さ、フラットさ、チプカシのライト感覚は相性がもひとつよろしくない・・・なんてことが分かったのは到着して現物を見た時であった・・・
画像で見た時は気にならなかったのだけど。