お気に入りの面相筆をば握りしめ、ふたたび紫電に戻って日の丸の筆塗りに挑もうとする今日のブログ主である。
日の丸は最も手描きし易い国籍マークとして世界中のモデラーに知られている。これに勝るのは三角定規しか持っていないドイツ人の鉄十字くらいなものだろう。英国やフランス機は同心円が文字通りロンパリになりそうだし、星のマークで正五角形をコンパスで描くのは当分ご免だ。イタリア機の十手やスエーデン機のお山3っつなどは考えたくもない。逆にタイ空軍の象さんなんかは一回りしてむしろ描いてみたくなる。
赤い丸だけで簡単といっても自分の様に筆塗りを始めたばかりのビギナーには真円をフリーハンドで描くのはやはり難しい。今年の正月に作った零戦52型では真円に苦労し、緑フチのみデカールを切り抜いて貼る、という手法で逃げた。
むしろその方がメンドクサイんじゃないかという気もする。今回はパーツ状態で軽くケガいておいたガイドラインに沿ってフリーハンドでトライした。少しずつ上がっていくハードルに立ち向かうのだ。高すぎて蹴り倒してしまったかもしれないが。
使うのはファレホ。最初に塗料を乗せるといつも先行き不安になる。
大丈夫かなあ…
な、なんとか色は乗ってきた…
発色も円もまずまずの線まで持っていく。このあとシルバーでハミ出しをタッチアップ。この時に穂先の加減が効く面相筆が活躍する。シルバーのハミ出しをまた赤でタッチアップ、赤のハミ出しをタッチアップ…これを延々繰り返していくうちに眠くなってきてパトラッシュが優しくそばに寄り添ってきたら最終回。
次に上面。
零戦52型の時はあらかじめ下地を白く塗り残しておいたのだが、境界がうまくなじまなかった。前回の自分はマジックリンで下地を出しておく、というメモを残して置いてくれているが、今回は塗膜が厚くなってしまったので段差が出来る公算が大きくその技は見合わした。ファレホ様の隠蔽力を信じて濃緑色の上から赤を乗せる、という禁じ手に出てみる。
うへぇ、案の定だ。色乗りは最悪。ガッシュにすればよかったか。
大丈夫か?
う〜ん…
いまだヒノマルの域に達することができぬウメボシ、といった趣き。
「早よう立派なヒノマルになりいなあ」と何遍も塗料を掛けてくれはった。
あのときからワテは、ワテはこいさんが好きになりましたんや…
アホなこといいながら塗っていたらこんな具合。なんぼファレホやゆたかて5回も6回も塗ったらそら厚ぼったァもなるわいナ。今回は全体に荒削りな仕上げやからまあエエか…
ファレホ信者にはなれぬ自分だが途中で色を変える訳にもいかず、胴体も同様ににゅるにゅると塗り始める。「早ようヒノマルになりいなあ、なあてアンタぁ」
そないゆうたかてやなあ、胴体はカーブしとっさけぇ円の歪みを見て取んのンが難しいねんて、と言い訳。
ともかくも、これで一人前の日本機になりましてん。待ってて、こいさん。
ん?胴体の日の丸の位置が低すぎる?!
ウアッチャ〜しもたぁ〜。アホかいな。せやしパーツ状態でケガいたりすなっちゅーたんや。いやまあ単に自分がウッカリ位置を間違えただけなのだが。しかし三次元になって初めて気付くこともある、と。
さあていかにせん。どうせ塗膜はコテコテで円も歪んでる、ここは目をつぶろか。黙っとったらバレへんバレへん…とはなんぼ関西人の自分でも到底思えない。ヘタクソなのは仕方ないとしても、間違いを間違いと知って正さないのはどうにも寝覚めが悪い。そこで…
イソプロピルアルコール50%
ファレホはアルコールで落ちる。消毒用アルコールがコロナ禍で欠乏していた春頃にはこんなブログを公開したらそれこそイシツブテが飛んできたかもしれないが、そう言えばあの時は模型用にストックしていたコイツを瓶ごと家族用に供出し、親父のオタク趣味が家庭の役に立つという、我が家史上初の出来事となった。今ではハンドジェルなどの供給が安定してきたので迷わずコイツを使える。
テロりん。塗った直後ならなお簡単。
下地の熟成ガッシュはアルコール攻撃でも負けない強い子だ。ただしこの後、以前のケガキを削り落とすため、ペーパーがけしたから結局下地は出てしまった。その上で新たにテンプレートを作って円をケガキ直し、再度筋彫りをさらってリベットを打った。写真には写ってないけど、人知れず悪戦苦闘しているのだ。
いくつもの苦難を重ねた末の涙と汗の日の丸ッ!もはや境界線は涙でガビガビ。
脳内にはゆずの「栄光の架橋」が流れていることでしょう。
…次は尾翼の機番だな……ふう(タメイキ)