絵筆を口に咥えて腕組みしている今日のブログ主である。片眉を吊り上げ寄り目で何やらしきりに睨んでいる。いつのまにやら”浮世絵師”気分になったようだ。調子に乗っているうちに翼後縁の赤ラインもいれておこう。
軽くケガいてそれをガイドにフリーハンド。濃緑色の上に赤なので目立たないがかえってその方がいい。こんなラインがデカデカ目立って見えるなんて戦闘機らしくない。直線がヨレそうになったら少しカスレさせながら誤魔化していく。ついでに「フムナ」の字もチョチョイと書いておく。
「へっ、細線でも小文字でも持ってきゃあがれってんだベラボウめぇ。朝飯めえたぁこのこってい、ああらヨ〜っと」絵師と言うより天秤かついだサカナ屋みたいな威勢の良さだ。
…ところが、デカールをみるとなんと左舷は漢字で「踏ムナ」となっている…はてな?
川西飛行機は後世に紫電を筆塗りする無礼なモデラーを泣かそうと罠を仕掛けたのか。それとも右から乗るのは幼稚園児だけだったのか。理由はサッパリわからない。いずれにせよアオシマ のリサーチが行き届いていることには感心する。
「テヤンデェこんな小せえ字で"踏"なんざ描けるもんじゃねえ。コチャコチャっと描いて誤魔化しちまおう」コチャコチャっ…
実はこの画像は後日のもの。"踏ムナ"と書いてある部分にスレハゲがあるのはおかしい、と気づいてあとから濃緑色で塗りつぶした次第。
これが証拠画像。ボーッと作ってるとこういうことになってしまう。技術ばかり追い求めた小手先模型の悪い見本。
ちなみに"フムナ、ノルナ、NO STEP "など”踏んではいけない”表示はそこが動翼、フラップ部分などで強度が低い部分、という事は飛行機マニアには常識である。
いまさら言うまでもないだろうが特に紫電の場合はここは極めて重要な「自動空戦フラップ」だ。これは「蝶型フラップ」と並んで"飛行機マニア協会 大戦機派 日本機部門 フラップ分科"では二大必修暗記項目とされている単語だ。
非協会員の方々の為にあえて「自動空戦フラップ」を説明すれば、手動で操作する通常の空戦フラップと違って、機体にかかるGを水銀で検知し自動的に最適角度でフラップをくり出す仕組みでこのおかげで紫電改は翼面荷重180kg/㎡の重戦でありながらも軽快な空戦性能を発揮した川西独自の必殺秘密装置なのだ!
これは紫電改の試作機 「踏ムナ」の注意書きもかすかに見えている、様な…
80年前は大変だネ、今ならコンピューター制御で簡単に出来るのに…と笑ってしまいそうだが、書籍で説明や構造図などを見ても文系の自分などにはまるで理解の範疇外だ。うかつに馬鹿にはできない。
ナニガ ド-シテ ド-ナルン ヤラ…
読んでいるとむしろ馬鹿なのは自分の方であると思い知る。例えば今の自分がタイムスリップし、80年前の飛行機会社の設計者に出会ったとすればそれは少しは未来人として何かの役に立とうとするだろう…
「…いや層流翼には滑らかな表面仕上げが必要でぇ、境界層がぁ…ええっとぉ…」
相手は科学者である。たちまちの内に黒板一杯に数式を書き連ねられて論破されるに違いない。ググろうと思ってiPhone取り出し「あー圏外かぁ…」とつぶやいてる自分が眼に浮かぶ…馬鹿だねぇ、まったく100年規模の馬鹿だねぇ…