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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「失楽園」レベル1/72ファルコ-17

基本的なウェザリングを終え、ファルコに上翼を取り付ける。

ようやく最終形となる千秋楽の大一番である。デカール貼付け後の主要部品の組付けは複葉機ならではの段取りだ。接着剤が糸を引いたりしたらオジャンである。ここまできてそんなトラブルになったら真っ白になって燃え尽きて灰燼に帰してしまうだろう。

まあそんな小学生みたいなヘマはしないとは思うのだが、若干の緊張は隠しえない。下翼上面をマスキングしようかと思ったが、「塗装ペロリ」の恐怖が蘇ってくる。慎重に仮組みをしてダボやホゾを整えておくにとどめた。

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しかしどう考えても「胴体を押さえる手」「支柱をささえる手」「上翼を持つ手」「接着剤をつける手」と手が4本必要な計算になる。メインの支柱は前後左右で4つあるから欲を言えば手は7本欲しい。

あいにく自分は千手観音でも釜爺いでもないので手は2本きりだ。猫の手を借りてもまだ足らない。近所の岡田歯科みたいに可愛いアシスタントを三、四人侍らせておければ理想だが。若い時の自分はどうやって支柱を組んだのか?

そういやその頃「ミーコ」という名の可愛い、、、猫を飼っていたが手は貸してくれなかった。たぶん下翼に支柱を付けておいて接着剤の半乾き状態から力ずくで正しい角度にもっていったのだろうな。

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猫さえいない40年後の今回はスマートに「瞬間パテ」を使うことにする。と言えば聞こえはいいが実は支柱を薄く削ったものだから、むやみな力技には耐えられないという事情がある。やはり要らぬ手を加えた所が祟っている様な気がするのだが、気のせいだろうか。

胴体から一箇所づつ、支柱、翼の角度を確認しながら「瞬間パテ」+「硬化スプレー」で決めていく。この「瞬間パテ」は「パテ」の名前通り硬化するまで時間にやや余裕がある。パテとして大きなホゾ穴を埋めてもくれるし、むろん硬化すれば接着力はあるからこういう場合にはもってこいだ。 

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 但し、この硬化スプレーは量が多いとプラや塗装にシミが残る。瞬間パテをちょんと置き、硬化スプレーを微量にチワワ〜と拭いて固定するのだが、手元が狂ってドバシュと出たら塗装がお釈迦だ。ここまできてそんなトラブルになったらにんにくラーメンを食べたドラキュラみたいになってしまう。自分はスプレーボタンの下にワッシャーを二枚かましてドバ吹き防止にしている。かますのは五円玉でもいいが、コストが五円かかる。貧乏人にはおいそれと真似できない。

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塗料皿に出した瞬間パテを竹串か樹脂製の細棒でチョンと盛って硬化剤スプレー、というパターンを今回のファルコ製作では多用した。粘度も硬化速度もちょうどよく、色がグレーで形状も掴み易い。硬化後の切削加工も受け付けてくれる。この瞬間パテには随分と助けられたものだ。

どちらも40年前にはないスグレモノ模型用の副資材だ。ただしちょっとお値段は張る。値札を良く見ずに二つカゴに入れてレジで金額を聞いて一瞬固まった、、、、モノがモノだけに。(瞬間接着剤と硬化スプレーだから、と言いたいのね)

さて、複葉機につきものの張線は片側二本だけと少ないファルコなので自分の様な根気のないグータラ関西人でもくみし易い。ただしこういう張線はたわんでしまうと途端にみっともなくなる。これまでは要所要所で結んで止めるという技法しか知らず、家庭科の裁縫が苦手で全部女子に頼んでやってもらってた自分ではとても覚束ない。複葉機でも1/72のWWIのニューポールやキャメルなどの蚊トンボほどの機体なら張線自体をスッとぼけてしまう。

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今回試したのは上翼にテグスを埋め込んでもう片方を下翼に開けた穴に通し、テンションを掛けた状態で伸ばしランナーを下から穴に詰めて塞ぐ、というネットで見た技法。頭エエなあ。

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ランナーとテグスは瞬間で固定後ニッパーでカット。

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難関の張線がうまくいったのでホクホク顔。

だが、このテクニックでは当然下面にランナーと穴の跡が残る。補修すればベストだろうが、デカールを貼ったあとの模型にペーパーを当ててエアブラシを吹く勇気がなかなか出ない。ここまできてトラブルがあったら走馬灯がフル回転することになる。

裏返しのファルコを前にしばらくロダン「考える人」の物真似をして思案した。

「全力投球でここまで来たのだから、最後まで全力投球だぜ!父ちゃん」と青春全開で修正する事にした。情熱カロリー七草粥程度でどっからこんな闘志が湧いてくるのか自分でもわからない。脳内麻薬物質がこんな五十親父の脳からでも滲みでるんだろうか。それとも火事場の馬鹿力か。あるいはただの狂気暴走か。。。

国籍マークその他を慎重にサランラップで養生し、ペーパー掛け、再塗装、、、マスキングを剥がし、、

フト気づくと下翼のデカールが!!! 

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今回最大出力での、、マンマッミーーアーーー!!

あわててあたりを捜索するもデカールの破片の姿はすでにない。ああ、ああ、我あやまてり。やらずもがな、やらずもがなだった、、くくく〜。幸い走馬灯は回らなかったが落胆 幻滅 消沈 の脳内ミックスジュース状態。

なぁ〜にが全力投球だ、何が青春全開だ、自らの技量もわきまえずにいらぬ欲をかくからこういうことになるのだ、アホボケカスー、ブルシット、ホンデナス、カッツオーとあらん限りの罵詈雑言を自分自身に投げつけてももう遅い。

必死になって善後策を考える。

他キットのデカール流用は?
・・・いや、わざわざ黄ばんだデカールに合わせた白帯、白十字と色が合わない
ヤフオクなどで漁ったらデカールの黄ばんだ古いグンゼやタカラ時代のがあるかも?
・・・いや、それじゃ糊も固着状態という可能性が大だ。

そもそも他のキットの命を絶つような「流用はご法度」という精進模型が今回は大前提ではなかったか?
・・・ぐぬ、ふぐ、むは、、、

ここにいたって万事休した

翼下面の穴など些事末事と捨て置けば良かったのだ。後悔先に立たず、後悔あとを絶たず。。。打ちつづくトラブルが一度ならず二度三度、やはり要らぬ手を加えたことがいちいち祟るのは気のせいではなかった。仏の顔も三度目の正直じいさん堀ったなら、残念無念びんしけん。とやや錯乱気味。

いや本当にこの時ばかりは両手で顔を覆って1畳半工房を後にするほかなかった。
大天使ミカエルに楽園追放されたアダムとイヴのごとく。。。

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「ヘタクソどもよ、去りなさい」

情熱総カロリー量は大きくマイナスにふれて栄養失調バタンキュー状態だ。40年前のニキビ面の自分がせせら笑って言う。「はい終了〜」

確かに、すこし前の自分ならここでゴングが「かぁ〜ん」と鳴ってただろう。。。

 


 

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