sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「ウェザリング・ハイ」レベル1/72ファルコ-16

デカールを乾燥させつつ数日がたった。「情熱」は自家製ヨーグルトが増殖する様なもので僅かづつながらわが身に蓄えつつある。

ここでおもむろに水性のフラットクリアーを塗料棚からとりだしエアブラシに注ぐ。まずデカールの部分はクリア濃度を高めにして慎重に砂吹き。デカールの保護の為だが水性とはいえ溶剤成分が多いとデカールが侵され気泡ができたりシワがよったりの惨事となる。あんなに苦労して貼ったデカールだ。これ以上トラブルがあったら坊主に戒名つけてもらう羽目になる。

クリアの層が出来たら、オモチャ臭かった胴体のファシーズと猫マーキング部分だけ薄いグレイを混ぜたクリアをうっすら吹いて馴染ませる。なんだか寝ぼけた猫になってしまった。。。

実物感を出すために自分はいつもこうやってコントラストと彩度を落とすのだが、彩度と一緒に明度も落としてしまって薄汚くなる、とは前にも書いた通り。これはもう手癖になってしまっていて、長年の自分の課題である。

デカールは仕方ないとして、今回はカウリングの黄色と白帯の明度だけは極力下げぬように気をつけたい。文字通りハイライトだからだ。いつもならここもドップリと黒のウォッシングで汚しまくるところだ。そして果ては骨董品屋の売れ残りの置物みたいにしてしまう。

ウェザリング(汚し)を施すと目覚ましく実感が上がるものだからつい夢中になってやり過ぎるのだ。これを自分はウェザリング・ハイ」状態と呼んで自ら戒めとしている。言わば「汚しヶ丘」Wuthering hights...?あれはハイツだけどね。


www.youtube.com

余談だが若き日の自分が最初のファルコを作ったのは丁度このKate BushのPVを初めて見た頃だ。"私よ、キャシーよ。とても寒いの、窓の中に入れてちょうだい"のリフレインは実に鬼気迫るものがある。あんな幽霊が出てきたら総毛立つ。「嵐ヶ丘」本編を読んだ時よりも衝撃を受けた。 You know it's me, Cathy~

 

そして最後に全体にクリアを吹いてツヤと質感を均一に整える。 

f:id:sigdesig:20190916134055j:plain

山ねずみロッキーファルコ

仕上がってみるとやはり胴体と下翼が緑がかっているのが気になる。こういう場合には薄く溶いた油絵の具でウォッシングして色相をずらしてやればいい。今回は緑味を殺すために色相環で補色の赤系統となる。まあ理屈はそうなのだが。。。

溶き油には油絵の具用のターペンタインを使う。こいつはエナメル溶剤よりも滑らかなグラデーションが出る。その代わりプラスティックを溶かすからあまり盛大には流せない。若き日にタミヤの「戦艦フッド」の繊細な甲板をグチャグチャにしてしまった苦い経験を思い起こす。ここまできてそんなトラブルがあったら三途の川にダイビングせねばならない。

なので事前テスト、恒例サンボルのおっちゃんに登場いただく。。 

f:id:sigdesig:20190916134142j:plain

「またかい、たいがいにせえ」

ためしに翼の左半分のみにウォッシング。均一に赤みがさしている。効果を見るために濃いめにしたが、これは加減がきく。もう少し薄めてファルコでいざ本番だ。下面、白帯、カウリングにかからないように胴体と下翼部分のみ慎重に軽く平筆でなでては様子をみる。上翼と色調が揃って自分の中のイタリア機のイメージに近づいた。大満足。

使用した色はベネチアン・レッド。名前といい、色といい、イタリア機には御誂え向きだ。以前ムリリョの「被昇天の御宿り」が日本に来た時に観にいって、興奮のあまり帰りに画材屋に立ち寄って使うあてもないのに衝動買いした油絵の具だ。まさかこんな風に役立つとは思わなかった。どんな阿呆な行いも必ず後で何かに繋がるものである、と、かのスティーブ・ジョブズも言っている。

www.youtube.com

3分30秒~5分15秒あたり。

 

迷彩の二色も落ち着いてこれならグレー系のウォッシングは不要だ。ただし、パネルラインに茶色が残ってはおかしいのでここだけはタミヤの墨入れ塗料で引き締める。ついでにぴかぴか目立ったカウリングのシルバー部分にも軽く流しておく。拭き取る時に使ったティシュでカウリング全体を軽くなでてやると刺々しかった黄色がすっと馴染んだ。

さらにガッシュこすれ剥がれを再現。明度の違うグレーを二色作っておき、イエローオーカーには明るいグレーを、ダークグリーンには暗い方でツマヨウジの先でちょんちょんと乗せる。こんな小さなスケールの飛行機にシルバーで汚してはギンギラギンに目立ってしまう。だいたいファルコは金属部分は胴体だけだ。羽布部分に銀剥がれはない。

 

f:id:sigdesig:20190916134236j:plain

しっとり落ち着いてまずまずの仕上がりになったと思う。ここ数年の自分の作品の中でも出色の出来栄えと言っていい。この仕上がり具合に満足したことで模型製作情熱量は自然回復する。庭に植えておいたルッコラが芽を出したので七草粥にして食べているような感じだ。あとは手垢の付いた表現だが「気力だけで」完成に向けて邁進する。

通常ならちょこちょこ小物類を付けてパステルなどでドライブラシすれば完成なのだが、そこはファルコは複葉ちゃんなので欲感しちゅうと情欲、、、じゃなくて翼間支柱と上翼の取付、張り線、という一大スペクタクルが待ち受けているのである。。。

 

 

にほんブログ村 その他趣味ブログ 模型へ
にほんブログ村