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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「色の道」レベル1/72ファルコ-11

色の道、といっても惚れたはれたのイロコイの話ではない、いやイロコイといってもヘリコの話ではない。なんの話?そうそう塗装色の話だ。

マーキングが決まれば即塗装、とはいかない。一応しがないスケールモデラーの端くれなので、塗装に入る前にリサーチはする。 40年前のプラモデルの塗装説明書を鵜呑みにするほどお人好しではないのだ。「フフフ、そう簡単に塗装はさせんよ、タイガー」とミスターX並みの不敵な笑みをもらしてみる。


リサーチといってもまあ手持ちの資料かネットを漁る程度、可能な範囲内で努力をするということ何も考古学的視点で真実を追求しようとは思わない。色泥沼にハマるのはごめんだ。むろんこれは最終的には各人が決めることで、箱絵と組立説明書だけ見て塗るか、それともマンセル表片手にスミソニアンまで実機を観に行くか、あるいはその間のどこかで折り合いをつけるかは、人それぞれ、十人十色だ。色だけに。基本自分は説明書&箱絵派だが時には掘り下げる事もある。いずれにせよ、自らの価値観を他者に押し付けるのは大人気ないとことだと思っている。Take it easy、気楽に行こうや、のスタンスは以前にも書いた通り。


さて、イタリア機の塗装は時期や戦域によって様々。部隊によってもマチマチで、さらに同じ部隊でも全く違う迷彩が混在しているのも珍しくない。イタリア人とてそれなりに研究はしているようだが、だんだんと迷彩本来の目的である”敵の目をくらます”という大前提から離れてしまい、いつしか「洋服の柄」的な感覚で夢中になっている気がする。「洒落者の国」だから、という勝手なステロタイプかもしれないが。

 

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もうバラッバラでごわす。。。

 

さてキットの塗装例と同じ162飛行隊のCR42は幸い大戦中のカラー写真が残っている。これをネットで漁って眺めてみた、、、

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背景、迷彩の柄から考えて同時期同一機体のはずだがこれだけ差があると何が何やら。
なんとなくフィルム段階で色かぶりしている気もするが。。。コリャちょいとアテには出来ん。

 

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こちらは自分の目で見た機体。ただしこの現存機は塗り直されていて、実機通りの色で塗られていたかどうかは、復元作業に当たった英国人を信じるほかはない。生きていれば今頃ハンディントンの自宅の裏庭でコーニッシュパイかなんかかじりながら椅子のビロードの張替えしてるところだろう。

 近年(2018)レストアが完了したファルコがある。元はスウェーデン空軍機のようで、わざわざイタリアのレストア専門のチームに委ね、実際の飛行も目指している、というから相当本格的だ。

 

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塗装色も現代の考証によるものだろうから最も信憑性が高いはずだが、、、どうも遊園地の遊覧飛行機に見えてくるのが不思議。綺麗すぎるからだろうか?修復後のダヴィンチの「最後の晩餐」と似た様なものかもしれない。

結局何が何やらわからない、という事だけはわかった。そこは今時なのだからしてネットでさらに調べる。調べるうちにとあるサイトで
「ファルコならばMrカラーのNo.◯◯◯を塗るのじゃ!
という賢者の教えが、、なんて都合のいい話は全くない。

どうも当時のイタリアには数社の塗料メーカーが林立し、同じ色でも各社ごとに相当なバラツキがあったようだ。うへぇ。(フィアットには2社が納入してたらしい)イタリア機全体で見るとイエローオーカー系4~5色、同様にダークグリーン系も4~5色、当然ブラウン系も、、多種多様な迷彩パターンもあいまって収拾のつかぬ状況となり、つまるところは支離滅裂。。。

さすがのイタリア人もコリャまずいと考えたのか、戦争中に軍指定の標準色に統一を試みるが、それまでのバラバラ塗料も在庫分がしばらくは入り混じって使われ続けたというから、さらに混沌となる。。。絶句。まさに色泥沼。

 

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イロイロ集めてきましたが。。。

 いずれにせよ塗料は自前で調色するしかない。近似色として示されたFSナンバーやハンブロールカラーの番号などを頼りにあたりをつけて調色のよすがとする。

元のファルコの色→現存カラーチップ→誰かがそれを見て選んだ近似色FSナンバーファレホ社→そのファレホ見て極東のツリ目人が適当に調色したラッカー。。。

時代を越え世界をかけ巡っての色の伝言ゲームそう思えばピンクにならなかっただけでも上出来だ。

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調合比率なんて覚えておりません。なんて役に立たないブログなんだ。

 

直接ファレホを使えばいいようなものだが、当方このスペイン製の水性塗料での吹付は未経験。今回は工作に手間暇掛けているから塗装で失敗したくない。手堅く使い慣れたラッカー系を選択する。

 斑点模様のダークグリーンは色濃いめ彩度高いめで調色する。72スケールで細かい“まだら模様”をエアブラシで吹くとなると、なかなか発色させられない。おそらくボヤけて薄い感じになるだろう。仕上がりから逆算して色を作る。氷で薄くなるからアイスコーヒーを濃く淹れるようなものだ。ほ、当ブログにしては珍しくまともな比喩が出た。ま、そう思い通りにはいかないのが世の常、人の道。。。

 

そういう場合に備え試し吹きをしておく。我が工房のテスト専用機は前回チョイ役で登場した通りハセガワ72のP-47。

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「チョイ役って言うな、チョイ役って」

 

なんでP-47かというと、理由は特にはない。誰でも良かった、強いて言えば在庫の中でもっとも思い入れのない機種だった。という理不尽な動機とみられ、さらに機体も大きく色を試すには丁度良かった、などとも供述しています。被害者は「サンボルのおっちゃん」と呼ばれ、付近の住民からは巨体のお年寄りとしてよく知られていました。

 

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「誰が無差別殺人事件の被害者やねん、捜査本部のホワイトボードに人相悪い写真で貼られたろか」

そのサンボルのおっちゃんの胴体で色味を見てさらに吟味し微調整。。。最終的にはエアブラシで吹いてどうなるかだ。様子をみてみよう。。。と予選後のインタビューのライコネンばりに淡々と構えてみる。

自分は史実通りの色調かどうか、というより実際に模型に塗ってみた時に当時の軍用機として違和感がないかどうかの方が気になる。なので前掲の最新復元ファルコの迷彩がどうしても腑に落ちない。

その他の細部についても方針を定めておく。スコードロンの塗装図を見ると例のカウリングのバルジの前後のラインは無塗装アルミ地になっている。実機写真でもそう、、、見えなくもない。他の部隊の写真ではこれがハッキリ分かる機体があって。。。

 

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ロシア戦線。「家族からの便りに作業の手を止める」というほのぼのしたキャプションがついている。これがドイツ、イギリスあたりなら間違いなくヤラセの広報写真だが、、、イタリア人だとどうだかわからない。


部隊、戦線は違うが良いアクセントになりそうだと銀ラインを採用する。カウリングの黄色もアイキャッチになるから、いくぶん赤味を抑えて明度も高いものにしようか、スピナは塗装図の黒より実機写真の赤の方が派手でいいな、などなど、段々とデッチアゲ方向に傾いていく。。。

すべり出しでは一人前にスケールモデラーの矜持なぞを語っておきながら結局は見た目第一のご都合主義に陥るあたり、製作者のテキトーな性格がよくあらわれている。

うん、お前さんにゃイタリア機はお似合いだよ。。。

 

さて、それではいよいよ、いよいよ塗装に移ろうではないか。。。

 


 

 

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