塗装の前にマーキングを決めないといけない。飛行機模型の最大の楽しみといえばこの塗装とマーキングの選定だったりする。資料や塗装図を見てあれにしようかこれにしようかと胸を膨らませるのだ。まあ結局は付属のデカールの機体となる事がほとんどなのだが。。。
さて、どこの国の飛行機でも実戦部隊のマークといえば、虎だの鷲だの鮫だのと勇ましいものが描かれているのが普通だ。例えば、、、
ワシだ。
サメだ。
ぞうさんやきりんさんじゃなくて猛々しい猛獣を使うのは闘争本能をかきたてるためで、連中は戦争してるんだから当たり前だ。しかし中には半裸のオネエチャンがねそべっている、などの怪しからんものもある。
いやあ、実に怪しからん。
これはこれでまた別の本能をフルイ立たせるからムゲには否定できない自分であったりもする。しかしこれを見た敵の方がその本能をナニされて目を血走らせて追いかけてきたりしたら逆効果だろう。
"敵ったってクソ真面目なドイツ人とバカ正直な日本人だからなーノープロブレーム!"
"いや、イタリア人がさ、女好きの"
"イタリア,,ジン?そんな敵いたっけか?"
一方、イタリア機の部隊マークはというと、、、
「パイプくわえてるカカシ」。。。
「ラッパ吹いているゴキブリ」。。。
「3匹の緑のネズミ」。。。
イタリア人はカカシやゴキブリやネズミの姿で闘志がわき立つのか?それともそういうもんに本能がアレするのか?イタリア娘には格別に親愛の情を抱く自分ではあるが、この辺りについては皆目不明だ。まったく、同じ天体に生息する知的生命体とは思えない。
これが個人マーキングというならまだわかる。例えば石頭揃いのドイツ軍の中にもミッキーマウスを機体に描いて喜こんでる変わり者がいたりもする。しかし前述のは全て部隊マーク。爆撃隊なら何十人もが緑のネズミ3匹が描かれた幼稚園バスみたいな飛行機に乗り込んで戦争しにいくのだ。揃いも揃って了見が知れない。
だいたいゴキブリマークの戦闘機が1ダースも並んでいるだなんて想像するだけで気色が悪い。それが一斉に飛ぶのだからなおもっておぞましい。「まとめてゴキジェットかけたろかい!!」、、、敵が躍起になって追いかけ回したくなる、という意味では半裸のオネエチャン以上かもしれない。最初は「鈴虫の音楽隊」かなんかだと思っていた自分は"クックラチャー"て何やろ?と"Cuccuracha"と入力して画像検索してしまった。その時の阿鼻叫喚たるや、、、英語でコックローチなのだね。。。気づけよ。
「カカシ」、農協のトラクターならともかく戦闘機には向かないマーキングだろう。なんとこのマークが戦後もイタリア空軍に引き継がれている(それ自体は欧州の軍隊ではよくあることだが)「最後の有人戦闘機」F-104のインテークにカカシが画かれているのは洒落が効いているというかなんというか、、、
よほど歴史がある部隊と思われるが、ナゼニ「カカシ」なのかがさっぱりわからない。遡れば部隊の起源はアビニョン幽閉時代の農民一揆に由来する、とかだろうか?
どうやらこれはカカシではないらしい、、、ホナ何やねん?と思うが"Cuccuracha"がトラウマになってて画像検索できない、、、
もちろん、イタリアにも勇ましいマーキングがないわけではない。
たとえば、、、
"Incocca, Tende, Scaglia" "つがえ、引け、放て"
"Cavallino Rampante"、 "跳ね馬"
(Cavallino Rampanteは第一次大戦のエース、バラッカ大尉の個人マークが部隊マークに引き継がれたもの。例の「赤くて速いクルマ」のメーカーに授けられてからの方が有名だろう。 "Incocca, Tende, Scaglia" "つがえ、引け、放て"の方は自分流の意訳。現在は特殊部隊のマークになっている様だ)
どれもなかなかカッコいい、というかデザイン、グラフィックがシックで大人っぽい。やはり他国のものとはちょっと毛色が違う。
例えば同じ矢印のモチーフでも、
ミコヤン君(小3)「ぼくの考えた最強戦とうき」
日本
ナカジマ君(小5)「我らが大東あ決戦機」
一方、イタリア
アレッサンドロさん(32)ピザ職人 「ケケケッ、電気小僧だょ〜ん。」
"Omino elettrico"
、、、やはり、イタリア人の頭の中は三回転半くらいヒネくれていると思う。
余談だがこの「電気小僧」の3本の尻尾が尻尾でないという人もいる。尻尾でなければ何なのだろう?
さて、ファルコの話に戻ろう。
付属のデカールを見よう。まず第一に発売後40年もたったプラモデルの転写デカールというものがきちんと用を成すのかどうかは正直不安。水につけた途端バラバラになる、あるいは硬くて曲面に沿わない、乾いたらひび割れて剥がれ落ちる、などなど、60年代デカール闘争にまつわる恐怖体験もまた、枚挙にいとまがないものだ。一応キットデカールの不要部分で試してみたが、意外とすんなり貼れたので一安心。
実験台のP-47 「わしゃフィアットなんかとちゃうで」
「白がエラい黄変しとんでコレ」
いや そう言われてもイタリアの国籍マークなど1/72でマスキングする自信など全くない。世界で最もシンプルな国際標識を持つ国の人間から見れば、この呪術符のようなデザインは怪奇の極みだ。
キットには3種類のマーキングが付いている。一つはスペイン内戦時。もう1つはベルギー駐留でバトル・オブ・ブリテン参加していた(んです!)第18Gruppo。案の定、ハリケーンに蹴散らされ英国のサフォークに不時着し捕獲されたものがこれ。
余談だが、この写真を見た自分の知人(ドイツ機ファン)が「着陸失敗して喜んでおる。イタリア人はやっぱり馬鹿だ」と嘲笑したが、今言ったような状況だから喜んでるのは当然英国人。
自分が撮影してきたのはこの機体を修復したもの。部隊マークは三本の矢と逆さ向いたファシーズがグラフィカルにデザインされている。
"Ocio che te copo!"は「一本では弱い矢も三本まとめると…」ではなく、「御用心、死んでもらいます」あたり、、、だそうだ。
もうひとつはエーゲ海ドデカネス諸島のロドス島に展開していた第162飛行隊。
部隊マークが猫のポーズが面白いからコイツに決めた。(実際「気をつけな、引っ掻くよ!」とベネチア地方の言葉で書いてある、、、らしい) あれ?そういや40年前もこれにしたか?。。。この部隊の機体は当時のカラー写真が残っている。それを見ると、、、
猫のマークの下地が白。
デカールは黄色、これはどうしようもないニャー。
ナンバーの字体も随分違いますゼ、旦那。
いやそれは、機番が違うからデカールの機体は黄色だった可能性もゼロではない。
スコードロンの「Regia Aeronautica」162-4の塗装図では逆に"白もあってんで"と。
こちら162-4の実機のモノクローム写真(階調補正済み)
白帯の明度と比べると猫の下地は黄色にも、、、
見えなくもないような気がすると言っても過言ではない様な。
ええやんもう黄色で。。。早よ色塗りたいわ。