sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

チェアリングツー

趣味だの嗜好だのは軽やかに愉しみたいものだ。常々「こだわり」が過ぎて他人から疎んじられる偏屈者にだけはなりたくないと思っている。きたるべき自分の次の十年に、そんな「気負いのない生活」を真ん中に据えようと思っている身にとって、「ドカの大型バイク」がいささかtoo much heavyになりつつあるのは確かだ。

Heavy といってもモンスターの車重は並の中型4気筒よりも軽い。以前乗っていたカタナに比べれば何ほどのことはない。ただ、乗る前に「ヨッシャー今日はモンスター乗ったるでー!!」的気合いを必要とする類のバイクである。そういう意味のヘヴィさだ。夜半にそうっとガレージを覗くと暗闇に不気味な魔物がトグロを巻いてノドを鳴らしている様な気がする。つい気圧されて乗りだす気が失せてしまう。存在感が大仰なのだろう。

 

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ひゅ〜どろどろどろどろどろどろ、、、

そんな時は「もっと身軽なバイクだったらナ」などと思うものだ。例えばSRVとかブロンコあたりがいい。スイングトップのジャンパーなんか羽織って気軽にヒョイっとまたがれる気がする。「何乗ってんのー」と聞かれてもヤマハのニーハーン」と肩肘張らずに答えられる。

SNS疲れ」ならぬ「大型バイク疲れ」なのか。こういう時期はままある。

なのであえて気合いを入れず、なるべく自然体でモンスターに乗ってみようと思った。

朝、いつもの蕎麦屋で蕎麦でも食おうとまず決める。この時点ですでに蕎麦が主でバイクが従である。少し肌寒いから年中ガレージに吊ったままの革ジャンを引っ掛ける。タンクバッグも地図も持たない。

しばらく走ると用事で引き返すことを余儀なくされる。もうこのまま家で「緑のたぬき」でも食うかとも思ったが、さすがにそれでは着込んだ革ジャンに申し訳が立たない。再度バイクで繰り出した。この時点で革ジャンが主で蕎麦とバイクが同率三位だ。

いつものことながら乗れば乗ったですこぶる愉快痛快なのがこのモンスターというバイクな奴である。山中を走りまわって、ふと時計をみると蕎麦屋に着くのがこれでは随分遅くなると気づく。このたびは蕎麦は諦めよう。この時点でバイクが主に躍り出て蕎麦屋は圏外へと去った。

そういうわけで以前に見つけておいた近場の河川敷の公園への再訪を思い立ち、ブログもようやく本題へとたどり着く。


sigdesig.hatenablog.com

 

コンビニでコーヒーとサンドイッチを買いこんで、ドドンと走り出したまではよかったが、はて?どこだったかいな?と道に迷ってしまう。近頃はスマホは見ないで出来るだけ使う様にしている自分の「頭」だが、見た目はともかく肝心の中身の劣化が激しいようで、半年ほど前の場所をもう忘れてる

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こんな具合で目印がない

”ちょっと前なら覚えちゃいるが、半年前だとチトわからねえ”。と自分で突っ込んで笑いとばしておく。"悪いな、グーグルであたってくれよ、、、ミナトのヨーコ、ヨーコハマヨコスカァー”と歌ってる内に難なく到着。結局スマホの方が頼りになる様だ。

前回は空いてた木の椅子とテーブルはあいにくゲートボールのジーサンバーサンに占拠されている。ま、こんな事ではうろたえない。ちゃんちゃんと準備はしてきているのだよ。おもむろに革ジャンを脱ぎ、やおらサイドバッグの中から先日買ったばかりの「折畳みローチェア」を取り出す。

このチェアは、、、と普通ならここでウンチクを語るべきであろう。アフィリエイトをして小遣稼ぎの一つでもするのが賢い生き方だ。残念ながらそういう方面において熱心なブログではない。文章が長いだけが取り柄だ。イマドキそんなのはむしろ欠点だって?短いのが良いのなら、、、悪いな、他あたってくれよ。

チェアはまあ何てことのない安物チェアです。少し重いけれどバイクなら気にならない程度。けれどコイツは店で自分の目で見て納得ずくで買ったものだ。なにより色と布地のざっくり感が気に入った。ネット通販だとこういう所が確認できない。それに、ちかごろ顔の見えない人間からモノを買うことに惓んでいる。夜店のごときサクラレビューにインチキ商品の数々。いくら安くても「騙された」という後味の悪さだけは御免だ。

川に向かってそのチェアを据える。斜めに停めたバイクは衝立てとなってシルバーゲイトボーラーズからの好奇の視線を遮ってくれる。自分もあっちを見たいだなんて毛ほども思わないからこのローチェアは格好の低さだ。

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チェアに腰かけると借景と自分とモンスターだけの結界が出来る。対岸の喧噪と背後のしなびた嬌声とはまったく別乾坤を立している。川とバイクを視野に納めながらサンドイッチとコーヒーで少し遅い昼食をとる。水辺で木陰というベストな組み合わせはこんな取るに足らない単車乗りにも爽やかな風と木漏れ日を与えてくれる。いやはや、なんとも心地良い。いい写真が撮れそうだ。。。

 

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ボケーっと、できます。

昨今、「チェアリング」 という遊び、というかアクティビティがあると聞く。折り畳み椅子だけ持って行ってただ座る、という。なろうことならそこで飲食に及び、あわよくば吞んじまおうぜ、ということらしい。

当然、広い公園や キャンプ場、その他のアウトドアフィールドで行うことを想定していて、これを所構わずやればタダの迷惑に過ぎない。ハチ公前や京都百万遍の交差点などで敢行するのは反社会的活動の範疇となる。

要はキャンプのお手軽版である。小さな椅子と机だけなので設営と撤収は心斎橋の外人アクセサリー売りのごとく瞬時だ。つまり道具や装備に凝らず、「気軽に自然と親しむ」ことがメイン。このカジュアルさが清々しい。こうるさい薀蓄や自慢とも無縁でいられる。ほどよい軽み気負わなさ、が今の自分の心境にも丁度合う。

この「チェアリング」をいつでも出来る様に前述のローチェアがバイクのサイドバッグの底に入っている。実はモンスターにサイドバッグを常備した時から「どこでも屋外カフェ」的なことはずっと腹の中に思っていた。なかなか良いロケーションが見当たらなかったのだ。

 

sigdesig.hatenablog.com

 

自分のやっていることは言うなれば「バイクによるチェアリング」つまり「チェアリングツーリング」これだと馬鹿な日本語英語丸出しだから「チェアリングツー」または「チェアツー」と勝手に命名した。さっそく「日本チェアリングツー協会」を設立して各地のチェアリングスポットを総なめにし、ゆくゆくは「マツコの知らない世界」に出よう、などとは毛頭思わない。

荒んだコンビニや寂れた道の駅のアスファルトの上ではなく、自然の中で、自分と同じ「土の上で」相棒であるモンスターと一緒に過ごせるのが愉しい、とは前回も書いた。こんどはバイクの真横で、さらに言えば自分とバイクとが同じ目線なのが小さな仕合わせだ。

バイク乗りはバイクを離れるとただの暑苦しいオッサン(又はオバハン)に過ぎない。薄汚れた季節外れのなり風体で周りから浮きまくる。だから我々はバイクの側にいないと落ち着かないのだ。コンビニやSAなどでよくバイクの横でライダーがいぎたなくへたり込んでいるのにはそういう訳がある。

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自分からの目線

こうして改めて見るとコイツもずいぶんヤレてきたなァ。傷も目立つしあちこちオイルのシミだらけだ。。。

フン、そういうそっちもフケたもんさ。白髪も増えたし頰もたるんでサ。、、、

「古女房」を通り越して「腐れ縁感」が出てきた。連れ添った年月の長さあってこそだ。そうか、そういうことか。すとんと腑に落ちた。どんなに軽くて小さくて扱いやすいバイクでも新しく買ったものは新しく買ったものだ。どこかよそよそしさがある。

それを新鮮で初々しいと捉えて新しい出会いに心を踊らせる事もあるだろうが、今の自分にはこのモンスターとのしっくりした時間が一番に思える。これこそが「気負いのなさ」ではなかろうか。実際の重みではなく「心の軽み」なのだ。。。自分の中でSRVやブロンコの影がすううっと薄くなるのを感じた。

「こうなりゃあブッ壊れるまでモンスターに乗ってやらあ」 

この時点で自分と、景色と、モンスターが渾然となった気がした。

 

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ナァニカッコツケテンダイ、ソッチガサキダロ。。。

 

 

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