sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

中華的音響増幅器 後ノ段「於真空管即美麗音、是至福以耳欣喜」

真空管アンプが届いた。

おもむろに開封してみる。


こちらはさらに奥行きが小さく「ジタンの空箱」を二つ重ねた位。

真空管のタマの方も誠に小さい。

親指トムか「タミヤパクトラカラー」の瓶ほどの大きさである。

 (例えの方がマニアック過ぎてわからないのがこのブログの特徴です)。。。

 

 

いそいそとデジタルアンプ202Jと並べて設置。

二つ合わせても机の上の硯台ほどしか場所をとらない。

あんまり小さ過ぎて背面の配線が目障りになる程だ。

 

真空管アンプの方のボリュームはきちんとセンターが出ていて喜ぶ。

多少気の利く地方の人が組み立てたと思われる。

ただしエッジの仕上げが粗く手触りは良くない。

 

202Jと並べるとフロントパネルの高さとヘアラインの仕上げが微妙に違う。

さらに言えばロゴの字体も微妙に微妙に違う。

生産管理などどこ吹く風、風が大陸を渡っているうちに向きも変わるのだろう。

 

「チューカ」を色濃く感じさせるところである。

 
そして真空管

今どき「シンクーカン」などが手に入るのはロシアか中国、それも軍需用だろう。

(古いミグの通信機のなどかもしれんゾ、と思うとヒコーキマニアはウヒヒとなる)

中古品またはデッドストックの放出品横流しかなにかのルートでお安く抜いてきているのかもしれない。

 

主要パーツに倒産品、中古品、軍需品、横流しを使っている(かもしれない)

電気製品だなんて日本ではあり得ないだろう。

まあ二つセット、ACアダプタ込みでも諭吉とチョロで事足りるペアに文句は出まい。

さらにDACを導入するといいらしいが、それだと総計で諭吉3人を要する。

そこまでいくなら国産のdenonあたりのデジタルアンプを買う方が真っ当な生き方だろう。

 

 

さてそれはともかく、

肝心のはどうであろうか?

 

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接続して真空管アンプに火を灯す。

本当に針の先ほど、ごくごく小さな灯りだ。

202Jのボリュームノブの青いLEDの方ががまぶし過ぎて目立たない。

部屋の照明を落として初めて真空管の仄かな灯り、という感じになる。
(後で知ったがLEDで下からライトアップしている)

しばしウォーミングアップさせ、おもむろに音を出す。

 

おおう、これは。

 

今度は自分の様な鈍感耳でもすぐに気づく。

「艶」がある。

「響き」がある。

「潤い」がある。

薄紅の唇に透明のジェルを塗った様な感じだ。
 

正直、こんなに麗しい音を自分の部屋で鳴らした事はない。

やれダイアトーンだオンキョーだナカミチだ、などとそれなりに授業料を払って

凝っていた時期もあったのだけれどなあ。

大きさも値段も十分の一なのになあ。

 

冷静に聴きこむと202J単体よりも少し歪んでいるのかもしれない。

それは、なくてもいい真空管なぞをわざわざ通すのだから、
電気的物理的には多少なりとも劣化はするはずだ。
 
しかし、「音楽」を聴く上ではこちらの方が美しく感じるのだから、
不思議なものである。

真空管らしい「温かみ」とか「柔らかさ」はとりたてて感じないが、
202J単体の時に感じたシャープ過ぎる解像感は確かに弱まってる。

色々試してみたが、ソースは選ぶ様だ。
音数が少なく倍音が豊かなアコースティックなもの。

 

女性ボーカルがまた絶品この上ない。

「歌手が眼前に現れたかのよう」という表現は軽々しく使う物ではないと思っているが、

身長30cm位のバービー人形みたいなサリナ・ジョーンズが目の前で唄ってる、
様な気が、時々する、といったところだろうか。

サラ・ボーンなどのフンダバダバは押し付けがましく聞こえる。

そう、これはやはりしっとりとした女性ボーカルがうってつけだ。

シャーリー・ホーン、ダイアナ・クラール、ステイシー・ケント、etc...

静かな夜にそっと流すとなかなかに雰囲気があって良い。

グラスを傾けつつ心地よい響きに陶然といつまでもひたっていたくなる。

 

さらに調子に乗って「ミルスペック高精度」という真空管にグレードアップした。

(といっても二つで野口英世とチョロだ)一段と奥行きと艶と潤いが増した。

 

このアンプがどこ製だとか、

仕上げが今一つだとか、

値段がナンボやってんでとか、

もうどうでもよくなってくる。

音楽とそれに聴き惚れる自分がそこにいるのみである。


ただし、電源には手元スイッチをかませて、常には電流が流れない様にしてある。

 

完全に信用は、まだおいてはおらんのです。