sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

単焦点レンズ

自分の中で「バイクの季節」は秋から初冬に移り掛けている。

ガシガシ走るばかりではなく、いい風景に出会ったらバイクを留めて
味わい深い写真をジックリ撮る。
機能性一辺倒ではなく「風情と趣」を求める、
そんなバイクライフが五十代からの自分のスタイルだ。
 

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ふらりと入った中古のお店のショーケースの前で足が止まった。

 

オリンパスのデジカメにパナソニックのレンズを組み合わせている。
カメラはPENシリーズのやや古い型のようだ。
「お」と思った。
随分と強気な手書きの値札の下にさらに 小さく25mm F1.4、と書いてある。
レンズ諸元だろう。

家に帰って調べてみると LEICA SUMMILIX 25mm(換算50mm) f1.4 単焦点
パナソニックが作ったライカレンズ。

「んなモノぁLEICAじゃない」
などとLEICAマニアは一刀両断するのだろうが、それは原理主義である。
なので気にしない。
そのレンズを使った作例画像を見ると立体感と雰囲気がとてもいい。
「ああ、自分はこんな写真が撮りたかったのだ」と思わせる。
むろん腕もダンゼン違うのだろうが、、、

 

35mmまたは50mmの焦点距離は「標準レンズ」と呼ばれている。
人間の視野角に近い、らしい。
 
試しに手持ちのカメラのズームを固定してファインダーをのぞいてみる。
50mmだと椅子に座って机の上の20inchモニターの画面が一杯に入るくらい。
なんだかえらく「狭い」気がする。
35mmにすると、その周辺も入ってきてこちらはまだ自然に感じる。

今までGX200の24mmまたはGRの28mmに慣れているのだ。
ツーリングでの風景を写し取る、となるとやはり広角よりになる。
そんな自分が「50mm 単焦点をうまく使いこなせるだろうか、と思った。

ネットで調べると、同じパナソニックの20mm(換算40mm)の評判も良い。
作例画像を見てみると、おお、これもなかなか好みだ。
LEICA銘はないが、別にブランド信仰はない。写りが良ければそれでいい。
やや広角寄りなので少しは慣れ易いかもしれない。

値段もサイズも手頃だったので、早速その20mm(換算40mm)を手に入れた。
当然カメラがないと写らない。ドロナワでそっちも手配する。
Nikon V1の轍を踏みたくはないのでいきなり最新型の新品を買うのは控える。
型落ちの中古で様子を見ようという魂胆。
オリンパスPenのLiteの2型であるE-PL2、なんと5000円を切った。
 
いささか旧式だが、きちんとカメラの面構えをしている所が気に入った。
Nikon V1よりは小柄でコロンとしたボディである。
操作性に関しては幸いV1ほどキテレツではないからすぐ馴染んだ。
無論、最新のStylus-1の方が使い勝手に優れるのは当たり前だ。
EVFがないのは痛いけれど、あくまで「レンズのお試し」なのだから多少の機能上の不便は覚悟の上だ。
 
メインディッシュは「レンズ」の方である。

そのレンズ、樹脂ボディでなんだか平板でプラモデルみたいだ。
AFは遅く焦点を合わすたびに「コクー、ククー」と情け無い動作音がする。
フォーカスリングを動かすと「クススス」といかにも薄いプラ同士がこすれているかの様な安っぽい感触が伝えてくる。 いや実際こすれてるし。
Nikon1シリーズの
「精度は高くってよワタクシ」といったお蝶夫人さは全くない。
 
ところがコイツで試撮りした画像をPCで見ると、これがなんともいい塩梅だ。
wetな空気感というか立体感というか。

 
 
腕の方がまだまだでその実力を充分に引き出せていないが、期待は膨らむ。
お人形は顔が命、カメラはレンズが命、レンズは玉が命、である。
 
レンズが命、といえば自分には思い出すことがある
 
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二十代の頃、初めて一眼レフを買うときにキャノンEosがいいかミノルタαがいいか、
はたまたNikon か、なんて相談をカメラに詳しい先輩社員に投げかけたことがあった。

「まあ、メーカーはね、どこでも好きなのを買えばいいんじゃない」

いつもニットでダンディなOさんはロイド眼鏡の奥の優しい目を少し細めて言った。
「一眼レフを買う、ということはレンズを買う、ということだからね」

なんだかはぐらかされているような答えに自分は首をひねった。
 
それから二十数年、ようやくその言葉の意味が分かりかけてきた気がする。
 
「ちょっと気に入ったレンズを買いましたよ」
 
そう言える。今では。