50年前のSEIKO 5を手に入れた。
まずは機械が正常に稼働するかテストだ。
手に持って2分ほどゆっくり振ってやる。
そう、このSEIKO 5、リュウズでの手巻きに対応していない。自動巻の手巻き機構は複雑でキャリパーにも負担が大きいらしい。コスト、信頼性の観点から採用されなかったという。
更にはリュウズを引いて秒針を停める、いわゆるハックもない。
ハックとはミリタリーウォッチが元祖の機能である。その名称は分隊全員が"ハック!"の掛け声と同時に時計を合わせる所からきている。「12時15分に橋を爆破するからそれまでに撤退せよ」的な作戦では必須な機能なのだろう。いかにもミリオタが嬉しがって垂れそうなウンチクである。もちろん、自分のハミルトンカーキにも備わっている、と嬉しそうに言ってみる。
そもそも、SEIKO 5はカタログデータで日差-35〜+45秒。月曜朝に時刻を合わせたとしても火曜の昼すぎには1分ほど狂っている可能性はある。つまり、もともとこの時計、秒単位で合わせる意味があまりない。
そんなのダメじゃん!と言われそうだが、実際に一般的な仕事や生活で秒単位の正確な時刻が求められるケースはそうはないものだ。いや私にはある、と言うなら今の時代クォーツでもデジタルでもすればいいのだ。あと45秒でタイムカード押さねば遅刻!なんてギリギリの状況に陥る生活態度の方が問題だと思うのだが。
いたずらに性能を求めず、必要不可欠な機能以外は省く。そうやって機械をシンプルに保ち、丈夫な時計を安価で提供する。実用時計としてのSEIKO 5のスタンスがわかる。
さてそれはともかく平置きテストの結果は、20時間ほど稼働して日差はおよそ1分弱・・・
まあ50年前の機械と思えばこんなものか。冠婚葬祭1日限定なら許容範囲内だ。ベルトがないので腕に巻いた実用時にどうなるかは未知数だが自動巻なんだから稼働時間は増えるだろう・・・との見通しが楽観的過ぎたとは、この時はまだ何も知らぬノンキなブログ主であった・・・
自動巻時計を磨くにあたって電動リューターなどの振動を加えるのはどうも心配だ。裏蓋を開けてキャリパーを取り出しておこう。
最近のSEIKO 5はスクリューバックだがこの時代の裏蓋はハメるだけのようだ。
サビで固着していて裏蓋を剥がすのに一苦労。
クォーツはつまらないが機械時計の内部は見るといつも心躍る。パッキンはボロボロだけど。
↑スペーサーを取り、
↑ここにもサビが及んでいる・・・
↑キャリパー自体にサビは見られないが・・・
↑機械部を取り出す。文字盤ステーは固着しているようだ。ハックがないので矢庭に秒針が動き出すから怖い。すぐに密閉ケースにしまっておく。
↑嵌合部分のサビが酷い。
↑どっかの知らないオッさんの汗が染み込んだ結果、と思うと気分的によろしくない。
↑なのでリューターで掃除しておく。
↑錆は落ちたがステンレスが虫食い状に腐食している。
↑スペーサーのサビも綺麗に落ちたが・・・
↑今まではサビで固着していて密閉性が保たれていたのだろうか。
これだけ穴だらけだと今後も水濡れ厳禁、夏場の汗でも心配だ。
パッキン(Oリング)を新品にして冠婚葬祭専用ならなんとか・・・