懸案のカウリングの目処がついた前回、前々回。
この勢いの衰えぬうちに小物パーツ共を片っ端から始末する事にする。小物といっても古いキット、何ほどのこともあるまい、とのっけから威勢良く飛び出した威丈高の高飛車だったが、、、
それでは手始めに、
エンジン
レベルのキットのエンジンは後列に排気管などもモールドされていて当時としては力作、ただしころんと小太りのウッカリ八兵衛だ。一方手持ちのハセガワの零戦の「栄」は小股の切れ上がった湯上がりのかげろうお銀といった感じ。
ファルコのエンジンはフィアットA74.RC。MC200サエッタ、G50フレッチアなどと同じで出力は離昇870馬力、というから「栄」と同程度と思い込んでいたが、Wikipedia英語版によると直径1195mm、31.25リッターとある。「栄」よりも一回り大きい「金星」「ツインワスプ」クラスのようだ。
Fiat A74.R.C
A74も「金星」も「ツインワスプ」も初期型は800馬力台で始まっている。みんな遡れば源流は似たようなところの遠縁同士なのかもしれない。本家本元の嫡男「ツインワスプ」の方はスクスク育って1200馬力を得る。東洋の分家筋である「金星」も忍法「みずめた」で1500馬力を絞り出した。A74のみが発展途上のまま足踏みしてしまったようだ。どうやら長靴の国では人生はもうちょっとだけ複雑なのだろう。
プラグコードはあっさり省略。あいにくほとんど見えないものに手間暇掛けるほど律儀でも几帳面でもない。ただし減速機周辺の補機類は伸ばしランナーなどでそれらしく追加した。実機はスピンナが小さいのでこのあたりがチラリと見えるのだよ、むふふ。
、、、ホラネ
カウリングを詰めた分、エンジンが前に出過ぎてしまう。せっかくの後列の排気管だが、んなもなあどうせ見えやしねえんだ、とエンジン後部をばっさりそぎ落とす。すると今度はサイドがつっかえて入らない。なあに構うこたあねえ、とシリンダーヘッドをニッパーでばっちんばっちん切りとばす。なんともひでえ模型作りをしやがる。
次は勢いに任せてカットした
排気管
熱したプラ棒を伸ばして曲げて作る。案の定、左右で太さやカーブが揃わない。ううむ未熟だ。例によって何本も作ってから形の揃ったものを探す。栄えあるベストカップルに選出されて喜ぶプラ棒二本をとっ捕まえて、無慈悲にもドリルで穴を開けリューターでグリグリおし広げる。「あう、そんなご無体な、、、」
フッフッフ、奥まで貫通するまでもあるまい。後はツヤ消し黒でも流し込んどけ。
そして
機銃
ファルコは機首にブレダSAFAT12.7mmを2門装備する。このSAFATは名機関銃ブローニングM2のコピーらしい。ただし性能はコピーしきれず、本家M2よりも発射速度も遅く銃弾の威力も弱かったというから、、、ぱちもん?
余談だが、アジアの日出づる処の陸軍は何を思ったかそのブレダ機関銃をさらにコピーしようとした。優等生の答案をカンニングした劣等生をさらにカンニングする様なもので、さすがにそれなら直接写したほうが良かろう、と生まれたのがM2の直接コピー版ホ103。めでたくエンジンの音が轟々いうらしい全金属製低翼単葉戦闘機に搭載されたはいいが、何故か銃弾だけはM2ではなく威力の弱いブレダのものを使った。よほどイタリア娘が好きだったのだろう。いやわかるわかるその気持ち。
実機写真からは銃身の根元に大きなカバーが見て取れるのでこれを再現する。
いきなり鼻に割りばし突っ込まれるファルコ。
「フゴッ。や、やめとくれやす」
安ずるな、機銃の溝も彫っておいてやったわ。
それから機銃の銃身。
キットの銃身はただの棒が2本、ランナーにとろけ混んでいる。40年前はボールペンの空芯を使った記憶がある。炙って伸ばしてやるとパイプ状のまま細くなる。小僧、なかなかやるな。
40年後の自分はプラ棒をリューターにくわえ込んで彫刻刀をあてて削る。挽物の要領だ。銃口部分がわずかにラッパ状(フラッシュハイダー)になっているようで、そいつを再現するためだ。小僧とは違うのだよ、小僧とは。
どうも太すぎるような気がしてきた。なあに機関銃なんてもなあ太くて逞しくなくっちゃいけねえ。。。弾痕主義、なんてね、字が違うか。
エアインテーク
下翼付け根のオイルクーラー吸入口はすでにドリルで開口済み。カウリングは排気管の穴を開け、スジボリ、リベットetc.
おお、なんと勇ましい。。。しかし、どことなく日本機みたいにも見えるな。
はてなにゆえ、と実機写真とよく見比べる。とカウリング下のキャブレターインテークがずいぶん違う。実機ではこんなに空力的な滑らかさはなく、鉄板曲げただけの鉄工所の換気筒みたいだ。もっと単純で無骨で素っ気ない。
やはりイメージだけで手を動かしてると見慣れた日の丸飛行機に似てしまうのだろうか。いかんいかん。
そういうことじゃ、覚悟いたせ。
「な、何しやはりますのん」
切る。
「あ〜れ〜」
吸入口をプラ板で作り直し。前半分は丸みを強調し、後ろ半分は角張った形状に削る。
「もぉ、せっかくエエ格好しとったのにぃ」
次はいよいよ、
プロペラ
今宵の虎徹は血に飢えておるぞ。
お主、風ぐるまの弥七かナギナタのお千か。実機に似てる似てない以前に、そもそもプロペラに見えんではないか。
試しに削ってはみたものの、だんだんとチビてくる割には一向に似てこない。
「似いひんて、ウチ伊太利屋生まれやし」
嘘を申せ。その方、ハミルトン・スタンダードのライセンス生産と調べはついておる。。。はて、待てよ、確か同じハミルトン・スタンダードの1000馬力級戦闘機がアジアのどこかにあったような。。。
やおら長谷川の零戦52のフタを開けると、やはりにらんだ通りプロペラが2組。しめしめ、ひとつ頂くことにしよう。他キットからの流用はご法度だが、どうせ片方は余るのだから無駄な殺生ではない。なあに52は必ず成仏させてやるゆえ。。。
ほお、なかなかの器量ではないか、引っ立てい。
「いや堪忍え〜」
でこっちはもうお払い箱、パッツン。
「は〜れ〜」
少し根元を詰め、形を整えてスピンナもつける。
「ヨヨヨ、イタ公のとこに売られてしもて〜」
なんだか極悪非道の京都所司代という感じになってきた。
ここで息切れ。まだ脚と支柱が残ってるが。。。
といったところで今回はこの辺で。