ここで硝酸セリウム、というものの存在を知る。
この薬品はなんとガラスの表面を溶解させるという。車のガラスの飛石の傷などに使われるそうだ。ミネラルガラスなら時計の風防にも使えるらしい。商品名「ガラセリウム」と言う。こんなものがあったとは〜!自分は大喜びでポチったのは言うまでもない。
研磨剤と練り合わせてあるものを買ったらかなりドでかい瓶が来た。「おじいさんの古時計」を10個は磨けそうである。よく混ぜろ、とあるから小瓶に取ってこれでもかというほどかき混ぜる。なんだかネバネバして糸を引くものを恐る恐るガラスの盤面に付けてみる。シュウっと煙が上がって見る見るガラスが溶け出し・・・
・・・というような事は全然なく、何の変化も見られない。
「当たり前だ。これはメカノケミカル反応といって、機械的エネルギーを加えることで対象物と化学反応するのだ」
本当ですか真田さん!?と言うほかない。
ともかく全体に塗り広げてからペンサンダーにスポンジをつけていわゆる機械的エネルギーを加える。
これを何度も繰り返す。30分ほど磨いたあと、半信半疑でガラス風防を拭うと・・・
そこにはなんとも滑らかな面が現れていた。
この時の安堵感たるや、である。
さらに二時間ほど掛けて磨きつづける。
ガラセリウム!素晴らしい!ひょっとすると最初からこいつを使えばもっと時間を短縮できたかもしれない。
そう、ここまでガラス磨きだけで30時間以上掛かっている。
SEIKO 5の新品風防ガラスは3000円。新品同様になったとしても自分の仕事を時給換算すると一時間100円以下だ。世界ではエチオピアが時給170円/hくらいというから、それ以下である。ブログ主の労働価格はアジスアベバのニャンコ先生あたりと同等か。ちなみに時給世界第一位はスイスで2800円/hらしい。スイス人のバイトにこのガラス風防磨きをやらせると10万円ほど支払うことになる・・・スイス製腕時計が高価な理由がなんとなくわかる気がする。
今度はガラス面をマスキングし、金属ケースをピカールでバフ掛けして最終仕上げ。
エエではないのエエではないの〜。
古いパッキンは変形、変成していてもう使えない。
新しいパッキン(左)にシリコングリスを塗り込んで・・・
裏蓋を閉めて出来上がり。(蓋の向きが間違っていて後でやり直した)
仕上がりがこちら。
どうだろう、新品同様とまではいかないが、実に美麗に仕上がった。
購入時のうらびれた様子。
シルバーの盤面は少し地味で、求めていた「地上の星」感はバッチリ出ている。
1万円で新品のSEIKO 5を買っていればこんな気分は味わえない。