ベスト10といってもそれぞれに順位があるわけではない。”私的10選”と呼ぶ方が正しいかもしれない。なのでシーン別、作業別にあげていこうと思う。前回の理由(主張しすぎる)から大御所、大家は出来るだけ避けたつもりだ。
・ポール・デスモンド Paul Desmond "Easy Living"
超有名な"Take Five"のサックスプレイヤー(…なのでデイブ・ブルーベックではなくこっち。Take Fiveは長いドラムソロが模型にはtoo muchとも思う)小川を流れる花びらのようなアルトサックスに、ジム・ホールのギターが子犬のように絡む心地よさ。筆使いが滑らかになりそう。塗装に限らず模型作業全般に。
・スリーサウンズ The 3 Sounds "Moods"
"Moods"
模型にはサンドペーパーがけなど地道で単調な作業がいつだってついて回る。そんな時はスリーサウンズの 明るく軽妙、ファンキーで小粋なピアノトリオ。めんどくさい戦車の転輪だって楽しくできる…かも。
・ヒラリー・ハーン Hilary Hahn "Hilary Hahn Plays Bach"
とはいえ緻密な作業だってあるのが模型作り。いや、そちらの方が多いかもしれない。リベット打ちやスジボリなどは気を落ち着けて望みたいもの。アップテンポよりはクールなBGMが欲しい。そういう場合はこちら。超絶技巧にして正確無比なバイオリニストによるバッハは凛として澄みきって雪解け水のごとし。"ヒラリー・ハーン パガニーニ カプリース"で検索して動画をご覧になるのが早い。
・カレン・ソーサ Karen Souza "ESSENTIALS"
アルゼンチンの歌姫。聞き慣れたPopsも雰囲気たっぷりにしっとりウエットな溜息系。技巧よりも質感を重んじるウェザリング工程をきっと豊かなものにしてくれる。"Get Lucky"は作品完成時に流すと至福の高揚感あり。
・ケニー・バレル Kenny Burrel " Blue Bash"
奥行きがあってお洒落で都会的サウンド。ブルージィなギターとオルガンが格好ヨシ。リラックスしつつもふつふつとヤル気が湧いてくる。ハードル高めのディティールアップにもチャレンジしたくなるはず。他に Midniht Blue なども(オリジナル盤推奨,ボーナストラックは蛇足 )
・ウィリアム フィッツシモンズ William Fitzsimmons "Goodnight"
繊細かつ優しく漂う男性ボーカルと不思議な電子音は鎮静効果あり。完成を目前にして”はやる心”を抑えつつのデカール貼り作業などに。
・カレル・ボエリー・トリオ Karel Bohelee Trio "Last Tango in Paris"
"Last Tango in Paris" ラスト・タンゴ・イン・パリ
"Blue Prelude" ブルー・プレリュード
ひたすら美しくも知的で静謐なピアノトリオ。ヘッドはクールでハートはホット、ボディはシャープ、と言うことなし。デカールの透明ニス部分のカットなど、集中力を求められる工程を自信を持って乗り切れそう。CDで買って机にジャケットを飾っておきたい…?
・アン・サリー Ann Sally "Voyage"
ナチュラルでフラット。アタシちょっと歌ってみようかな、的なライト感覚が魅力。脱力系ヘタウマ筆塗りのサラッとした模型作りに。…なので個人的には最近よく聴く。
・トム・ウェイツ Tom Waitz ”Small Changes”
シャイなゴリラ男が唄う喜怒哀楽のブルースソング。マスキングテープで下地ごと剥がれた、などヤサグレた気分にどうぞ。5曲目あたりで「ああもう模型なんか作ってられるか!ビールでも呑んで寝ちまおう」となるネ、きっと。
・和田弘とマヒナスターズ "マヒナと誘惑の宵"
マヒナと魅惑(ムード)の宵 ~Selection~ Vol.1
知らないのにどこか聞いたことがあるような昭和な音楽。独りで模型を作っているのがたまらなく寂しくなる寒い冬の夜中、こういう音楽が小さなスピーカーから流れていて欲しい。キットは隼とかの日本機、ロシアのSu-85などだとなおヨロシイ。
- ・ポール・デスモンド Paul Desmond "Easy Living"
- ・スリーサウンズ The 3 Sounds "Moods"
- ・ヒラリー・ハーン Hilary Hahn "Hilary Hahn Plays Bach"
- ・カレン・ソーサ Karen Souza "ESSENTIALS"
- ・ケニー・バレル Kenny Burrel " Blue Bash"
- ・ウィリアム フィッツシモンズ William Fitzsimmons "Goodnight"
- ・カレル・ボエリー・トリオ Karel Bohelee Trio "Last Tango in Paris"
- ・アン・サリー Ann Sally "Voyage"
- ・トム・ウェイツ Tom Waitz ”Small Changes”
- ・和田弘とマヒナスターズ "マヒナと誘惑の宵"
最後の方はいささか苦し紛れになってきた。いずれにせよこれらは最近の自分の個人的な嗜好にほかならない。カレル・ボエリーは模型を作る時に限らず普段から事務所BGMの定番だし、夜になって自室でグラスを傾ける時にスピーカーから流れるのは、物憂げなカレン・ソーサのアルトヴォイスだ。一人旅の夕暮れ時、イヤホンから響くトム・ウェイツの唄に不覚にも涙することもある。
一応アルバムも挙げたけどどれも曲によっては模型作業に向かないものもある。何かの参考になれば幸い、ならなくても面白がってもらえればそれだけで十分嬉しい。