準備しておいた小物を取り付ければ完成、なのだがプロペラのパーツを眺めていて少し気が変わる。
D510のプロペラスピナ先端の突起は20mmモーターカノンである。どこかのアジアの田舎ヒコーキみたいにエンジン始動フックではないのだよ。
モーターカノンとはスピナ中心から銃弾を発射する機関砲のことだ。V型エンジンの両側のバンクの間に機関銃を搭載し、プロペラシャフトは減速ギアで偏心させている。
利点は同調装置が不要なので命中精度が高い機首に機関砲を装備できることだ。大口径砲の大きな反動をエンジンブロックで支えられるという点も、まだ主翼の強度が高くなかった時代ではメリットとされた。
またD500自体がそうであった様に1930年代前半というのは全金属製の機体が出現し始めた頃でもある。当時主流の7.7mm機銃2門程度では有効性が疑問視されていた。20mmモーターカノン砲はある意味理想的な武装だったのだろう。日本がデボワチーヌD510を輸入したのは何も九試単戦と模擬空戦させる為ではなく、このモーターカノンが目当てだったと言われている。
その後のモランソルニエMS406やデボワチーヌD520にも採用されている通り、フランス機といえばモーターカノンという印象だ。その逆もまたしかり…などと言えば異論はゲルマン方面よりチョビヒゲ演説的熱量でもって噴出するはずだ。
「フンガー!モーターカノンと言えばBf109だッ!100倍200倍300倍も有名だーッ!!」
確かに、その銃弾で屠った敵の数で言えばまるで比べ物にならんだろう。ただし航空機開発史でいえば本家がデボワチーヌD501という事実は動かない。
付け加えるならBf109のモーターカノンの(事実上の)搭載はF型からである。スピナに開いた勇ましい砲口はE型の時点では何とフェイクだったのだ。
積めなかったのではなく積まなかったのだとか、エンジン冷却に効果があったので穴だけ残しておいたのだ、という話もあるが…
ともかくもモータカノンはデボワチーヌD501〜D510最大のチャームポイントなのである。
ここは鼻先のイボみたいなキットのままでは可哀想だ。
切り飛ばして穴をあけ…
銃身は真鍮パイプ。