ある日のことでございます。
ブログ主様がいつもの様に極楽をブラブラ歩きながら雲の下を見下ろしましたら、押し入れ地獄の中でうごめく作りかけのプラ亡者どものうめき声が聞こえます。何気なくそれを眺めていましたブログ主様の目にDewoitineD510というキットが映ります。
Dewoitineは"デヴォワティーヌ"という発音が近いようです。しかし"デヴォワティーヌ"はいちいち変換しづらいのです。かといって"ドボワチン"では珍さんがドツボにはまった時の擬音みたいなのでここでは"デボワチーヌ"と読むことにします。
デボワチーヌはエレールの1/72というオタンコナスでしたが、生前、一度だけ善い行いをしました。どこかの田舎道で九試単戦グモを踏み潰そうとしたけれど、なぜか思い直してワザと負けてやったことがあるのです。それを覚えておいでだった慈悲深いブログ主様は、ちょうど手近にあった一本の伸ばしランナーの糸をデボワチーヌの前に垂らしておやりになりました。
こちらはデボワチーヌです。押入れの「作りかけプラモ血の池地獄」に落とされて阿鼻叫喚の毎日でした。周りには首の無い三式戦や、体中にパテを塗りたくられたBACライトニング、カウルを切り刻まれたフェラーリ126などが、おぞましい苦悶の声を上げながら、未完成地獄の底なし沼でもがいているのです。
そのデボワチーヌの目の前に飴色に輝く明灰白色の伸ばしランナーの糸が降りてきたのです。これ幸いとばかりに糸につかまったデボワチーヌはそのままするすると登っていきます。元は飛行機だっただけに上昇はお手の物なのです。そうしていつの間にか雲の上の極楽まで上がってきました。
そしてブログ主様の前にかしずき胸に手をあてて礼儀正しくこう言いました。
「ボンジュール、ブログ主様。コマンタレブー」
ブログ主様は少し驚いた様子でこうおっしゃいました。
「おや、あなたはここまで上がって来れたのですね」
「はい、ブログ主様の糸のお陰です。メルシーボクー」
「前回のカンダタ君は途中で落ちたのですがね…あなたの後ろから亡者どもが上がってこようとしませんでしたか?」
「ウイウイ、ブログ主様、その通りです。糸が切れやしないかとわたくしビクビクし通しでした。あれは伸ばしランナーだったのですねえ」
「糸がなかったものですから、、それよりあなたは亡者どもを蹴落とそうとはしなかったのですか」
「ノーンノン、ブログ主様、そんなこと。わたくしこれっぽちも思いませんでした」
「ほう、あなたはさぞ立派な心をお持ちのようですね」
「ウイ、ムッシュウ。だって自由、平等、博愛、ですから」
「…それがこの小話のオチですか。長い割にはあまり面白くありませんでしたね」
「オー、パルドン モア」
といった訳で、次回から(作りかけの)デボワチーヌD510の製作記事がスタートするのでした。