士の字になった紫電
マスキングしたキャノピーを丁寧に擦り合わせてから胴体に接着。接着剤はPitマルチ2を使用。胴体との隙間はジェッソ+モデリングペーストで埋めておく。フレームは機体内部色で塗ってから光の透過を防ぐためにブラックアウト。
そしていつも通りタミヤアクリルで下塗り…の手はずだったが…
筆につけた塗料が塗っている先から乾いてしまう。プラへの塗料ノリも悪い。そしていわゆるカブりが発生する。外は猛暑の8月。空調していてもこの気温、湿度では無理もないか…
う〜ん、イマイチ!
そこで湿度に強いという噂のMrホビーの水性アクリジョンのベースカラーをトライすることにした。あまり模型誌などを読まない、模型ブログなども見ない模型情報弱者だから「水性アクリジョン」というシリーズが出ていたことすら知らなかった。
アクリジョンには専用のツールクリーナー、うすめ液が必要となるらしい。アクリジョンの希釈にはエアブラシ用うすめ液の方がいい、という話だったのでそれも合わせて購入。
思えばMrホビーの水性カラーには随分と痛い目にあってきた。ラッカーシンナーの臭いが苦手だったからそれこそ「レペ」「ホッペ」の時代から買ってきたが、どうも扱いにくく、泡立つったり、いつまでたっても乾かなかったりと何度も煮え湯を飲まされてきた。
友人が渾身の1/48フォッケウルフを水性ホビーカラーで塗ったら乾かず、グジョグジョになってしまい狂眼と化して「水性のボゲェ、なめとんかワリャあ!」と叫んだ、というエピソードを今でも覚えている。
ところがこのMrホビーの”水性アクリジョン”、無臭で毒性もない。乾燥が速く塗膜が強く、もはやラッカー並みでエナメル墨入れどころかラッカーの上塗りにも耐えるという。さらにベースカラーはサフェーサー代わりにもなる、と以上はメーカーの談。それが本当なら模型塗料界の決戦機 四式戦「疾風」ではないか!?
グレーとホワイトを1:2くらいで混色してサフっぽい色にする。相当沈殿しているので気長にかき混ぜる。それでも濃いのでうすめ液で少し希釈。いつもの試験体47号-D「サンボルのおっちゃん」に登場いただいてテスト。
塗り心地が素晴らしくなめらかで、ちょっとガッシュを思い出させる。一瞬コレはスゴイ!と思った。ところがギッチョンチョン。いつまでたってもまったく乾きやがらない。
「なぁ〜にがラッカー並みか」瞬時に凶眼と化し「ケッ!やっぱりオンドレも水性組のもんやったんかぃ、イてもうたんどオルぁ」とばかりに塗料瓶をコンクリ詰めにして大阪湾に沈めるところをあやうく踏みとどまる。待て待て今は21世紀だ。まずは手元のスマホで”アクリジョン、乾かない”で検索してみる。
「アクリジョンの"エアブラシ用うすめ液"はよく振って使わないといつまでたっても乾かない」
などという文にヒットする。
「なんやて!?そんなもん書いとかんかいやぁ、おぉ〜⤴︎」
「…あ、書いたるわ、でッ、なんじぇい」
そこでポリ容器ごと振ってよく混ぜてから少量希釈して塗ってみるとまあそこそこ乾く。しかし水の方が乾きがいいみたいだ。塗膜は平滑でシルキー。隠蔽力も高くタミヤアクリルと違ってこの湿度でもカブらない。そして塗膜の強さは自分の中の水性塗料のイメージを文字通り塗り替えるものだ。
なめらかな塗り心地はタミヤアクリルを超えてガッシュなみと言っていい。水で薄めてのいわゆる水溶きアクリル塗りにも対応する。傷も埋まるし、これなら臭わないサフェーサーとして使えそうだ。ブラボーやん。
満を持してでは本番、紫電の下塗り。マジックリン風呂でタミヤアクリルを落としてアクリジョンベースカラーを筆塗り。
快調快調、濃度が決まると面白いように塗料が伸びる。筆はナイロン系よりもタミヤHGなどの柔らかいものとの相性が良いようだ。
実は何度かうすめ液を振らずにそのまま加えてしまった。そもそも”うすめ液を振って混ぜる”という習慣はわれわれアジア人には無いのだ。透明の瓶に入れ替えて沈殿物を目視出来るようにしよう、と思っている。
"アクリジョンベースカラー"
君は明日から一軍入りだ。これでガッシュとの相性が悪くなければレギュラー、いやスタメンも夢ではないぞ・・・