全体塗装が終われば今回のハイライトが待っている。
褪色表現
綿棒はたっぷり水を染み込ませる。
パネルの継ぎ目などは先を切ったツマヨウジでキシキシとこすってやる。
当時の動画を見ると着艦直後、まだエンジンが回っている内に主翼を折り畳んでしまい、甲板の端の方に寄せて係留している。おそらくその状態のまま駐機され、照りつける陽光と潮風に晒され褪色していくのだろう。時に波濤をかぶることだってあるかもしれない。そういった状況に思いを馳せ、イメージしながら作業する。これもWWII大戦機模型の醍醐味だ。
褪色させては極薄ガッシュを流して落ち着かせる。これを幾度か繰りかえす。
コルセアと違ってヘルキャットの登場時期は米軍は既に攻勢に回っており、日本軍を圧倒していた頃だ。なのでおなじ褪色でも”一敗地にまみれた疲弊感”ではなく”連戦に明け暮れるベテランの凄み”みたいなものを心がけた。
ステンシル
前回のコルセアでは国籍マークは筆塗りとデカールのハイブリッド技法とした。
今回は満を持して
「ようしこうなったら全部手描きでやってやらあ!」
随分と威勢がいいが、零戦やコルセアに比べるとヘルキャットの胴体はフラット。加えて機番も直線的なステンシル字体。部隊マークはこの時期の米海軍に特有の単純な幾何学模様、などなど手描きし易い条件が揃っていると計算高く見越してのこと。弱い相手にしか喧嘩をふっかけないヤンキーみたいなもんである。
デカールをコピーしたものに透明のテープを貼って強化し、切り抜いてステンシルにする。世傑の写真から空母ホーネットのVF-2の26番機、トライカラーでそこそこ褪色もあって部隊マークは白の円、個人マーキングなし、という御誂え向きの機体だ。
位置決めして両面テープで貼って鉛筆で下書き
ケガキ
だ、大丈夫か?…
な、なんとかならあ…
胴体
思ったより星のマークがデカイ。胴体下部はかなり曲率が大きくなっている。結局、コンパスやサークルプレートは使えなかっただろう。
なんとかケガキ針で写し取る。
主翼上面はやり方を変えてみる。
ケガキ針で中心や要所をマークし…
それをガイドに鉛筆で下書き…
その後ケガく。間違ったりしてあちこち傷だらけ。やれやれ。この作業はやはり下地の段階あるいはパーツの段階でやっておいた方が楽そうだ。精度の高いタミヤの零戦などであればパーツ段階で塗装、国籍マークまで手描きしてから組立てる、というやり方も不可能ではないかもしれない。
主翼下面マーキング
星を塗っていく。
使うのは画材屋で買った面相筆。高いものではないが扱い易い。
汚ったなッ…と先行きが不安になるが、構わずフリーハンドで塗っていく。
概ね出来上がり。星の右下がヒョロっている…
何度もタッチアップして直線を出していく。
胴体のマーキング
この時点で既にケガイた星がえらく歪んで見える。修正していく。
少しづつフリーハンドで修正しつつ…
星の歪みを取っていく。
筆の動かしやすい方向に機体を回転させて塗っていく。歪みが見えてくる。あるいは歪みが消える。
そうか、歪んでいるのと、歪んで見えるのは別のことなのだ…直線と直線に見えることも別のことなのだ。
主翼上面マーキング
塗料の濃度の加減や筆の動かし方など、だんだんと慣れてくるもので…
ムラムラだが気にしない。そんな風に度胸もすわってくるもので…
平滑さ、精密さを求めるならマスキング+エアブラシが一番いいのは分かりきっている。
拡大すればヨレヨレだけど…
ちょいと離れればピシッと見えてくる。むしろ他の筆塗り部分とバランスが取れていてこのくらいの"粗さ"があって良いとさえ思えてくる。
こちらは前作コルセアの国籍マーク。白い部分は筆塗りでインシグニアブルーはデカールを切り抜いたもの。うん、並べても遜色はまあない。