風防の枠が多いことで過去あまたの同志を挫折させ、涙を飲ませてきた悪名高い飛行機の名前は?といえばモデラーであれば誰しも「それはゼロファイターだ!」と叫ばずにいられないだろう。あまりの被害者の多さに「ゼロの風防とドッグファイトしてはならない」という警句が流布していることもまた、飛行機モデラーの間では半ば常識となっている。
拙作 1/72タミヤ 零戦21型
数えるとガラス面20、枠は30本くらい、、、なんだってこんなに枠が多いんだ!堀越技師はドSか!
同時期の日本陸軍の一式戦「隼」などはもっと小さくシンプルで枠も少ない。
拙作 1/72 フジミ 一式戦 隼1型
ガラスは9面で枠は12本、零戦の半分以下だ。小山技師はマリア様か。
じゃあもう風防だけ隼のを付けちまおう、、、というわけにもいかないので泣く泣く零戦のジャングルジムみたいな枠に立ち向かう。
ただ苦行と思って嫌々模型を作るのではなく、「なんでこんなに枠が多いんだろう?」と思考しながら作るのがスケールモデルの愉しみ、、だったよね?
ではなぜ堀越の大バカヤロウは大先生はこんなマッチ棒パズルみたいな枠だらけの風防を設計したのか?
まず零戦は風防部分がやたら大きい。
隼基準で見ると零戦は複座機か?というほど。逆に零戦から見ると隼は犬小屋だ。陸軍のパイロットには犬が多かった、というからこれで不平は出なかったのだろう。。。念のため言っておきますが、冗談ですヨ。
これくらい空間があると洋上を長時間飛行する上でストレスが違う、というのもあるかもしれないが、風防の前方、後方をなだらかかつ紡錘形にすることで少しでも乱流を抑えるのが最大の狙いのはずだ。突出した涙滴風防は後方に乱流が生まれて空力的に不利となるのだ。
零戦は断面形でも胴体とスムーズに繋がっている。(特に第三風防)
隼はその辺は割と無頓着。
しかし当時の日本のアクリル樹脂技術では風防の面が大きかったり曲面だったりすると歪みが避けられなかった。そこで平板を多面体の様に貼り付ける、枠の多い設計となったのだろう。
しかし枠が多いと死角は増える。歪みの無さを取るか、視野の広さを取るか。零戦は前者で隼は後者、という事だ。零戦の側から見れば高速で飛行する分には枠など気にならない、あるいは視野の歪みを嫌うのは空と海しか見えない洋上を長時間飛行する艦載機特有の問題、という話もある。空間識失調と関係があるのだろうか?。。。
空気の流れに対し、いささか能天気な隼。やや神経質というか偏執的な零戦。脚カバーや機銃まわり、アンテナ柱、尾輪、テールコーンなどなどから、それは我々素人にも見て取れる。同じエンジン、同規模の機体なのに零戦の方が隼よりも速度性能が高いのはこのように各部の空力処理の差も見逃せない。
設計思想の差だろう。
零戦は基本が艦載機だからそこまで大量生産はしない(積りだった)少数精鋭だから生産性が劣ったり21枚もあるガラス板の在庫管理が面倒であったりしても最高性能を目指すことが出来る。隼は陸上基地での運用だ。多少の性能差を追求するよりも、生産性、信頼性、前線飛行場での運用上の扱いやすさを重視し、兵器として総合戦力を重んじたのではないか。
同じエンジンの似た様な規模の戦闘機の風防ひとつ取り上げてもやはりそれぞれに目的があり、それに合わせた設計になっていることがわかる。いや〜スケールモデルって本当に面白いですね!それではまた来週お会いしましょう、サイナラ、サイナラ、サイナラ。。。
いやいやいや、帰っちゃいけない。
面倒でもなんでもモデラーはともかくこの枠を塗らなくては、、、