これだけ空気の流れに気を使ったサエッタのカウリングなのに排気管は機軸に対して90度真下に向いている。これじゃ工場の排水口である。
機体側面の気流を乱したくなかったのか、ホットエアが表面のアルミ合金に当たらないようにと考えたのか、、、よくわからない。なぜか断面形だけキレイに涙滴型。
自分が空気だったとしたらサエッタのカウリングの下あたりは梅田の地下の曽根崎警察前に放り出された様なもんである。はどちらに行ったらいいのか大いに迷うだろう。
飛行機てなもんは前に進むんだから普通に考えりゃ後ろに向けておくだろう排気管なんざあよ。見ろってんだ。こちとら推力排気管でえ。
零戦52型
さて、偉そうに言っているが、結果的に時代に即さない機体だったことをあげつらって「設計者はスーパー馬鹿マリオだ」と揶揄する我々はしかし、単に「そのとき世界はどうだったのか」「そのあと歴史がどうなったか」を後から本を読んだりして知っているだけの未来人に過ぎない。
そんな「後知恵」で「先人の労苦」を鼻で笑って憂さ晴らしするのもいいが、それだけではまあつまらない。未来人としては、もちっとエレガントにいきたいものだ。どうしてそんな設計になったか、なぜ駄作機になったのか、傑作機はなぜ傑作機たり得たのか、などと考えを巡らせてみる方がよほど面白い。
また同時期のライバル機、G50やP-35などはどんな空力処理をしていたのか?とプラモデルを作って並べてみれば、これは模型趣味人としてより健全な方向性となるだろう。
P-35、、、エエ形しとんなぁ、、、いやだからといって作りませんよP-35なんて、、、
この時代はまだまだ空力理論が確立されていない。
その空力処理の方法で例えばお国柄や用兵思想あるいは設計者の考え方などが見て取れる。これもまた大戦機模型の面白いところだと自分は思う。例えば真下に向いた排気管も、調べればG50やP-35などこの時期には珍しいものではないと気づく。オイルクーラーの位置だって機種によって色々だ。九七戦ではカウリング内に環状冷却器を配しているし、F4Fでは主翼下に左右振り分け、P-36では機首下がパカリと開く、などなど。
ご承知のように第二次大戦は個々の兵器の性能のみならず背景の工業力経済力も含めた消耗戦、総力戦となっていく。過酷な戦場で毎日を戦う戦闘機はFw190やF6Fの様な「軍馬」のごとく、もっとタフで大量に生産出来る合理的設計が正解で、各国の戦闘機はそこに収斂していく。
歴史研究家としてはそれが最適解、ハイ論破、なのだろうが、模型マニアとしては正解ばかりでも退屈だ。かえって「個性的な形」は魅力ともなりうる。なんぼ合理的でも性能が良くてもそのプラモデル に乗って誰かと戦うわけではないのだから。。。