サエッタのカウリング前縁部が金属色なので最初はグラディエーターなどと同じく排気集結管だと思っていたが、実は全体が細い銅管で出来ていて、なんとこれがサエッタのオイルクーラーなのである。
日本機などでアゴ下にオイルクーラーがある機体はよく見かけるが、(サエッタのアゴ下インテイクはキャブ用)それらに比べれば空気抵抗は当然少ない。これもライバルG50よりも優秀だった速度性能に寄与しているのか。しかし製造も整備も大変さぞ大変だったろう。ぶつけたら凹むし、被弾か何かでオイル漏れが発生したらプロペラ後流で機体は油まみれになってしまう、などといまさら心配をしても80年も前の地中海での出来事である。サエッタのぶちまけたオイルでサンドリーニ島の土の色が変わったなんてことにはなってないからまあ大したことではなかったのだ。
しかしなんでまたこんな凝ったオイルクーラーを?!との疑問は、設計者マリオの名作エアレーサーMC.72を見れば解ける。
MC.72
銅の部分は全て表面冷却ラジエーター(液冷エンジン二基分の冷却水が循環している)機首の部分はオイルクーラー。というかオイルタンクが剥き出しで付いている。
アップで見ると血筋は争えないな、となる。しかしこれはまあ、たった一度の競技会の為の専用機ゆえ許容される設計だろう。一方サエッタは無論、量産実用戦闘機だ。戦時下で沢山作らないといけないし、戦場では乱雑に取り扱われるし、おまけに敵の銃弾はあめあられと降ってくる。
後年世に出たFw190は同じカウリング前縁に配したオイルクーラーを装甲板で覆って強制冷却ファンで冷やしている。理詰めというか計算づくというかいかにもドイツ人の考えそうなことだ。サエッタはやや凝り過ぎではあったが、フォルゴーレでは素直に一般的なオイルクーラーやラジエーターにしたからマリオ・カストルディもさほどキテレツではなかったと思うナリよ。