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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「古代デカールの呪い」レベル1/72ファルコ-15

マスキングトラブルで迷宮に彷徨い、情熱カロリー量がカップの底に残ったギリシャヨーグルトくらいになったファルコである。いったい全体いつになったら完成するのか自分でもわからない。こんな手乗り文鳥みたいな小さなものに何ヶ月もかけるのがプラモデルの国の住人だ。気が、、長いというか、知れないというか、ふれているというか、、、

しかしとにもかくにもデカール貼らねばならぬ。石にかじりついてでも苔がむしてでも貼ってしまえばひと段落つく。その後は乾燥期間を何日かとるので放置は可能だ。あとは野となれ山となれ、いやいやその間に「情熱量」を蓄えるのだ。この後もウェザリング、上翼取付とまだまだ越すべき峠は後に控えている。気が、、、遠くなる。

 

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塗ったばかりのペイントも多少は乾燥させたいので、その間やることがない。ひぐらしすずりに向ひて、デカールの余白を切り取るなどして過ごしけり。あやしうこそものぐるほしけれ。、、、と白目をむきつつも無心に切っていく。これをやるとやらないでは出来上がりに随分と差が出る。出るんだよねー、メンドクさいけどねー、などとブツブツいいながらも切る。色即是空、空即是色、もはや半眼。このまま即身成仏できそうだ。

 

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さて、塗装後一日おいてデカールを貼る。

デカール」とは何ぞやと問えば、水につけて台紙から剥がし、模型に貼り付ける極薄のシールである、と答えるはずだ。ところがこのファルコのデカールはどうやらそういう了簡は微塵もないらしい。水につけてしばらくしても一向に台紙から動かせない。

10分、20分、全然ビクともせず。試し貼りの時はあっさり剥がれたのに何で?と別の部分のデカールで試すが結果は同じ。水で駄目なら次はぬるま湯だ。10分、20分、何の変化もない。こうなったら最後は熱湯風呂だ。押すなよ押すなよ絶対に押すなよ!チャポン。熱っつーー!!と飛び出してくるかと思ったら平然と貼りついたままケロッとしてやがる。ど根性ガエルかオマエは。

時計を見ると最初に水につけてから、かれこれ一時間ほどたっている。これはもう完全に干からび切って台紙に固着していると判断した。このファルコのキットは発売後10年を模型店の棚で無為に過ごし、我が家に買い取られるや暗い押入れに封じ込められたまま30年間が過ぎ去った。その長きの眠りの間にあるいは石の様に固まって呪いの古代デカールとなったか。。。最近の研究でトイレにも神様がいるとわかった位だから、ウチの押入れにだってメデューサの一匹やそこらいても不思議はない。

さていかにせむ。

一晩中水につけておくか。いやしかしそれで次の日に細切れデカールになってジグソーパズル化した事もある。一旦水につけた以上もはや後戻りはきかない。今日この場でなんとかせねばならない。モデラーとしての長い経験がそう教えた。

ええいままよ、と荒技に出る。マーク部分だけ皮一枚こそげ落とすのだ。

 

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カッターの刃を黒刃の新品に替え、息を止めてゆっくり前後させながら台紙とデカールの間のわずかな隙間に滑りこませる。京都東山三条の料亭「玉作」でハモの皮をむく板前の包丁さばきもかくや、といった妙技である。

しかし空白部分をカットしたことがこの状況ではアダになっている。どうも要らぬ細工をした所が後になって祟ってきている様にも思えるのだが、気のせいだろうか。何度もデカールにカッターの刃が食い込みその度にあえなく切ってしまう。、、、またつまらぬものを切ってしまった、ああまたつまらぬものを、、、と悔やみつまずきながらの悪戦苦闘。

 

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なんとか台紙からそぎ落としたヘロヘロのデカール、糊の成分も削いでいるのでマークセッター液を多目に塗ってピンセットで苦心惨澹キットに貼り付ける。
誰だい、こんなところのスポイラーをわざわざディティールアップしたのは?どうも要らぬ細工をした所が後になってことごとく祟ってきている様にも思えるのだが、気のせいだろうか。

 

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貼りきれないところは普段なら蒸しタオルの刑、もしくはマークソフター攻撃、あるいは悶絶シンナー責めなどで馴染ませるのだが、今回は相手が呪いの古代デカールなのでそんなことは怖くてできない。やおらヘッドルーペを装着し、ガッシュでアイボリーを調色し、息を止めて極細面相筆でタッチアップ。もはや高松塚古墳修復作業の態である。ガッシュを使うのはデカールに対しての攻撃性の低さと隠蔽力の高さから。

 

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なんとか終わってグッタリ。たったこれだけに何時間かかったのだろう。

これはタミヤセガワではなかなか出来ない「経験」だ。出来ないというか、したくないというか、しないで済むならそれに越した事はないが、したらしたで自分の宝になるかもしれない「経験」ではある。バイクツーリング先での故障みたいなものか、タッハッハ。。。と無理矢理笑ってみたが、その声も力なく虚しく響く一畳半。情熱もナニもスッテンテンのカラッケツだ。ちりめんじゃこ三匹くらいしか残っとらんわ。

 

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しかし出来上がりはまあ悪くない。白帯、白十字と国籍マークの色調のジャストマッチングは我ながらグッジョブだ。このために色調を黄ばんだ国籍マークに合わせておいたのである。

プラモデルにおける「実感」とは「実際に塗られていた色」で塗ることではなく、いかにも本物っぽく見えるようなカラー計画にかかっている、とちょっと得意げに言ってみる。

、、、猫とファシーズのマークの部分がなんだかオモチャくさいナ、、、

 

 

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