古いキットの場合、透明部品が鬼門となることがよくある。違うキットのキャノピーかと疑うほど胴体と合わない、あるいは箱の中から氷砂糖がコロンと出てきたと思ったらそれがキャノピーだった、もしくはどこを探しても透明部品がなく、そもそも「ハズレ」だった、、、などなど60年代透明闘争における悲惨な事例は枚挙にいとまがない。
しかし、レベルファイターシリーズの美点はここでも健在で、風防は分厚くはあるが透明度や形状、合わせなどはそこまで悪くない。コイツはこのまま使うつもりだった。ファルコは開放座席で風防は小さな風除け程度だし、上翼が被るのでどうせあまりよく見えないんだから、、、
「オレにはよく見えてるぜ」
ああ、それなのに、風防を指でつまんでコンパウンドで磨いていたらパキリと割ってしまったのだ。あっちゃー。いらんことせんかったら良かったー。とっほっほ。と泣いたところでもはや後の祭り、クライイング アフター カーニバル。
単純な形だし前部だけなので塩ビのヒートプレスで新造するほかない。ようやく最後のステージ入り口にたどり着き、話しかけた門番の小動物が凶悪大モンスターに変身、いらんHPを削り取られる、というRPGでありがちなパターンに陥る。
木型をつくるまでもないから、キットの風防の枠を落として整形、エポキシパテで裏打ちして原型にする。足をつけてバイスで固定したのち、熱した塩ビ板を押し当てて絞り出す。
しかし「風防を絞る」なんて30年ぶりくらいだろうか。さほど難易度が高いテクニックとも言えないが、そんなことをしないといけないキットは避けて通ってきたのだ。それどころかここ十数年はほぼタミヤハセガワその他国産キットばかりのヌルい模型人生だったのだ。井の中のカワズ君子危うきに祟りなし、フロッグ プリンス ネバー、、、ええと。。。
後ろに見えるのは加熱用のロウソク。溶剤の染みたティシュなどが散乱している机だから透明カバーがあると少しでも安心かと思ってご仏前の灯明台をちょいと拝借、、、などしたらご先祖様のバチがあたってはいけないので模型専用に買ったカメヤマローソク製。ゆらめくロウソクの炎を見ていると心が鎮まり綺麗な風防が絞れるというご利益が、、、残念ながら煩悩にまみれた自分にはなかった、、、ホ、まだまだじゃの、コオロギよ。
例のごとく、いくつか作って形の良いものを選ぶのだが、どれもいまひとつキレがない。原型がプラなので熱でタレてきて大量生産は無理だからこの辺で手をうつ。普通ならヒートプレスした風防というのは強力なアピールポイントになるのだが、、、完成すると前述のようにほぼ目立たなくなる。
一段上の仕上がりを目指してチャレンジしたわけではなく、自らの至らなさで仕方なく増えた作業というものは精神をいたく蝕むようだ。情熱総カロリーは「ぶっかけうどん」レベルに急降下。
この後サフェーサーを吹き付けて各部のアラを修正後サフを吹き直す、の繰り返し。地道で面倒な作業ではあるが、心を無にして乗り切るほかない。一切苦厄、色即是空、ギャーテーギャーテーハーラーギャーテー、と前述の灯明台が役に立ったことは言うまでもない(,,,ウソ)
ここにいたって我が「情熱カロリー総量」は「冷奴にレンコンの酢のもの」、、、もはや精進料理である。
ともかくもここまでたどり着いた。ああこれでようやく内地に帰れる、いや風呂に入れる、いやビールが飲める、いや塗装ができる。。。