当初は史上最強(当社比)の「カツ丼定食」クラスを誇った我が「ファルコ製作情熱カロリー総量」であったものの、度重なるハードなワークアウトで消耗した結果、、、
湯川亭 「カツ丼定食」640円
今では「茶そば、いなり寿司セット」くらいの細々とした情熱量の有様。夜、早く塗装に入りたいよう、小物なんかもう後回しにしようよう、と泣くのであった。祈るよりほか、わたしには、、、いやいや、じゃあまあそうしようかね。
京都宇治「茶そば いなり寿司セット」1400円 (...カロリーと価格の反比例が激しすぎか)
ところがギッチョンチョン、ファルコは複葉固定脚機なものだから脚と支柱は塗装までに仕上げておかないとならない。支柱パーツはただの棒がW型につらなった味気ない部品。いやらしく鋭角の隅にパーティングラインを浮かべて箱の中に並んでるそいつらを思い浮かべるとゲンナリする。
そういう訳でどうにも机に向かう勇気が湧いてこない。夏休みの宿題で無味乾燥な計算問題のドリルだけが手付かずに残っている、あの感じだ。一旦こうなると自分の腰は排気タービンの壊れたP-47並に重い。
そんな時はもう無理をせず、あえて模型作りから離れてしまう。この狭い暗い工房から出て、バイクに乗ったり自転車で出かけたりオムライスを作ったりなどする。
もちろん資料本やwebで実機写真を眺めたりもするのだが。
単に気分転換という意味合いだけでなく、自分が楽しいと感じる事、面白いと思う事をやる。
するといつのまにか「さ、主脚でも付けとこか」と軽く立ち上がれる様になっている。「情熱の炎」を燃やし続けるためには、自らの手で「自分自身」に「薪」をくべるものだ。そうして温められて排気タービンが回り始めたP-47はあたかも銀の龍の背に乗ったような上昇をみせることができる。それは〆切やノルマなどで追われてイヤイヤ机に向かうことも多々あるが、好きでやってる趣味なのに他人に尻叩かれるなんてツマラないではないか。
さて、その主脚。
複葉固定脚なのに尾輪だけが半引き込みで「理解に苦しむ」なんてひどい言われ方をしているファルコである。旧式の空気抵抗のカタマリのくせに細部を洗練させても無駄無駄、ということであろう。しかし生来の「二枚羽根で足丸出し」の欠点は甘んじて受け入れた上で、他の部分で少しでも空気抵抗を減らそうと出来る限りの努力をしているのだ。アレはアレなりに。。。
ほんでも空気抵抗のカタマリちゃうんコレ!と思わず言いたくなる脚カバー。そんな印象の殆どはしかしこの開口部のプラのブ厚さからくる。見た所1.2mmはありそうで、72倍すれば80mm、これじゃタイガー戦車の側面装甲だ。イタリア上空にはシャーマン戦車は飛んでいなかったはずだからもっと薄くてもいい。
なのでナイフや丸めたペーパーなどでエッジの角を落としてやる。それだけで不思議と板厚も薄く見えてくる。ちなみにタイヤがないのは、挟みこむの忘れた!のではなくて「Cの字」にカットしておいて塗装後に素知らぬ顔してはめ込む段取り。
40年前に製作した時の記憶では脚をささえるステーの強度がフニフニで頼りなかった(意外と覚えているものだナ)。なので真鍮パイプで置き換え補強することにした。せっかくなので真鍮パイプは叩いて平たく潰す。コイツも空を飛ぶ飛行機、風の中で空気の流れと戦っているんだ、精一杯、馬鹿は馬鹿なりに。。という表現だ。
脚カバー開口部の薄さは上からだとほとんどわからない。それで外形の角を丸めて整えてやる。いかにも風を切るためのフェアリングです、という気分で削る。気分?そう気分。そんなこと言うと、やれズメンミローだのシラベローだのウスバカゲローみたいなうすらバカがわいてくる。そんな羽虫は端から叩いて潰す。
実機のカバー上部には滑り止めみたいな謎の”出っ張り”が3本ある。何によらず”出っ張り”というものはすべからくチャームポイントになる。決して見逃してはいけない。それは女性でもイタリア機でも同じことだ。
細い伸ばしランナーをしごいで脚カバーに添わせ、流し込み接着剤をひと塗り、表面がトロけたら前後の端をペーパーで落とす。その上から溶きパテを薄っすら馴染ませる。極細の竹串を使い、京都三条今出川の和菓子職人のごとき繊細さで仕上げる。
下翼後縁のオイルクーラーのアウトレット(排気口)
前半分だけエポキシパテで作ってあった後端部分をプラ板で継ぎ足す。
全部エポパテで造形しておかなかったのは、やはりエッジの薄さ感を強調するための言わば「仕込み」。各開口部のエッジがシャープになるだけで、機体全体が薄い金属板で作られているように思えてくる、すなわち飛行機らしく見えてくる、という、三段論法というかタンタンタヌキのだまし技というか。。。
これが案外上手くいって「スパイ大作戦」のエンディングのめでたくニンマリ状態となる。上手くいくとヤル気も出てくる。下手を打つとテンションが下がる。これがジュールの「情熱量保存の法則」だ。ウソ。
アウトレットの正確な形状もハッキリわからない。わからないから何もしない、では人間生きてて面白みがない。自分なりに「風の流れ」を意識して造形する、というかデッチアゲる。このような勝手気ままが出来るのは資料の少ないマイナー機だからであって、これが零戦、大和、タイガー戦車だとそうはいかない。
この実機のオイルクーラー周りの空力処理の仕方を見ると、複葉機とは思えない洗練度だ。カウリング下の古臭いキャブレターインテークとはもはや別人、いや別機の感すらある。このように古さと新しさが混在しているところがファルコの特徴で、これを理解不能なラテン脳の仕わざと切って捨てるか、未知の世界の不思議な魅力ととるかは、各人次第。自分はもちろん、、、
一方、好敵手のイギリスのグラディエーターなどは全身古式蒼然だ。オイルクーラーなんかインテークどころか平ぺったい本体むき出しで操縦席前にドッカと載っけただけ、といういささか破れかぶれなレイアウトだ。空力とかカッコ悪いとかのレベルですらない。これでは敵弾を受けてしまうだろう、、、とは思わないのが英国式だ。被弾したら風防オイルまみれだろう、とも思わないのが英国式だ。それはそれでまた魅力的かも。。。
そんなこんなで我が 情熱カロリー総量は奇跡のV字回復を遂げ「特選親子丼セット」レベルになった。
京都東山 「親子丼 鶏ゆずうどん」 1050円 コレは旨いよ〜
といったところで今回はこの辺で、、、