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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「何ごとも下ごしらえが大事」レベル1/72 ファルコ -1

いよいよ今回から40年前の自分の完成品をライバルに見立てての模型作りのスタート。相手が自分だけにどうしたってこれは「自己満足」だ。けれども「独りよがり」でもまたない。いずれにせよ他人の目は一切気にしないでいいから清々しい。

さて、古いキットなものでプラの表面の金型が荒れていて、突き出しピンの跡やモールド潰れなどがあちこちに見られる。最近のタミヤセガワではなかなかこういうワイルドさはお目にかかれない。嬉しくって涙が出る。地道な下地処理工程が必要だ。こういうところをまず綺麗にしてやるのが大事なこと。料理で言えば下ごしらえ、組み立てるところまで行くには長い道のりだ。

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突き出しピンの跡

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ピンの跡を消す

翼や胴体の羽布表現の鳥肌状のイボイボも大袈裟なので、ええいこの際だ、とばかりに全て削り落とした。(ちなみに関西では「鳥肌」ちごて「寒ぶイボ」言うねんで)
というよりピン跡をペーパーがけしてたらその部分だけイボイボが落ちてしまったのでいた仕方なく。こうなったらリベットも凸モールドももろともに処理するほかない。

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イボイボ 翼後縁のモールド潰れ

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イボイボ撤去後のスベスベお肌

左翼のエルロンはモールドの潰れが酷い。どうするか?一瞬考え40年前の自分に問いかける。答えは聞くまでもない。思い切って切り飛ばし、積層プラ板で作り直す。(こんな事するの何十年ぶりだろう)

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作り直したエルロン

凹凸になった羽布張りを再度表現するにはペーパーを巻き付けた妻楊枝を電動リューターに咥えこんで削ってやる。当時こんな工具は持ってなかったが、ま、今持ってるものは使ってもいいことにした。

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エルロンの羽布表現、スポイラー作り直し

実機の写真を見ると上翼のエルロンの前に4つもスポイラーがある。これはCR42ファルコの特徴だ。このスポイラーは空中戦だけでなくエアブレーキとしての狙いもあったのかもしれない。

ここから余談

もともと軽快かつ脚の丈夫な複葉固定脚機は前線の狭くて未舗装の飛行場でも運用出来る。さらにスポイラーがあることで短距離での着陸や緩降下爆撃なども容易になる。第一線の戦闘機として通用しなくても夜間任務や近接支援、連絡その他雑務には使いやすかったのだろう。案外この辺がファルコがイタリア戦闘機中最多生産となった理由ではないかと思う。

何しろあの理屈屋のドイツ人がイタリア降伏後もファルコを生産させ夜間戦闘爆撃機として自軍で使い続けているくらいだ。多分ヘンシェルHs123あたりの代わりだろう。あれも「使い勝手がいいからもっと作ってくれ」という要望が最前線からあったが、例によって融通の利かないドイツ人は「ダスイスト生産終了、ゲ廃番」といって取り合わなかったらしい。そういえば両機は見た目もよく似ている。。。。

そんなことに想いを馳せていると、スポイラーの表現がこのまんまではちょっと納得できひんナァ、と若き日の自分が耳元で囁く。うむ、やんぬるかな。プラペーパーと伸ばしランナーで再現して前後を削ってから溶きパテでなじませてやる。全部で4つもある。。。

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スポイラーステーの再現

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溶きパテでなじませる

なんだか「手作り感」があふれてきて嬉しくなる。

そうそう1970年代のプラモ作りってこんな風だった。キットのメロメロな部分をコチョコチョと修正していく。手作業だから中にはデフォルメ、デタラメ、デッチアゲも当然混じってくる(これを自分は「3デー」と呼んでいる)だから同じキットを作っても一人一人でずいぶんと違った完成品になるわけだ。自分などはそれこそが各人の「味」だと思う。しかし昨今の精密技巧を重視する模型界ではこういう「手作り感」は単に「ヘタクソの手抜き」とされて冷たい視線を浴びる。やれやれ。

さて翼のモールドを落とし終わって胴体パーツを手に取る。「胴体のモールドも落とさんとバランス悪いやん。。。」へいへい。ややマッドロープというか泥縄の様相を呈してきた感はあるものの、胴体もガシガシ削り落とす。こういった曲面には3Mのスポンジペーパーが大活躍。

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実機の羽布張りと金属板張りの混合がよく表されている、がいささかオーバーだ。

しかしモールドがあればあったでオーバーだと文句を言って削り落とし、無ければ無いでノッペリしてると不満げでリベットを打つのがモデラーである。常に不平不満のかたまりで、まったく難儀な人種である。むろん自分もこの難儀な人種のはしくれだ。

「リベット打ち」とは図面のリベット位置を見ながらタコヤキ返しの先みたいなので一個一個をプツリ、プツリと写経のように打っていき、キット全体をさながら耳なし芳一状態にしていく、という高僧だけに許された秘法だ。自分にはとてもそんな根気はない。技術も無い。
しかし、リベット打ちをしていない飛行機模型は、手すりの付いてない艦船模型同様、昨今の模型界では冷たい目線が向けられる。せやかて工藤、面倒くさいやんか。

ところがここに「リベットローラー」という救世主が出現する。歯車を転がすことでリベットを表現できる。洋裁につかうルレットと同じ様なものだ。スケールに合わせたリベットのピッチを再現するため、歯を取り替えることができる。まったく良く考えられている。

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歯の当たりを見やすいように先端を削ってみた

今までは等間隔かつ直線になるよう細心の注意を払って「一つ打っては父のため、二つ打っては母のため」とプツリ、プツリと隠に籠もってやっていた。それがこのリベットローラーを使うと「あらよっ!コロコロコローッとくらあ」であっというまに等間隔のリベットが打ててしまう。コロコローッコロコローッありゃちょっと斜めになってしまったかな、まあええか。(1/72の胴体くらいだと転がすより押し付けていく方がコントロールしやすい)

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ツルツルボディに繊細リベット、布金混合のメリハリは筋彫りでつける

 といったところで、今回はこれくらいで。