sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

新名神

「お手軽バイクの方が気楽だぜえ」
などという声がチラホラ聞こえてくる、ここ数年となった。
「オマエも無理して間尺にあわないドカなんか乗ってないでサ」
 
などと大きなお世話をやく。
人それぞれである。
カブでもSRでもオフロードでも好きなものに乗ればよかろう。

 

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ま、走ってると風とともにそんなスズメのさえずりなども聞こえないのだ

モンスターはまだまだ息災。
鉄火肌は相変わらずだけれども、いつのまにやらそれにも慣れた自分である。
似合っているとは思わぬまでも、ようやく息が合ってきた気のするコンビ結成九年目だ。

 

それに、
 
このたび我が地元に新名神高速道路が開通し、待望のインターチェンジが出来た。
夏までは開通記念とやらで通行料が半額だ。
「定額乗り放題」などというプランもできるようだから、これを利用しない手はないのである。
未だ意気軒昂なる我がモンスター。
高速道路にあっては喜悦の咆哮とともに生き生きと身を踊らせ疾駆するのだ。

 

さて、勇んでその新名神に乗ってみるとほとんどが山間部。
トンネルが次から次へと現れる。
いくつかは随分と長い。余計に退屈だ。
 
トンネル内の照明がすこし変わっていて、LEDの青い光が走っていく。
それを追いかけていくと過去や未来に時間旅行ができる、タイムトンネル、、、
のはずはなくて。
どうやら青い光が推奨速度になっていて渋滞が起こらぬ仕掛けらしい。
長いトンネルの中では空間失調というか速度感が失われるから(それがとても苦手だ)
これは面白い試みかもしれない。
 
トンネルから出るたびに強い横風。
煽られるのは軽いバイクだから仕方ない。
道路自体が地上からかなり高い所を通っているようだ。
どうもバイクで走って楽しい道とはあまり言いにくい。
 
だからだろうか、えらくゆっくり走る二台連れのバイクがいた。
スイングトップのブルゾンを風にはためかせたライダー達、
どちらも車種はよく分からない。
片方はカスタムされているのでエストレヤか、もう一台はおそらくスズキ。
 
前後を大型トラックに挟まれている。
しびれを切らした後続のトラックがあえぎあえぎ追い抜いていく。
集団の速度は80km/hを切っている。
前後と側方を遅いトラックで囲まれて、ちょっと嫌な状況だ。
 
バイクで高速道路を走行する場合、
「ゆっくり走ること=安全」
だとは思わない。。。個人的には。
 
自分は視界を遮る大型トラックや遅い集団は早めに追い越す。
常にオープンなスペースを探してそこに位置取りするようにしている。
万一の逃げ場として側方は必ず開けておきたい。
その方が漫然と走るよりむしろ「安全」だと考えている。
 
そうやって「安全なポジション」に自らを置く為には、
チェスの盤面のクイーンのごとき縦横自在な機動を要することとなる。
その為には、ある程度の加速力、制動力、安定性を備えたバイクでありたい。
中央道で木の葉のように煽られる200ccの小さなスクーターを見たときは身の毛がよだった。
当然ながら、ライダーにもそれ相応の判断力、技倆、経験が求められる。
 
かって木曽からの帰りの雨の名神で500ccの単気筒に乗った自分はそれを嫌というほど思い知った。
 
 
さて話を新名神に戻そう。
 
猪名川にお気に入りのカフェがある。
そこまでの所要時間が1/3になって喜んでいる。
日帰りライダーにとってはルーティングに選択肢が増えるのはありがたい。
例えば帰路だけでも時短がきく。
 
夕暮れ時に渋滞や市街地や山道を通らなくて済むのも嬉しいことの一つだ。
高速に乗ってアクセルをワイドオープンすれば、後はインター出口から家まで10分だ。
高速道路それ自体が現代の「タイムトンネル」なのかもしれない。
 
 
いいことばかりでもない。
 
高速道路開通と共にアクセス用のバイパスが山間部を切り開いて作られている。
これは便利になったわい、と喜んで通ったら、路肩に一頭の「鹿」が横たわっているのを見た。
おそらく、夜間に車かダンプにはねられたのであろう。
 
野生動物というのは道路が出来てもそれまでのいわゆる獣道だったところを
本能的に覚えていて、同じ箇所を横切るらしい。だからここは気をつけないといけない。
その鹿だけでなく他の鹿も、猪やイタチなどもその場所を通るだろう。
 
人間が”便利だから”と勝手に木を切り山を崩し道路を通してそこを蹂躙する。
鹿や猪やイタチにとってこれほど迷惑千万なことはなかろう。
 
「おまえらだけの山なんかい」
 
そう言われている気がした。
 

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