sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「バッテリー電圧ガ低下シテイマス」

「バッテリー電圧ガ低下シテイマス」

先日クルマの定期点検をディーラーで受けた時に、そう指摘された。

その時は生返事だけしておいてうっちゃっておいて、そのうち替えようそのうち替えよう、で夏まで来てしまった。

 

今年は真夏に家族で旅行に行くことになって、ハタと不安になってきた。

旅先でバッテリーが上がったらどうしよう、いや杞憂というなかれ、そういう苦い経験があるのだ。。。

 

 

何年か前、そんな真夏の家族旅行の高速のサービスエリア。

車を出そうとしらセルモーターが「うぅ」といったぎりで果ててしまった。

蒸し風呂と化したクルマから家族をレストランに避難させ、サービスエリアのガソリ

ンスタンド(たまたまあった)に駆け込んで適合するバッテリー(たまたまあった)に交換した。

後で見ると目の玉が飛び出るほどの金額だったが、「たまたま」に助けられたものだ

から、あれほどありがたく思った事はない。

 

以来、ことバッテリーに関しては値段では買わない様にしている。

 

今回もバッテリーは自分で替える積もりだ。

電圧低下の思い当たる節は、ある。

借りていた駐車場で当て逃げされ腹の虫を据えかねて動体センサー付きの監視カメラ

を設置した。それが風が吹いても作動する神経過敏センサーだったのでバッテリーが

激減したのである。今では監視モードは切ってある。

 

ネットやホームセンターでは買わない。

いかにも値段が安すぎるのが大いに怪しい。

大手メーカー製品であっても「安売り量販店用商材」というものが存在する。

何が違うか。

中身が違う。

 

バッテリーに詳しい人から聞いた話では極板の厚みが薄いらしい。

起動電圧は規格通り出るが耐用年数がまるで違うのだという。

なるほど極板が薄いと崩落の恐れもある。

何の前触れもなく突然死するバッテリーがあるが、それはたいがい、そういったヤス

モノらしい。自分はそれを聞いて密かにギクリとした。

 

ディーラーが最も安心で最も手間がかからないが、今度はどえらく高い。

結局そこそこの安心感とそこそこの値段で中をとって大手カー用品店に赴いた。

 

バッテリー売り場で下調べしておいた品番の国産メーカーのバッテリーを手に取る。

なんとなく今ついてるバッテリーより小さい気がする。

逡巡していると若い女性の店員がとことこ寄ってきた。

 

こういうカー用品店の女性店員と言えばいかにも彼氏がVIPセダンに乗ってそうな元

ヤン茶髪でややぽちゃのネーチャンがお定まりだったが、最近はそういう種族はあま

り見かけない。皆ドンキに大移動したのかな。

 

現に目の前にいるのはナチュラルヘアでスラっとしたなかなか感じの良さそうな娘である。

鼻にかかった声で「何かおさがしデスかぁ〜」と来たから斯く斯くしかじか、

と車種と形式を伝えた。

彼女と頭付き合わせて店頭の適合表を調べてみる、やっぱり品番は正しい。

 

黙りこくった当方の八の字眉を自らへの不信感と取ったのか。

彼女は「んではごゆっくりお選び下さ〜い」と離れて行った。

あれれ。ま、今ではそうそう鼻の下も伸びないが。

 

しばらく悩んでいたが、結局適合表と店員の彼女を信じてサイズを選ぶ。

グレードは4つあるうちの下から二番目。カー用品店オリジナルブランドのものだ。

一時期パナソニックボッシュだとこだわってた時もあったが、

今ではそうそう財布の紐も弛まない。

 

支払いを済ませて車をピットに回す。

交換の間に店内で呆けた様にドライブレコーダーなど眺めていると、

「お客様〜お客様〜」と若い女性の呼ぶ声。

息せき切って駆け寄って来るのはなんだ先ほどの娘ではないか。

 

「お客さま!お逃げ下さい、新撰組が!」

そんな事は言わない。

「お客さま!申し訳ありません、バッテリーのサイズが違ってました」

「ふむ、やはりそうであったか。そなたの手落ちでもあるまい」

そんな事は言わない。

「現車には大きいサイズのバッテリーが積まれてましてどういたしましょう?」

 

自分は明らかに狼狽した。諭吉4人でないと太刀打ちできない値札であったからだ。

 

何故そんな大きなサイズのバッテリーが積まれているのか」と問うても

町娘はいや店員さんは「わかりません」としか答えない。

短時間走行を繰り返す自分の使用状況を考えてみると大容量バッテリーはむしろベタ

ーチョイスだ。そう言えばディーラーの営業マンがそんな事言ってた気がする。

 

自分は逡巡した。ネットで買うか。いかほどかは安いだろう。

 

しかし、サイズが違うと指摘してくれたのはこのお店である。

安さを求めてネットやオークションをクンクン嗅ぎ回るのもいいが、

ディーラーや用品店の見識と手間を認め、正当な対価を支払うのも

また正しい消費活動ではあるまいか。


店員が可愛い、うむ、それも認めないではない。

いや待て待て、そんな色仕掛けに絡め取られる巌流でもあるまい。

今日のところはやめておこう、の一言で済む。

 

さらに数秒間迷った末、

バッテリーを交換するその「目的」が決断を下した。

それは「安心して家族旅行に行く為」である。