sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

開田で蕎麦を食って大自在

こんなに御嶽山が綺麗にみえたのは何年ぶりだろう。
こんな時には大きいカメラを持って来ればよかったとすこし後悔。
 
目の前に広がる景色に人間は一人もいない。
一人当たりテニスコート1面どころの騒ぎではない。
各人専用の甲子園球場、いやまだまだ余裕がある。
しばしその雄大な風景を眺める。
 

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ハラが減った。
 
朝のちょこざいなトーキョースクランブルエッグなどとうに消化しきった。
早う美味いもんを食わせろ、と胃も腸も待ち兼ねておるのだ。
まあ開田に来たなら蕎麦である。ともかくも蕎麦を食おう。
 
プルルンとエンジンを掛けて走ること数分。
ところがお目当の蕎麦屋「本日終了」の立看板。
開田も7度目くらいであるからこの程度では動じない。
蕎麦屋の二、三軒くらい知らいでか。
チョコマカ坂を下って二軒目に。
 

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ところがここもお休み。
「むむ。ふもと屋よ、お前もか」
トゥルルンと取って返して蕎麦屋3軒目。ここは営業中。
 
駐車場ではライダーがひとり。ホンダのNCXだ。
「こんちは」とつい挨拶したら向こうも会釈を返してくれたが怪訝そうな面持ち。
そうか、今年は俺はバイクじゃなかったんだ、と気づく。
 「なにゆえこの軽自動車のオヤジは挨拶してくるのか?」と不思議に思ったのだろう。
茶目っ気で「このバイク何シーシー?」と聞こうかと思ったがやめた。
 
蕎麦屋は結構な賑わい。
一年ぶりの開田のそばを味わうとしよう。
隣の席は年配の夫婦連れ。爺さんしきりにスマホをいじっては
「またメツブシ電機が何円下げた」だとか、
「ヘタチ製作所もだ、昨日から何円だ、まったく」
などとしかめっつらでモグモグやっている。
株のことだろうか。
婆さんは取り合わないでモグモグやっている。 
 
そんな憂いも財もない自分は呑気に隣で蕎麦をすする。
窓の外には御嶽山、泰然自若にのぞいておらるる。
 

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木曽福島に着いたのは1時だった。
いつものロッジにはまあ6時に着けばいいから5時間はある。
どこに行って何をしようが、「自由」
東京から今日の午前中までは線路の上で分刻みにコマネズミの様に動いていたのが不思議なくらいだ。
もう7度目の開田だから普通なら時間を持て余す。
なぜだかここではそう感じない。
深呼吸するかの様に開田を味わい尽くすのが毎年の恒例だ。
 
峠をポレポレ登って御嶽山の展望台。
いつのまにか献花台が出来ている。
 御嶽山は美しくも険しい表情をたたえている。雄大でかつまた厳しい。
そんな大自然を目の前にすると月並みだが人間の存在の小ささに考えが及ぶ。
 

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今日は天気が良いので展望台をいくつか回る。
展望台、といってもどれも街道から少し入った小さなもので、
道の路肩の砂利のスペースが少し広げられてそこに車を停める。

 

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一台の黒塗りのクラウンがえっちらおっちら転回している。
黒いボディは砂ホコリだらけで台無しだ。
およそ黒塗りのクラウンほど自然あふれる観光地に似つかわしくない車もない。
どこの大先生が乗っているのかと覗くと年配のご夫婦である。
よく見ると先ほどの「株が何円」さんだったー!!
というなら話はおもしろいのだがそれは違う。
 その方がおもしろいから誰にもわからないからと言ってウソはいけないよ。
 
こんな時、軽自動車は身軽だ。
黒クラウンをよそにクルクル転回して二車線でUターン、楽勝である。
考えてみれば旅先のレンタカーは「軽」に限るかもしれない。
一時間前に初めて乗った車でこれである。半年乗ったら宙返りでも出来そうだ。
 
スピードは出ない。その分、景色を堪能しながら走ることができる。
速い車だと、血眼になってワインディングを飛ばしてしまって
周囲の景色など目に入らない。
 
「えっ?!御嶽?見えてたの?」
 
それじゃあ「旅の気分」には、なれないからね。