バイクツーリングに好適なミラーレスカメラ、GM-5の話をしている。
GM5の商品コンセプトは今時流行の「若いカメラ女子」向けではおそらくない。それはまあ、こんな無駄に重くて硬くてコ冷たいのは今時の若い婦女子には毛嫌いされようし、EVF内蔵もMr&Mrs.ローガンたちの為のものだろう。
それはカラーバリエーションでもわかる。
「スムースレザーx黒」
「真っ赤のシボ革x黒」、
「オリーブグリーンのオーストリッチ革x銀のコンビ」
といった具合で、なんとも伊達というか酔狂というか、普通じゃない。
緑のオーストリッチなどいったいぜんたいどんな人が似合うのだろう、と思っていた。
そこにさきほどのお師匠はんを思い起こした。
例えば着物姿の華道家や棋士などがこれを袂(たもと)から取り出して
鴨川の桜なんかを撮影しやはったら、さぞええ風情どっしゃろなあ。
例えて言うなら井浦新
赤はどうみてもリップスティックの赤だ。
ファムファタールな美人のお持ちものだ。
例えて言うなら椎名林檎
ならば黒は?
黒ずくめの中年ライダーの持ち物でもいいではないか。
GM-5の後継機はレトロ調の小型軽量フラッシュ付き、色はオレンジとピンク、、、
NikonのJ5あたりがライバルだろう。
あの手はボディやダイヤル、軍艦部はシルバーに塗ってそれらしく見えてはいるが、
実際に手に取ってみるとやたら軽い。
最近流行の自撮り用に液晶が反転するなど、それがしには無用な仕掛け。J5の歯のホワイトニング、あるいは瞳を大きく写す、に至ってはもはやデジタル整形モード。一生使うことはあるまい。
ハルカちゃんやツバサちゃんはそういう軽くてちっちゃくてカワイらしいレトロ調カメラでお洒落にきめてくれればいい。
女の子向けを買うのは昭和三十年代生まれの変骨オヤジには耐え難い。テヤンデエ御釜じゃあるめえしピンクのカメラなんざ首から下げられるかってんだ。Pen liteではなくNikon V1を選んだのはそんなべらんめえな時代遅れ的意固地さからでもあったのだ。
マグネシウムボディのGM5は「可愛いレトロ調」とは一線を画した、異端の突然変異機種だったのは間違いない。
そんな異端のGM-5は早々に生産中止と相成った。
むべなるかな。
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さて、GM-5を構えてみる。
メニューは至って普通。
電子シャッターだが1/16000まで切れるというのは明るい単焦点レンズにはありがたいが、いかんせんこのサイズ。EVFもダイアル類も小さいから、マニュアル操作感はそれなりだ。あまり弄くらず基本的にはPモードで撮ることになるだろう。
さて、レンズセットではなく、わざわざボディのみにしてズームはコンパクトな
オリンパス14-42mmを組み合わせた。それには理由がある。
バイク上での「即写力」を重視しているからに他ならない。
「速写」ではない。
いい景色を見つけたらサっとバイクを路肩に寄せて腰からスチャっとカメラを取り出しパっと撮る。
何度も言ってしまうが、これが自分の"即写"スタイルだ。
GM5のキットレンズは起動の際に左手でレンズを繰り出してやる必要がある。
Nikon 1シリーズのレンズもそうだったが、あれは"即写"に向かない。
このオリンパスレンズなら自動開閉キャップがある。
ポーチの中でカメラを掴んだ瞬間に指でスイッチオン、抜き出して構えた時点ではスタンバイOK。ここまで片手で完結する。コンデジ並みに扱えるのだ。
(ならばコンデジでいいではないか、とも言えるが、興に乗ればバイクを降りてじっくり撮影したいのである)
その代わりオリンパスだから手振れ機能がレンズに内蔵されていない。
そこは腕、、、はないわけで、ま、換算80mm程度で屋外撮影なら問題無かろう、と踏んだ。
撮ってみてどうか、というのはまだこれからだ。
この「PPKスペシャル」なGM5に14-42mmズームレンズ。バイクで持って行く際の心理的障壁はStylus-1よりはるかに低く、周囲に対する威圧感なんて気にする必要はさらさらないのが嬉しい。
むろん秀麗な単焦点20mmもウエストバッグに忍ばせて行くだろう。
じっくり撮影を楽しむような時には単焦点とEVFで被写体と向き合う。
使い勝手とコンパクトさとEVFと画質、それと佇まい。
ようやく正当なGX200の後継ツーリングカメラを手にした気がする。