カバンのブランドマークが嫌でたまらず、その「緑のワニ」をマジックで黒く塗りつぶしたことがある。
そうしたらなんだか毛虫が張り付いている様になって自分でもゾゾとしてしまった。
だからこのカバン、けっこう探し歩いた末のものなのである。
誰もそうとは思わないだろうが。。。
薄手のブリーフケース。グローブレザーのシボ革。。。
柔らかくそれなりに分厚くて傷が目立ちにくい。
適度にラフな素材感、薄い見た目によらず意外と収容力がある。
革の伸縮性によるものだろう。
革の伸縮性によるものだろう。
紳士売り場では定番のシュッとしたビジネスバッグが並んでいる。
いわゆるビジネスマンではない自分だから、どれもちょっとそぐわない。
素材感があり、軽くて薄くて機能的で手頃な価格、そしてできれば、使い込むと共に「味わい」と「趣き」を深めていく素材。
そして、きちんとしたもの。
この最後の「きちんとしたもの」が「手頃な価格」「ブランドもの嫌い」と噛み合わない。国内で作っていて”きちんとしたもの”は極めて高価だ。手間賃が安価な国で作ったもので”きちんとしたもの”というのは誰かが製品管理をしているということで、
それは多くの場合”ブランドもの”なのである。
まったく無理難題だ。
無理難題をかかえて雲の様にさまようた。
ネットもいろいろ見回ってみたが、カバンは中に物をいれてナンボである。
やはり実物を見ないとその辺がつかめない。
しかしついにこいつに行き当たった。念ずれば通ず、というかイヌも歩けば棒に当たる、というか、ともかくも当たったのである。
形があか抜けた印象でスッキリとしている。
革も、手触りがよい。
ジッパーはシルバー、革はシボ革。
これだとややラフになりがちなのを片方だけRを付けたデザインでちょいと洒脱にまとめている。ビジネス一辺倒でもカジュアルでもなく、それでいてきちんとしている。
そこが大いに気に入った。
この鞄、メーカーはそもそも野球のグローブ製造が本業らしい。
その革素材を使って鞄を作っている、という所が面白い。
手頃な価格は無理してまで国内生産にこだわってはいないことを物語る。
製品管理はしているが、ブランドものには今の所なっていない。
旅が終着したのは鞄売場ではなくステイショナリーショップだった。
自分の様な天邪鬼の求めるものはやはりカバン屋の発想ではなかったのだ。
こういった「モノとの邂逅」はネットショッピングだけでは味わえない。