sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

路地裏

「sigさん、路地裏が似合いますネェ〜」
 
たしかにそう、まさにそんな路地裏に知人を連れて行って、
お気に入りのバーの扉を開こうとした時、肩越しにそんな
言葉を投げかけられた。
 
なぜか無性に嬉しかった。。。
 
 
  
 
 

 

「似合ってますね」と言われて嬉しいのは世間一般にはリッツカールトンホテルのラウンジなんかの方だろう。
 
シルクのスーツをまとい、
ビスポークの靴を履いて、
BMWのクーペで乗り付けて、
きらびやかな女性をエスコートすれば人生は上出来だ。
 
世間は、
目に見える、
数字で表せる何かしら、で構築されている。
預金通帳の「数字」や「イイネ」や「☆」の数、
 
それを沢山集めた人が賞賛される。
 
自分はただ、夕空にたなびく雲一筋を眺めては喜んでいる人間だ。
そしてそんなことが好きな人間が好きだ。
 
「夕陽を慈しむ気持ち」は目に見えない。
好きな音楽を聞いた時の胸に広がる満足感は数字で表現できない。
二気筒のバイクで駈け出す時の心躍る感じは、
馬力やトルクではどうしたって伝えられない。
  
「心」も目に見えないから、たぶん「そういうもの」で出来ている。
「そういうもの」ばかりを半世紀ほど一心にかき集めて生きてくると、
「目に見えない何か」をその肩に漂わせている大人になれるのかもしれない。
 そうすれば「路地裏が似合う」と言ってもらえる。
 
それが嬉しい。
何も残せはしないけれど。
  
ミッドライフ・クライシスをもう自分は怖れない。