sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

ちょっと不便、がいい

スマホタブレットの存在は我々の生活を便利なものに変えた。
ニュース、ショッピング、Wikipedia、マップ、使わない日はない。

いつでもどこでも
何でもかんでも
至れりつくせり。

いい場所やいいモノは全て調べがつく。
それらに巡り会う「偶然」のありがたさがなくなる。
SNSではリアルタイムでいちいち「屁の勘定」の応酬だ。

おいおい、なんだか窮屈になってきた。

なので近頃は仕事や日常生活に関しては「便利」を集中する。
そこで浮かせた時間をプライベートに振り分ける。
そうして「ちょっと不便」を楽しむことにしている。

「不便を楽しむ」というのも変だから
「手のかかるモノ、コトを楽しむ」と言い換えてもいいかもしれない。

昔ながらの面影を持ち、佇まいが良く、味わい深いモノ。

いつまでも新品のままの合成樹脂の工業製品よりも
鉄や木や革などは手の温もりを感じさせ、時とともに味わいがでる。
くたびれもするし、手入れや使いこなしにちょっと手が掛かる。

そんなものが身の回りに増えてきた。

例えばバイク
これも最新のものに試乗するととても扱い易い。
フルカウルでおそろしく速く、安楽で快適だ。

自分のバイクは10年もの。いささかならぬジャジャ馬だ。
向き変えの体重移動はシビアだし、常にギアとアクセルの連携に
気を使っていないとギクシャクする。

そこがちょっと不便だ。

しかし、
そこにはそれを手なづける楽しさが確かにある。
鉄のエンジンに一つ目玉、実にオートバイらしい面構え。
一緒に走る相棒として頼もしい。

例えば腕時計
電波ソーラーなら時刻合わせも電池の入替も不要。
買ったら最後ほとんどほったらかしでいい。

自分は今ではハミルトンカーキの自動巻をメインにしている。
こいつは無駄に分厚く無駄に重い。
一週間で1分ほど進む。3日も放っておけば止まっている。

そこがちょっと不便だ。

それでも、
時刻を合わせ、腕に巻いて二三度振る、かすかにルルルンと
ゼンマイを巻く振動が伝わってチチチチと小刻みに秒針が進みだす。
どこか愛おしい。


例えば
新素材アンダーは汗をかく運動やハードな作業にはピッタリだ。
風雨に強く蒸れないゴアテックスなどは最強のツーリングウェアだろう。

それに比べ厚手のザックリとしたコットンやリジッドのデニム生地、
革ジャンなどは堅くてゴワつくし、濡れるとなかなか乾いてくれない。

そこがちょっと不便だ。

けれど、
天然素材特有の肌当たりや手触りの心地よさがある。
少しづつ自分の体に馴染んでいくところも愛着がわく。
だんだんと「俺の革ジャン」「俺のジーンズ」になってくる。




これら「ちょっと不便」の「ちょっと」という所がミソである。
これが「かなり」だと不便の度を越す。
そうすると気持ちが離れてしまう。

ナロータンクのSR500、
アンティークオメガの手巻き腕時計、
オプティマスのガソリンストーブ、
レッドウイングのエンジニアブーツ、
バンソンの革ジャン、
etc

こいつらはとても味わい深く自分の時間を彩ってくれた。

しかしどれも今の自分にとっては「かなり」不便だ。
重い、堅い、扱いづらい、壊れる。

全てを等しく愛でるには、
自らの時間と金と愛情を惜しげも無く注ぐ覚悟が必要だ。
向こう見ずな勇気とガムシャラな体力が必要だ。
だから仕事や家庭など優先すべき他のものが増えてくると荷が重くなる。


今の自分には「ちょっと不便」位が丁度いいのだと思う。