sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

打てば響く

800用だというチタンマフラーがオークションに安くで出ていた。


ふと気になって調べてみると、たまたま手持ちの雑誌のレビューで「音がジェントルで極低速が乗りやすくなる」との評価のものだった。

「馬力はいらない、トルクが欲しい、近所迷惑では困る」そんな自分には丁度いい。

低速トルク強化対策の仕上げとするべく、腕まくりして入札すると定価の4分の1ほどの価格で難なく落ちた。
案の定、一ヶ所凹んでいる、だから安いのだ・・・そう言う所は見てみぬ振りを出来るほどの齢の「大人」ではあるつもりだ。そもそも「見た目」のチューンアップを目論んだ訳でもない。


届いたマフラーを自ら装着してエンジンをスタート、
するとほとんどノーマルと変わらない音で拍子が抜けた。
初代の「テルミニョーニ氏」素通しの腹に響く轟天爆烈音とは随分違う。

と思ってブリッピングをくれてやるとヌケは良い。
ひょいと乗り出すと一つ目の角でもう頬が緩んだ。えらく快適だ。
低速でなめらか、回せばそこそこの音量に変わる。

排圧が低くなったからか、
極低速トルクも上がって3000rpmを切ってもなんとかなだめすかしながら走れる。
(決して「楽しく」は、ない)
これなら街中でもM400の扱い易さを恋しがらなくても済む。

山道に連れ込むと全域でレスポンスが向上しているのがすぐわかる。

もちろん、仔細に観察すれば完璧とは云えない。
アクセル全閉から開け始めに、たまに失火気味になるという妙な癖は残っている。
スカを喰らってオーバー気味に開けてしまって低速コーナーなどでいきなり大加速して
大慌てする。これは今後の課題だ。

軽量化は何より大きな恩恵だ。
ノーマルサイレンサーではリアサスが沈む様に感じたが、丁度いいくらいの硬さになった。
S字の切り返しなどでの印象が抜群に好転した。
「フラリ」でも「ヒラリ」でもない。「スラリ」と決まる。
複合コーナーが眼前に現れると舌なめずりしたくなる。

取り回しも楽、
といっても自分はバイクを押したり引いたりあまりしないので
関係ないか。いつもシートに跨がったままチョンチョンと足で漕いで移動する。
「みっともない真似を」という目で見られるが横着なので仕方がない。。
逆に足のつかないバイクは苦労が多いだろうと思う。
ま、どちらも走り出してしまえば気にならないが。


自分はコーナーを速く走ったり膝を擦ったりということには、
さまで価値を見いださない。
第一そんな腕もない。
腰はシートに落ち着けたままの、いたって淡白なライダーだと任じている。
が、それでも「これぁ面白い」と気付けば100kmほど山道を駆け巡っていた。

いささか疲れて湖畔の道をのんびり過ごす。
流してもノッキングせず、角のとれたまろやかな鼓動感は気持ちいい。

見た目はいささかキンキラと派手になってしまったが、
意のままに快感を紡ぎ出してくれる。

パーキングに止めたコイツを振り返って見た時、なぜかとても頼もしく感じられた。