sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

野武士



面白いライダーに出会った。

骨のあるというか、
カミゴタエがあるというか、
噛めば噛む程味が出るというか、

まあ実際かぶりついた訳ではないので単に第一印象に過ぎないが。

その愛馬。

エンジン二基目、9万マイルを後にして年季を感じさせつつも、
随所に手が入れられた黒尽くめのV-max。
何ともいえぬ凄みを発している。

それはライダーも同様。
風雨にさらされ、
10数年の歳月が刻み込まれたとおぼしき黒い革の上下、
それに身を包んだその姿はなんだか

「野武士」


の様だ。

最新ピカピカのリッターマシンや輸入バイクなどが居並び、
小洒落たウェアのファッショナブルなアダルトライダーさん達で
溢れる様になった近頃の日曜朝のサービスエリア。

そこでは、その男は「一塁にも出られない」かもしれない。
・・・チャンドラーに言わせれば。

しかし、一旦場所をロードに移すや、
衆目を刮かせてくれる。

決して乗りやすくないはずの重量級のマシンを小柄な体躯で自在に操る。
京都の花背の胸突くヘアピンを軽々とクリアしていく。
ズバリと先行車を追い抜き、ヒラリとワインディングを駆け上る。

「人馬一体」

とは聞き飽きた言葉だが、
自分たちは随分と安易にその形容詞を使ってきたものだと、
まったく危なげがないその男の走りを見て思った。

だからといって闇雲に飛ばすだけではない。

後続車にきちんと目を配り、民家のある道ではスッと速度を落とす。

エラそうな事や説教がましいことは何も言わない。
前を行くライダーの未熟な先走りを、ニカっと笑ってただ一言

「修行が足りんのよ」


見よ、

あれがバイク乗りだ。

あんなバイク乗りに私はなりたいと願ったものだ。

あんなカッコいいバイク乗りばかりだったのだ・・・

かっては・・・。