ここからは下って御岳を一望出来る露天風呂を目指す。
十年程前にSRで訪ねたことがある。
その時は一人ではなかったので長居はできなかった。
今度はフヤける位に存分に浸かってやろうではないか、
と舌なめずりして行くと・・・
思わず声を上げて笑うしかない。
木曽の辺りには「火曜定休」のしきたりでもあるのだろうか。
風呂はあきらめ今夜の宿に向かう。
しゃれた外観のロッジ。
自分の様な者にはちょっと気恥ずかしい。
その庭にバイクを停め、エンジンを切る。
静寂、耳鳴り、めまい・・・久々の心地よい疲労感と達成感。
オドメーターは400kmを刻んでいる。
「無事に着いた、か・・・」
荷物を降ろしながらのしばし安堵の一時。
つい3年ほど前は、猛々しい虎の様だったドカティ・モンスター.
よくぞここまで旅のよき伴侶となってくれたものだ。
お気楽なバイクでも高性能なバイクでもなかったし、なんだか足回り
に不安があったが
シンドイ思いをしてきたからこそこの高揚感、充実感がある。
とかなんとか格好のいい事言いながら、
ほとんど素浪人の様にぼろぼろになってヨレヨレと宿に入る。
宿のご主人が近くの温泉まで車を貸してくれるというので
ありがた〜くお言葉に甘える。
まあ御岳は見えないがそれでも露天の桶風呂に入って
空の雲を眺めること小一時間・・・月が出ていた。
(そも私は長風呂だ)
風呂からの帰り道、山の間から唐突に雲を払って御岳が「ぬう」と顔を見せた。
夕焼けに染まった一番端の頂だ。
思っても見なかった近さで思っても見なかった高さで思っても見なかった「でかさ」だったので驚いた。
「おー、よう来たのぉ」
位のつもりだろうか。こちらもわざわざ車を降りて挨拶する。
「おー、来たぞぉ」
カメラを向けたらまた雲に隠れた。
御岳、存外照れ屋だ。
家族や知合いを離れ400kmの地に独り、この時の開放感たるや・・・
何十歳も若返った気がした。
愛娘が間違うほどそっくり、と聞いていたオーナー氏は山賊Kよりもう少々文明開花を進めた感じの方だった。どちらもガタイの割にはシャイな笑顔が印象的だ。
同い年でフランス車(ルノー・カングー)を愛し、
古くからのMacユーザー、優しくまろやかな響きの自作
オーディオからKind of Blue、という事では・・・
当方もまず他人とは思えない、と言ったら向こうは迷惑がるだろうが。
料理は旨い、なんでこんなにというほど野菜が旨い、ビールも旨い。
天井が高く、広くて静かで快適な空間。
すてきな奥様も加わって3人で「Kに」献杯。
お二方とは色々な話をした。
お互いの趣味の事、家族の事、そして友の事・・・
ついつい時が過ぎるのを忘れ深更に及んでしまった。
信州に来てからどうも体内時計が少しゆっくりになった様だ。
少しは仙境に至ったかもしれんと思って携帯で自分撮りをしてみる。
案の定、そこにはタダの酔っパライの大阪のオッサンが映っていた。