友人が一緒に飲みにいった店に荷物を忘れて帰った・・・
すぐに電話を寄越して来た。大事な書籍が入ってるらしい。
私が取りに行って後で郵送しよう、との申し出を断ってわざわざ自分で出向く、という。
問題は彼我を隔てる距離、新幹線で片道1時間・・・
問題は彼我を隔てる距離、新幹線で片道1時間・・・
こちらに手間を取らせない気遣いもあったろうが、
往復だと運賃でその本が買えてしまうのではないだろうか。
(むろん彼の地では手に入らない類の書らしいが)
「仕事上の都合で今週半ばまでにぜひそれを読んでおきたい」と言う。
費やす労力時間金銭は馬鹿にならないが、
今の彼にとってその書物はそれほどの値打ちがあるのだ。
必要な物を必要な時に手に入れる。
その為には、自らの手間暇を厭わない、わずかな金子に臆する事もない。
考えてみれば立派な事だ、あっぱれな男だ、と思った。
(忘れ物をしたことだけを挙げつらってウカツものだと罵ることは簡単だ)
「馬だ!馬を曳け、
その者に我が王国を与える、
余に一頭の馬を!」
昔、とある国王が戦場でそう叫んだという。
自らが最後の突撃をする為、機動力が必要な局面。
その時、その王にとっては「一頭の馬=一国」が等価だった。
その時、必要なものがあり、その代償を納得して払う。
そこには損得だとか世間の相場だとかメンツだとか、
およそ下らぬ理屈などは入り込む余地がない。
立派なことではないだろうか。
つい最近、自分が部屋の掛け時計を買った時の事を思い出した。
期間中にネット通販のカードを作ったら2000円分だかのポイントを呉れる、
というのでホイホイ入会したら、しばらく忘れていたらメールがぽんと来た。
「ポイント期限は月末まで」という。
ナニ、今すぐ何かを買わないと2000円がパーではないか、といきり立つ。
すぐにその通販サイトを見にいく。クリック一つだ。
「あと10ポイントでゴールド会員に!」と文字がまたたいている。
そして
「今ならこの提携ショップで買うとポイント10倍!」とも。
またもクリック、その提携ショップとやらに飛んで、
中でもっとも自分が欲しそうな掛け時計を探し出してカートに入れた。
そしたら今度は「あと1500円のお買い上げで送料無料!」ときた。
商品一覧に舞い戻って自分が使いそうなモノ(名刺入れ)を血眼で選びだす。
なんとかかんとか「購入」のボタンを押した時には
「やれやれ、これで損しないですんだ」と安堵したものだ。
送られてきた掛け時計は文字盤が見ずらい、と家人には評判が悪い。
名刺入れには、とりあえず使わなくなった診察券を入れている。
ゴールド会員は、何がどう違うのか今もってわからない。
果たして「得」だったのだかどうか、怪しいものだ。
「今なら」という言葉に踊らされ、不安に煽られ、
「今必要のない」モノに1万なにがしを支払ったことになる。
それも椅子に座ったままで・・・
友人と私、
どちらがウカツでマヌケだったか・・・
知れたものではないな、と思った次第。