虚脱した様な毎日だった。
知人からなんだかが送られてきた。
中を開けるとグルメ本だった。
見ると付箋がついている。
そのページに知人の男の経営する高級料理店が載っていた。
ほかにべつに手紙もメッセージもない。
そういえばそんな話をしていた。
旧友の通夜の席で隣あった。
死んだ旧友も高級料理店の男もみな同じ学校に通う同窓だった。
「話は変わるけど」
その男はそういって自分の店の話をし出した。
最近はマスコミにもとりあげられることが多くなりましてね
忙しくて忙しくて嬉しい悲鳴ってやつです。
という様な事をなぜか「ですます調」で嬉しそうに話していた。
もともと金持ちの御曹司で自慢話の多い男だったが。
それにしても、
級友の通夜の席で「話は変わるけど」か。
そんな男の作る料理が美味いのだろうか、とは言わない。
世間的にはさぞや美味美食なのでしょう。
芸術家や料理人は生み出すものが肝心だ。
本人の人間性とは無縁、むしろ傲慢ぐらいでないと名は残せないのかもしれない。
自分は高級料理に興味はない、縁もない。
「く、悔しいが美味いと認めざるを得ない」
というようなグルメブームには巻き込まれないですむ。
味音痴で良かった。