冬、といっても寒い日ばかりとは限らない。
思い切ってバイクで出かけてみる事にした。
どこに行きたいもなかったし、
誰と行きたいもなかった。
いつもの様に気の向くままに・・・
いつもの様に峠道でモンスターとの会話・・・
一つ二つのコーナーをこなしただけで、不協和音。
別段その気にもなっていない自分に気付く。
心は空っぽのまま、
ただただ冬の日差しの中をバイクで独り走る。
冬なればこそ、我が身に降り注ぐわずかな陽光が
ありがたく感じる。
さて、
そうはいっても浮き世の人間。
腹も減れば体も冷える。
そこで以前から気になっていた蕎麦屋を訪れる。
にしては珍しく温かいかけ蕎麦などを出している。
冷たい蕎麦の方が好きではあるが、
寒風の中をバイクで走ってきた。
独り冷えきった身に、心に、
温かい蕎麦はやはりうれしいものだ。
丼を両手で抱えてダシを味わう。
蕎麦をすする。
じんわりと体に、
じんわりと心に、
しみいる温かさに、身も心もほぐされていく。
うまい蕎麦だった。
風はのれんをばたばたなかせて
ラジオは知ったかぶりの大相撲中継
この曲、今はかみしめる様に思い出す。
あのね、わかんない奴もいるさって
あのね、わかんない奴もいるさって
あんまり突然云うから 泣きたくなるんだ
くやし涙を流しながら
あたし たぬきうどんを食べている
風はのれんをばたばたなかせて
ラジオは知ったかぶりの大相撲中継
"蕎麦屋”