sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

走れ胸を張れ




たまたま月がきれいだったからじゃない

何年たっても忘れることはできないだろう

毎年必ず月が見えるんだ お前と出逢ったその夜に






















まだモンスターに乗り始めたばかりの頃。

嬉しくて見せびらかしたくて迷惑も考えず色んなとこへ出かけた。
まだ黄色くて騒々しかったモンスターで、Kの店に乗り付けた夜、
そこではそんな曲が流れていた・・・

  

ライブがひけて、ビールやタバコの煙の中、とめどもない話題は
やがて店の表に停めてあるドカティに向かう。

「ああ、あれは、私ので・・・」
一斉に向けられた視線にひるんで慌てて付け足した。
「実はつい最近友達から譲ってもらった・・・ま、貰いもんです」

場がなごんだ。

ある人・・・「旅するうた唄い」は、
自分が発する言葉を丁寧に吟味するかの様な語り口で、
静かに言った。

「俺は・・・
ドカティを買える経済事情ってのを羨ましいとは
あんまり思わないンだけど・・・
ドカティを貰える様な人間関係は、羨ましいと思うね」

静かに、ゆっくりと、優らかな言葉。

諭すでもなく悟るでもないその言葉は

胸のスキマから「すう」と奥深くに入っていった・・・


この二年の間、
モンスターをようやく自分のバイクとして一体に見れる様になった。
その間に、自分たちに投げかけられる騒々しいノイズの中にまみれ
いつしかその貴重な片言は埋もれていった・・・

今、そういった雑多なゴミや落ち葉を掃き清めてみると、
その言葉がまるで地面に小さく白い新芽が顔を出しているかの様に
自分の中に根付いていることを知った。