sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

ゼニカネの問題ではない

とはいえ・・・



エエ年した大人がバイクをロハで貰う、
というのはどうにも落ち着かない。

かといって現金を諾々と受け取る様なMでもないことは、

それはそれは長い付き合いなので良くわかっているのだが・・・


  


とりあえず、どんなバイクか見に来いというので
ノコノコ出かけて行った。

距離計は26000kmだからまあそこそこ走ってはいる。

思ったよりもコンパクトで常識的な形。

小さなビキニカウルがいい感じの不良少年っぽさを醸し出している。


 
が、しかしタンクの造形はグラマラスで躍動的だ。

その下に鋼管パイプで組んであるトラスに小さく包まれたエンジンは

ドカティ特有のL型二気筒。
前のバンクがほぼ水平に突き出している。

エンジンというよりは何か他の工業機械にも見える。

 
そこからの排気は左右に二本突き出した太くやけに物騒な
カーボンのマフラーに導かれている。


その間で、シャープな造形のフェンダーが太いリアタイアに

甲虫の羽根の様にぴったりかぶさっている。

小さなテールランプは思い切って前進した位置に置かれ、
これまたセクシーな
ラインのシートカウルからわずかに覗いている。


 
黄色のドカティ、実にその、挑発的だ。


 
540のキットとFCRが組み込んであってテルミのマフラー二本出し。

 
Mはまっすぐ壁の一点を凝視しながらそう説明した。

ほうほう、ふんふんと一通り感心はしてみたが、
そもこちらにドカティ
についての知識が欠如しており、
心臓部をチューンアップしてあるのだな、
ということ以外は
よくわかっていない。


中古車を見に行くのならもう少し勉強してからなものだ。

これでいて私は行動に無計画なことが多い。

 
バイクの品定めはその辺にして、夜の街へと繰り出す事にした。

あっというまに双方酔っぱらいで、バイク談義、メカ談義に花が咲く。

機械は機械らしくあれ、などと酒が入るとやたらと盛り上がる二人。

 
Mは「例えばこれはもはや」
と懐からiPodnanoをペロンと取り出した。

「この薄さ、小ささ、何百と曲が入る、俺の許せる範囲を越えている」


私は満を持して鞄から初代iPodを引きずり出した。

まるでレンガと板チョコだ。
 
今となっては電車で女子高生の笑いの種でしかない。

ふん、笑うなら笑うがいい。
こっちはキミらのまだ毛のはえそろわぬ頃からコイツを聴いているのだ。

かれこれ5年も前、当時としては訳の分からぬ音楽を聴く道具に

7万なにがしもはたくのに相当な蛮勇を奮う必要があった。


 
この持ち運ぶ事を拒否した様な独善的な外装デザイン、

機械式のホイールコントローラー、ずしりとした存在感、

などなどが心地良くて、何度も何度も修理して延々使い続けている。


 
と、バーのカウンターの上に延ばした片手で初代のホイールを
コリコリ回して自慢してみる。
「おおう、これはいい。くれ」
「うむ。やる」

そう答える、しかない。


 
こうして前代未聞、初代iPodとモンスターの物々交換と相成った。

経済上ではなく、思い入れの上での等価交換である。

当事者以外から見ると全く理解不能かもしれない。

本人達は至って納得している。


 
なぜか話はみな酒の上でまとまっている。



こういうところは詐欺師みたいだ。
 
iPodには我々二人共が好んだ一曲を入れて渡した。


こういうところは・・・女子高生以下だ。