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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

ジョンとガッシュのダブルファンタジー

なにやら悪巧みを思いついて近所のジョーシンで嬉しそうにアクリジョンカラーを買ってきてブラック魔王的笑みを浮かべるブログ主である。

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中島系と三菱系が混じってるとか明灰白色の方だけが”光沢”だとか”J3”っぽくないとか、色々ありましょうが、そういうコ難しいミリタリー周りのツッコミはこの際、忘れようではないか、塗料のテストなんだからサ。ほいたら塗ってみよまい。見せとうみ、

「アクリジョンの実力とやらを」・・・これが言いたかったのね、わかるわかる。

とはいえ酷暑のさなかである。空調をかけても室温は27~28度くらい。時折B-29の空襲がある。決して塗料の筆塗りテストにふさわしい環境とは言えない。だから以下は少し辛めのインプレッションとなるはずだ。

筆による塗り心地はやはりベースカラーとは違う。重くて乾燥が速くムラになりやすい。その点はラッカーに似ている。専用エアブラシ薄め液で溶くと今度はえらく乾燥が遅くなる。水で溶くと溶けきらない塗料がのたくったようになった(左側)。

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隠蔽力はあまり高くない。なるほどベースカラーが白とグレーの他に赤青黄緑と各色ある意味がわかる。ただし塗膜の強さはなかなかのもの。パクトラタミヤ軍団のエナメルウォッシング+溶剤綿棒拭き取り攻撃に対しても見事に耐えてみせた。数日たって完全に重合完了後、という条件はつくが。

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蓋にアクリジョンを塗って数日後にタミヤのスミイレ塗料

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目を離した隙に塗料瓶からウニョウニョウニョ〜ンと伸びてきた謎の触手が?!
…というのはウソで瓶の縁にこびりついた塗料。ゴムっぽいというかビニールっぽいというか"マスキングゾル"みたいだ。さだめしあの"ゾル"の野郎もエマルジョン一味なんだろう。…だとするとこの塗料カスは瓶の中に戻しても溶けない?←実はその通り。

スーパー無臭塗料“ジョン・ガッシュ

さてお目当てのガッシュとの混色。さ〜て、隠蔽力の高さ、塗りやすさ、それに加えて塗膜強度を併せ持ったスーパー無臭塗料“ジョン・ガッシュ”の誕生!…となるか?

とりあえずはキレイに混ざってくれるし、塗っても問題は無い。アクリジョンの調色にガッシュを色味程度に入れるのは問題なさそう。しかし数年後に全身に謎のひび割れが入ってジャミラ化する、かどうかまではわからない。

逆に塗膜強化策としてガッシュにアクリジョンのクリアーを少量混ぜてみることにした。自分の目的はこっちがメイン。ただしこのアクリジョンクリアー、見た目は全然クリアーではない。フタを開けた瞬間に、わぁなんなんコレぇ!と目をむくだろう。

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乾くと透明になる、というエマルジョン系特有の”クリア”である。乳化して白濁しとるわけですな。だから「巨」をつけないでって!

リキテックスやファレホのグロスバーニッシュやマットバーニッシュも同じ。あのへんをトロっと濃くした感じ。 濃度が難しかったが、いつもの様にガッシュを水で軽く溶いてアクリジョンのクリアで伸ばした。

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翼端はアクリジョン専用エアブラシうすめ液をごく少量入れて筆塗り、胴体側の薄い方はさらに水で溶いて極薄塗り重ね。こうして見るとアクリジョン単体よりは塗膜は平滑だが、どうも筆ムラが出て隠蔽力が下がる傾向。

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指触乾燥後、水綿棒で優しく撫でる位なら平気である。コンニャローとばかりにギシギシこすってやったら"ぺろぺろーン"という感じで剥がれる。

数日たって完全に重合したらガチガチ。水綿棒どころか爪ごときでは剥がせなくなった。ただしエナメル溶剤で拭うと塗料がティシュにつく。

ガッシュの美点の筆での塗り易さ、隠蔽力がかなり失われ、逆に塗膜強度はやや向上する。(この二つの特性は相反関係なのか)しかしエナメルのスミイレ、ウォッシングは微妙。やはりスーパー無臭塗料“ジョン・ガッシュ”……は残念ながら夢であったようだ。予想以上にジョンの遺伝子の方が強かった。OH!ヨーコ!

混合比をシビアにコントロールすれば妥協点は見いだせるかもしれないが、そこまでしてこの二種類の塗料を混色する必要性があるかどうか。まあ塗料に何を求めるかによるだろう。モノグサな自分は塗膜保護ならリキテックスの"パーマネント・マットバーニッシュ"の上塗りを選ぶだろう。画材系の入手性は家電店で買えるアクリジョンには劣るがファレホほどでもない。

おっちゃんの最期

試しにその他各種メディウムやアクリル塗料などアレコレ混ぜてみては「被験体 第47号D"サンボル"」に試し塗りしては各種溶剤で洗い落とす、を繰り返す内についにサンボルの主翼がバキバキに割れてしまった。

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ぐうわああ〜、シンナーがっっっワシもうあか〜ん…

なんだかシニガミ博士が地下室で改造ミュータントの実験してるような感じになってきたのでこの辺でやめておこう。

 

総じてアクリジョンは模型塗料界の「疾風」というよりはちょっとクセのある十五試局戦「雷電」だったようだ。以上は筆塗りでの話であってエアブラシでどうかは試していない。何やらエマルジョン系は吹き付けには向かない、との話も聞くから無理してトライしようとは今のところ思ってない。

新水性カラー

ちなみに昨年”水性ホビーカラー”がリニューアルしている。乾燥、塗膜の強さはラッカー並み、エアブラシでも使いやすい、とのメーカーの談である。それが本当なら、こっちこそ模型塗料界の大東亜決戦機 「疾風」!…

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…なのだが、これは以前試したことがある。

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無希釈一発塗りでこんな感じ。筆で塗る分にはタミヤアクリルと大差ないような感触だった。まあタミヤより臭く無いのは良いが。うーん「隼三型」くらいかナ。

 

各色出揃っていてエアブラシでの評判も良いようだから、いずれラッカー系をリプレイスしていくのかもしれない。個人的には絵の具の調色には面倒を感じない...というかそこまで正確性にコダワラナイ。今のところ極薄ガッシュ筆塗りが楽しいし、当工房で新型水性をエアブラシで試す日が来るのは少し先になりそうである。

という訳で今回は紫電に一切関係ない話だった。紫電も作らねぇで何してやがる、と言われそうだが、どーせこの暑さでは筆塗りなんざまともに出来ゃしねえよッ…と開き直っておこう。

 

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鼻利きモデラー無臭模型の道を行く、の段

クレオスのアクリジョン・ベースカラー の使いやすさに今更ながらに出会った情弱ブログ主である。

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ちなみに"アクリジョン専用エアブラシ用うすめ液"は無臭。それでいてある程度はラッカーも落とせるので用具の掃除などに使えば無臭モデリングには良さそうだ。一方、”アクリジョン専用ツールクリーナー”はややツンとした臭いがする。

GSIクレオス T313 水性カラーアクリジョン専用ツールクリーナー (大) 250ml

GSIクレオス T313 水性カラーアクリジョン専用ツールクリーナー (大) 250ml

クンクン、これはどこかで嗅いだことがあるな、と思った。何のニオイだったかと必死に鼻の記憶を辿る。そうだ!あの夜、向かいのベイカーさんちのノーマ姉ちゃんがつけてた何とかの5番、、、、

じゃなくて、ホームセンターに行った時の臭いだと気付いた。だとすれば塗料か?クンクン、いやおそらくこれはシンナー系、それも”ワシン難燃性ラッカーうすめ液”だ!と思ったら当たりだった。警察犬か君は。ワンワン!

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におうといってもクレオスのラッカー用ツールクリーナーなんかよりは随分マシなもんだから自分は通常のラッカー塗装の時の筆洗いに使っていた。ところがこいつはけっこう樹脂系を侵す。エアブラシのパッキンがヤラれてしまった。

"難燃性“とか”非危険物”とか一見優しそうな顔をしているが裏では結構"エグいことしい"なのである。美人の嫁さん貰ってグルメ本出しながら有料トイレでヤらしいことするどっかのお笑い芸人みたいなものか。アクリジョンのツールクリーナーはかなり薄めてあるようで攻撃性は低そうだ。むろん同じニオイだからと言って同じ成分とは限らないが。

GSIクレオス アクリジョンカラー NS30 アクリジョンスターターセット

GSIクレオス アクリジョンカラー NS30 アクリジョンスターターセット

さてこの”アクリジョン”、なんだかスマトラあたりの帰国子女みたいな名前だが、これはエマルジョン系のアクリル塗料、を表したネーミングらしい。

”エマルジョン”とは水と油など”本来お互い相容れない性質を持つものが混ぜ合わさった状態”のことで日本語で言うと”乳化”。ないはずの”巨”の字が見えてくる人は変なアニメの見過ぎだヨ。

なんで”乳化”なのかというと、”乳”=ミルクは赤ちゃんが効率的に吸収しやすい様に脂質ほかの栄養成分を水に溶かし込んだ液体だから。このスーパー栄養ドリンクを幼生に与える保育システムこそが、白亜紀以来のわれわれ哺乳類の大繁栄を支えてきた。「だから”おっぱい”は偉大なんですナ」と中学の生物の石崎先生はテカテカの頭を撫でながら嬉しそうに言っていたのを思い出す。

さて一方、タミヤアクリルや水性ホビーカラーなどはそもそも組成が違う。

タミヤカラー アクリルミニ X-23 クリヤーブルー 光沢

タミヤカラー アクリルミニ X-23 クリヤーブルー 光沢

水性ホビーカラー H2 ブラック (黒)

水性ホビーカラー H2 ブラック (黒)

この手はアルコールに顔料を溶かした溶剤系塗料で、溶媒が揮発(=常温でガンガン蒸発すること)して塗膜が硬化する。この揮発した気体が問題で中には火がついたりラリったりというアブない成分が含まれているものもある。ラッカーのMrカラーの薄め液などはその危険性ゆえわざと鼻につく臭いニオイをつけてあるという。

そういう類をわざわざ空気中に噴霧しては吸いこんできたのだから我々モデラーの脳ミソがイカレポンチとなるのは止むを得ない。さらに鼻毛ボーボー、気管支ゲジョゲジョ、爪には青竹色という有り様だ。

さて、一方エマルジョン系塗料は水がほんわか蒸発する。気体は水蒸気だから人畜無害である。残った顔料と基材がなにやら「重合」という未知の(文系にとっては)化学反応をおこし塗膜を形成しやがて完全硬化にいたる…らしい。乾燥速度や下地への食い付きを超高度な(文系にとっては)科学テクノロジーで改良したのが”アクリジョン”…ということ…らしい。

”エマルジョン物質”はミルクの他にも身近なところでは木工ボンドやマヨネーズなどがある。ガッシュリキテックスなどのアクリル絵の具も同類だ。そういえばこいつらはチューブから出した時のチュルリ感がよく似ている。見た目も艶やかでくわえて言えば美味そうである。マヨラーであるブログ主の個人的意見です。

ターナー アクリルガッシュ 13本(12色)スクールセット 11ML

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ボンド 木工用速乾 50g(ボトル) #10822

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キユーピー マヨネーズ 1kg

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このブログからキューピーマヨネーズをクリックしてAmazonで買う人は皆無だろう。アフィリエイトは自分には縁遠い。

ならば"アクリジョン"はガッシュの代わりにならないだろうか?、とフト思いつく。あるいは混色が可能ではないか?混ぜたらガッシュとアクリジョンのエエとこどり塗料となるやもしれぬ。そうなれば、だ……腑抜けた名前のスペイン製の高い塗料などをわざわざ電車で買いに行かずに済むではないか……シンナー漬けのボンヤリ脳でそう考えたブログ主はひとりホクソ笑んだのである。

 

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紫電-5「真夏の筆塗りの夢」アオシマ1/72製作記

 士の字になった紫電

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マスキングしたキャノピーを丁寧に擦り合わせてから胴体に接着。接着剤はPitマルチ2を使用。胴体との隙間はジェッソ+モデリングペーストで埋めておく。フレームは機体内部色で塗ってから光の透過を防ぐためにブラックアウト。

そしていつも通りタミヤアクリルで下塗り…の手はずだったが…

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筆につけた塗料が塗っている先から乾いてしまう。プラへの塗料ノリも悪い。そしていわゆるカブりが発生する。外は猛暑の8月。空調していてもこの気温、湿度では無理もないか…

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う〜ん、イマイチ!

そこで湿度に強いという噂のMrホビーの水性アクリジョンのベースカラーをトライすることにした。あまり模型誌などを読まない、模型ブログなども見ない模型情報弱者だから「水性アクリジョン」というシリーズが出ていたことすら知らなかった。

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アクリジョンには専用のツールクリーナー、うすめ液が必要となるらしい。アクリジョンの希釈にはエアブラシ用うすめ液の方がいい、という話だったのでそれも合わせて購入。

思えばMrホビーの水性カラーには随分と痛い目にあってきた。ラッカーシンナーの臭いが苦手だったからそれこそ「レペ」「ホッペ」の時代から買ってきたが、どうも扱いにくく、泡立つったり、いつまでたっても乾かなかったりと何度も煮え湯を飲まされてきた。

友人が渾身の1/48フォッケウルフを水性ホビーカラーで塗ったら乾かず、グジョグジョになってしまい狂眼と化して「水性のボゲェ、なめとんかワリャあ!」と叫んだ、というエピソードを今でも覚えている。

ところがこのMrホビーの”水性アクリジョン”、無臭で毒性もない。乾燥が速く塗膜が強く、もはやラッカー並みでエナメル墨入れどころかラッカーの上塗りにも耐えるという。さらにベースカラーはサフェーサー代わりにもなる、と以上はメーカーの談。それが本当なら模型塗料界の決戦機 四式戦「疾風」ではないか!?

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グレーとホワイトを1:2くらいで混色してサフっぽい色にする。相当沈殿しているので気長にかき混ぜる。それでも濃いのでうすめ液で少し希釈。いつもの試験体47号-D「サンボルのおっちゃん」に登場いただいてテスト。

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塗り心地が素晴らしくなめらかで、ちょっとガッシュを思い出させる。一瞬コレはスゴイ!と思った。ところがギッチョンチョン。いつまでたってもまったく乾きやがらない。

「なぁ〜にがラッカー並みか」瞬時に凶眼と化し「ケッ!やっぱりオンドレも水性組のもんやったんかぃ、イてもうたんどオルぁ」とばかりに塗料瓶をコンクリ詰めにして大阪湾に沈めるところをあやうく踏みとどまる。待て待て今は21世紀だ。まずは手元のスマホで”アクリジョン、乾かない”で検索してみる。
アクリジョンの"エアブラシ用うすめ液"はよく振って使わないといつまでたっても乾かない
などという文にヒットする。

「なんやて!?そんなもん書いとかんかいやぁ、おぉ〜⤴︎」

「…あ、書いたるわ、でッ、なんじぇい」

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そこでポリ容器ごと振ってよく混ぜてから少量希釈して塗ってみるとまあそこそこ乾く。しかし水の方が乾きがいいみたいだ。塗膜は平滑でシルキー。隠蔽力も高くタミヤアクリルと違ってこの湿度でもカブらない。そして塗膜の強さは自分の中の水性塗料のイメージを文字通り塗り替えるものだ。

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なめらかな塗り心地はタミヤアクリルを超えてガッシュなみと言っていい。水で薄めてのいわゆる水溶きアクリル塗りにも対応する。傷も埋まるし、これなら臭わないサフェーサーとして使えそうだ。ブラボーやん。

満を持してでは本番、紫電の下塗り。マジックリン風呂でタミヤアクリルを落としてアクリジョンベースカラーを筆塗り。

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快調快調、濃度が決まると面白いように塗料が伸びる。筆はナイロン系よりもタミヤHGなどの柔らかいものとの相性が良いようだ。

実は何度かうすめ液を振らずにそのまま加えてしまった。そもそも”うすめ液を振って混ぜる”という習慣はわれわれアジア人には無いのだ。透明の瓶に入れ替えて沈殿物を目視出来るようにしよう、と思っている。

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"アクリジョンベースカラー"

君は明日から一軍入りだ。これでガッシュとの相性が悪くなければレギュラー、いやスタメンも夢ではないぞ・・・

 

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紫電-4「飛行機模型の優先順位」アオシマ1/72製作記

優先順位といっても「僕は細部に凝りまくるね」とか、「あら私はプロポーションが大事だわ」とか「ワシャ何ちゅうても塗装が命じゃ!」とかそういう話ではなく、飛行機の模型を作るときにどの部位を優先的に扱うか、ということだ。それは全てのパーツが均一に完璧に出来上がるのが理想だけれど、ヘタっぴいな自分なぞはどこか一つでもう手一杯精一杯。だから今回はやや低次元なお話です…いやいつも高次元な話なんてしないが今回は特に。

自分が最も優遇するのは左側、それも主翼上面、特に付け根部分である。理由は簡単”一番目立つから”。人は飛行機を見るときはだいたい機首を左にするものだ(もともとは船のport-sideから来てるのだろうとは思うが定かではない。馬も万国共通で左側から乗る。バイクはこの名残で必ず左側にサイドスタンドがあるが、右側通行の国ではわざわざ車道側に回って乗り降りするという危なっかしいことになっている)

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右舷

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左舷

こうして見るとやはり左舷がしっくりくる。そして自然と主翼付け根に目がいくのではないだろうか。
「いいや、私はやっぱり尾翼の機番のユガみに目がいく!!」と言う人はフェチか変態野郎なのでちょっと相手にはしたくない。

正常な趣味嗜好であれば機体の左を見る。つまり左舷が"第一身分"右舷は"第二身分"、"第三身分"は下面全般だ。つまり右水平尾翼の下面は”最下層賎民”ということになる。
なのでスジボリを掘ったり試し塗りをしたりする時は自分は必ず右水平尾翼下面から始めてやる。あんなやつばらどもはいわば練習台で、段々慣れてきて第一身分の"左側主翼上面伯爵様”をやらせていただく頃には綺麗に仕上がる、というアンシャンレジームな模型づくりをしております。はい。

「階級制度反対!」
「右水平尾翼下面にも人権を!」
「自由・平等・博愛!」

などとなんだかシトワイヤン達が叫んでるようだけど、
「あら、水平尾翼がなければ垂直尾翼を食べればいいじゃないの」
そのうち斬首台の露と化すな…

何が言いたいかというとこの主翼のスキマ。

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仮組み状態ではあるが、あまり深く考えずにこのまま作ると主翼と胴体の間には深くて大きな溝ができる。紫電のこのバナナ状のフィレットは独特の後付け感が特徴だ。なのでパテ埋めで境界線がぼやけるとイメージを損なう。いや正直言うとパテ埋めはめんどくさい。

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そこで左翼付け根最優先策を練る。キットを見ると主翼下面パーツにコクピットを固定する出っ張りがある。これが主翼の位置決めの自由度を阻害している疑いがあるのでまず抹殺対象だ。

その首に冷たいニッパーの刃を当てる。

「さよなら我が友、ダントンよ」

「切るがいい。お前もすぐに俺の後を追うだろう!」

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そう次はそこのロベスピエ…じゃなかったダボ君、主翼上面と下面のパーツを固定する貴殿こそが真の自由の敵だ。

「ニッパーか、激しい薬だが効き目は確かだ」パチン。

ついでだからホゾの方も首をはねておこう。パチン。
これで邪魔者はいない。次は誰を粛清しようか…
 そうしておいて、主翼下面のパーツを先に胴体につけてしまう。

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胴体と翼下面パーツの合わせ目はうまく削り合わせると隙間なく収まった。トレビヤン。次に胴体との隙間が最小になるように主翼上面のパーツを削り合わせてやる。

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隙間はずいぶん小さくなってきた。さらにチョイと削っては合わせ、合わせてはまた削る。これを繰り返し追い込んでいく。

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よし、隙間ほぼゼロ。

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ただし主翼胴体間を最優先で合わせているため翼端や前縁などにシワヨセがくる。
「まったく伯爵様のおかげでこちとら迷惑な話だぜ」

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後で整形したらいいじゃないの、とこのままで貼り合わせてしまうのがsig工房。整形しても翼縁などが厚ぼったくなってしまうが、それが何だと言うの、と割り切ってしまうのがsig工房。
この後、上反角を左右均一にマスキングテープで矯正。…

「つまり実機の上反角が何度であろうがこの際無視するわけですね?」

「さすが砲兵隊長だねボナパルト君、その通りさ」

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あくまで”ハメ合わせの良くないキットを出来るだけ手間を掛けずに見栄えよく作る”、横着者の抜け道的なもの。…良い子はマネをしてはいけないのよ、タミヤを買いましょうね。

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幸い右翼もまあまあ綺麗に合った。
ちなみに右翼よりも左翼を優先するのに政治的意図はありませんことよジャコバン派のみなさん。

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りっぱな士の字になった紫電

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ズドンとした胴体にでっかいフィレットが紫電のチャームポイントその2。

 

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紫電-3「エンジンあるところに排気管あり」アオシマ1/72製作記

まこと栄光の影に数知れぬ戦闘機の姿があった。

命をかけて歴史をつくった影の飛行機たち。だが人よ、名を問うなかれ。

闇に生まれ、闇に消える、それが戦闘機の定めなのだ。

紫電!お前を斬る!

エンジン

旧版とリニューアル版のエンジンの違い。

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旧版では一体成型の減速機がリニューアル版では左右分割、さらに配電管など全部で4つのパーツになっている、という細かさだ。

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左が旧、右が新。右はなんだか正面がガビガビになってしまっているがこれはブログ主がヘタっぴいのせいである(涙)済まぬアオシマよ。(まあスピンナで隠れるけどね)

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カウリングを被せるとあまりよく見えなくなる。

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旧版。

排気管

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「新兵器、ロケット噴射ー!!」的、昭和全開な排気管。

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削ってそれらしく整形したのが左。右が整形前。

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実機は最上部の排気管だけちょっと上を向いている、ってことで後先考えずに切り飛ばしてしまった、の図。

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排気管は伸ばしランナーから切り出していく、という古式ゆかしき技法。小さいので落とすとどこいったかわからなくなるぞ……慎重に…ポロッ、あーッ!くそう、もう一個作るかぁ……ポロッあーッ!…

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苦心惨憺して貼り付けてはみたが…ん?何か違うな…実機写真をよく見ると…

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うへぇ、カウリングの分割が違う。

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やり直しでガンス、フンガー!元のカウルラインを瞬間パテで埋めて…

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カウルフラップを切り飛ばし、

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プラペーパーでカウルフラップを再生。正しい分割ラインをスジボリ。

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下の四本に合わせたので実機よりずいぶん太い。けどそりゃまあデフォルメの範囲内ということで…。

実はカウルラインの違いに気づいたのは主翼をつけた後。それから切った張った埋めた掘った、落としたどこいったまた作った、の大騒ぎ。「後の祭り」というのはこういうことをいうのだな〜(違います)

こんなに面倒な事になるならキット通りで知らん顔しとけば良かった、触らぬ排気管にタタリ無し、なんて知恵は切り飛ばしたときの自分にはなかったのだから仕方ない。タミヤならこんな苦労はない…のか?…

タミヤ 1/72 ウォーバードコレクション No.68 日本海軍 川西 局地戦闘機 紫電 11型甲 プラモデル 60768

 

タミヤ 1/72 ウォーバードコレクション No.68 日本海軍 川西 局地戦闘機 紫電 11型甲 プラモデル 60768

…なさそうだな。

それはタミヤだと説明書通りに黙って作ればピタリと出来る。その代わりに完成した時の感激はさほどでもなかろう。誰が作ってもピタリと出来るのはそれはそれでタミヤってスゴイなあ、とはなるけど自分の手柄じゃあない。

しかしアオシマなら「この排気管、俺が苦労して作ってんか!」(城陽弁) という気分に存分にひたれる。その充足感は”プライスレス”……?と負け惜しみを言ってみる。え?タミヤ紫電て640円?……「かしこ」はタミヤ買いなはれ。

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紫電-2「紫の下ごしらえ」アオシマ1/72製作記

国籍マーク・スジボリ・リベット

前回苦労した国籍マークのケガキをパーツの段階でやっておく。

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こんな作り方したのは生まれて初めてだ。

せや、ついでやさかい筋彫りもリベットも片付けてもたろ。

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エルロンはいかにも下手くそのブログ主がリューターで彫った様に見えるが、これはキットのオリジナル。

主翼の日の丸は縁無し。
ブログ主の考える紫電チャームポイントその1「翼下の機銃のゴンドラ」は主翼一体成型。

勇ましいというか、たくましいというか、ものものしいというか……さぞや盛大な空気抵抗を生んだことだろう。

中翼の水上戦闘機を無理やり陸上機に改造する
→脚柱が長くなる
→主輪が収まらないので脚の取り付け位置を最大限外側へ持っていく
→機銃が収まらなくなる
主翼下にブラ下げる、

という泥縄玉突きシステムが発動した結果。紫電らしくていいじゃないか。

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翼上面のエルロンのモールドはそこまで目立たない。

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スジボリ、リベット は普通は組み上がってからの作業だが、パーツの段階でやってしまうのは半身で固定しやすいから。合わせ目の部分には打たずに後でラインのツジツマが合う様に仮組みした時にアタリをつけておく。左右上下を貼り、接合部を整形してからその部分だけ改めてスジボリ、リベットを打つ段取り 。真っ当なモデラーはこんなことはしない。下手っぴいならでは。エエやんかいさぁ〜。

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銃口を彫り直す。排気管も削って整形。一番上の排気管は向きが違うのでカット…してもうた…あ〜あ…♩い〜やや、いやや、先生にゆ〜たろ♩

コクピット

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リニューアル版のコクピットはなかなか精密であります。両サイドのサッポロポテトバーベQ味みたいなのはフレームの表現。

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完成後はほぼ見えなくなるのだが、そこは「組み立てる楽しみ」という奴である。サッポロポテトのフレームはこのようにコクピット側に取り付ける様になっている……そう上手くいくだろうか…

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仮組みしてみると案の定、フレームが胴体から浮いてしまう。

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なのでこうしてフレームのパーツを先に胴体側に貼りつけておくことにした。

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計器板支持架はこのフレームに取り付ける様になっているので片方に瞬間接着剤で無理やり止め付け、もう片方は切り飛ばしてしまう。これがタミヤセガワだったらピッタリバッチリでこんな工夫は必要なかったろう。ま、工夫するのも楽しみのうち、である。(追加したシートベルトはマスキングテープに金具などを鉛筆書きしたもの) 

パイロットの新旧比較。

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左が旧、右が新。

「ヘーイ、youハ トッテモsmallデスネー、チャント食ベテマスカー」
「仏門に帰依する身ゆえ、過食は戒めております」

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旧版のコクピットに旧版のパイロットを乗せたところ。

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リニューアル版のコクピットに乗せたら、、、

「オーノー、ケツ入ラナイデース、コレジャ風防シマラナイネー」

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「拙僧は難なく収まり申す、これも日々精進のたまもの」

…いや、そもそもパイロットは乗せない主義です。

「左様か、諸行無常の響きあり」

 

 

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紫電-1「アオシマの良心」アオシマ1/72製作記

それではアオシマの1/72紫電11型甲の製作に入ろう。 
実はこのキット、発売後十数年ほどたった頃だったかに一度リニューアルされている。紫電改のカウリング形状にやや致命的なミスがあって、そちらの改訂に合わせたのだろう。タミヤ紫電に対抗する意味もあったのかもしれない。

青島文化教材社 1/72 真・大戦機シリーズ No.1 日本海軍 紫電 11型甲 プラモデル

青島文化教材社 1/72 真・大戦機シリーズ No.1 日本海軍 紫電 11型甲 プラモデル

ヤフオクやメルカリなどで安く出されているアオシマ紫電紫電改のキットはよくみると旧版が多い。買うだけ買って作らない模型マニアが「あ〜あリニューアル版が出ちまったい。しゃあねえなあヤフオクにでも出すかあ、どっかのバカが買うかも知んねえかんな、ウヒヒ」てなこと言って出品してるのやもしれぬ。

かくいう自分もウッカリ安さに釣られそうになったが、そこは「カシコ」なのできちんと店頭で確かめてからリニューアル版を買った次第。(カシコ=関西弁で「賢い人」のこと。「勉強ができる」「頭が良い」よりももっぱら「分別がある」「良い子」というニュアンスで使われる。例「わしカシコやしバイクなんか乗らんかってん」)

パーツ

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ともかくプラモメーカーが一度出したキットを改修するというのはなかなかないことだ。メーカーの良心、熱意の現れだと思う。紫電改のカウリングはマニアに随分と叩かれただろう。そうなるとアオシマの”意地”かもしれない。 21世紀のアオシマは一味違う、タケヤミソ。

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リニューアルといっても既存の金型には手を入れられてはいない。新しいパーツがランナーごと追加されている。この方が開発コストが低いのだろうか。だとすればなかなかうまいやり方ではある。上のランナーは整備するときの木製支持台などでいわゆるオマケ。ジオラマにすれば面白そう。

エンジン 

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旧版のエンジン。前後一体成型。まあほとんど見えなくなるから個人的には別にこれでも文句はないが。

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リニューアル版エンジンは前後に分かれてプッシュロッドも再現されている。シリンダー冷却フィンの彫刻も上部は縦、と芸が細かい。環状の成型ランナーも力が入っている証拠だが刃の細いニッパーでないと切り出せないだろう。減速機周りも細かくパーツ割りされスピンナーまで左右に分かれている。

コクピット

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旧版のコクピット。上にデカールを貼るスタイル。

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リニューアル版。腕の立つモデラーだったら塗り分けてくんな!といいたげなディティール。計器板の支持架までリアル。照準器はクリアパーツで別部品。こう見ていくと初心者や年少者などには旧版の方がむしろ作りやすそうだ。

あえて旧版を安価で入手するのもアリか。(その場合デカールが使えるかどうか心配だが)面倒クサがり屋の自分も一瞬旧版パーツで作ろうかと…いやしかしアオシマさんの心意気ってモンがあらあ。報いてやらねえといけねえやなあ。

パイロット

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旧版のパイロットはハセガワなどでもよく見かけるタイプ。おそらく祖先はエアフィックス。つまりはアングロ・サクソン系の体型。

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こちらがリニューアル版パイロット。ふた回りは小さくモールドはむしろダルい。(最初見たときは新旧逆かと思った)静かな表情と上体はむしろ奈良の鑑真和上像を思わせる佇まい、一方下半身はオシッコ漏らした幼稚園児みたいである。東洋的と言えば東洋的だけどグラマンと死闘を繰り広げる戦闘機パイロットにはあまり見えんぞなもし。

仮組み

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水上戦闘機強風から派生した紫電の特異なフォルムが良くわかる。

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特徴的なフィレットと主翼の間には何かの間違いか、と思うほど隙間があく。何かの間違いであって欲しい。

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胴体上面にスジボリが何にもないノッペラボウ。それとやや甘い胴体機銃口などがディティールアップポイントか。

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「必殺ロケット噴射ー」と叫びたくなる様な豪快な排気管。カウルフラップもなぜかここだけ凸モールド。往年のアオシマタッチを思い出させて微笑ましい。胴体一体成型なのでリニューアルの救いの手が伸びなかった模様。ここは目をつぶった方が賢いんだろうなあ…

 

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