ヘルキャット、というのはそういう種類のネコ科の動物がいるわけでなく、直訳すれば"地獄猫"だが、スラングで”性悪女”などの意味もある。スピットファイア同様、こういった悪いイメージのネーミングセンスが欧米人のよくわからないところである。日本で言えば陸軍三式偵察機「般若」だとか海軍夜間戦闘機「夜叉」だとか命名するようなものだろう。ヤンキーじゃあるまいし。あ、本場のヤンキーか。
グラマンは伝統的に艦上戦闘機に猫がらみの名前をつける。F4Fのワイルドキャット(山猫)に始まり、F6F"ヘルキャット"(性悪女)F7F"タイガーキャット"(トラ猫?) F8F"ベアキャット"(熊猫)とcatつながりが続き、ジェットの時代になるとパンサー/クーガー、タイガー、とややありがちなネーミングに陥るもF-14"トムキャット"(雄猫)ではcatが復活。、、、と今更書くのもはずかしいくらい飛行機モデラーの常識だが、同社がCATにこだわるのは社長のルロイ・グラマンが飼ってた子猫の"ディーノ"が病気で亡くなったのを偲んで、、、というのは大嘘。
あばずれ娘の凸モールド
翼面や胴体前部は凸モールドをペーパーで削り落としスジボリを掘ってメリハリをつけてやる。
スジボリは"運河"とは言わぬまでも"用水路"程度には太く掘っておく。細いと筆塗りなので埋まってしまう、、、とは繊細なスジボリが出来ぬへたっぴの言い訳である。実のところ、筆をこの筋彫りで止めて溜まった絵具を流し込む、という変な目的もあったりする。
特に翼の折りたたみ部分はPカッター(通称キョロちゃん)を斜めに入れてケズるなどするとモデラーの自己満足に大変効き目がある。「ここでパッタァーン主翼たためますんやー」と見えたら幸い。この折りたたみ方にヒントを得た社長のルロイ・グラマンがクリップとケシゴムで廊下にネズミの絵を描いて和尚さんを驚かした、というのは大嘘。
全身リベットの妖しき毒婦
スポット溶接を多用したコルセアと違ってヘルキャットは実機写真でも結構リベットが見える。結構毛だらけネコリベットだらけ。胴体後半は沈頭鋲ではなく、外板もタケノコの皮状になっていて”スティングレイ”に出てくる”ギントト=メカニカルフィッシュ”みたいである。
さすが”グラマン鉄工所”と言われただけあって必要最低限の仕上げに留めて生産性を上げる合理的な考え方だ。その点でもコルセアとは対極をなす。 ヒコーキ大好きモデラーとしてはそういう所こそ表現したくなるってぇもんでやしょう。
リベット はいつもお世話になっておりますお手軽リベット ローラーでコロコロコロー。“いつも”と入力すると続いて“お世話になっております”が変換される悲しき零細自営業。
え?ちょっといがんでやすかい?これくれえぁ味ってもんでがしょう。まったく陽気のせいだね。
爆裂ボディの性悪女
リベットを打ってるとどこからともなくニンジャファイターが現れる。
むむ、面妖なるその水太り、何奴じゃ!?
オー、ジャッパニーズニンジャゼロ!リトルリトル蚊トンボネー
うぬ、与作の赤ベコかと思うたわ。さぞ身が重かろう。
ハッハー、2000馬力アルカラネ、ノープロブレーム。
というわけで早くも士の字に。
遣り手婆あのカウリング周り
あっさり出来すぎたのでやや拍子抜け。要らぬディティールアップをしようと思いつくブログ主。小人閑居して不善を為す。排気管に伸ばしランナーをドリルで掘ったものを3本まとめてくっつける。
なんでそんな面倒なことをするかと言うと丁度良い太さの真鍮管が手持ちに見当たらなかったから。買いに出るのもチト憚られるStay Home. オヤジの趣味の買い物など要でも急でもないのが通例だが、なかでも「ナナニイのヘルキャットの排気管」ほど不要不急なものはちょっとほかに思いつかない。
それにしてもアッサリ味のカウリング。これじゃまるで京都アヤの小路フヤ町の昆布屋「仙波」のオボロ昆布である。
ゴリゴリと用水路スジボリを施し、、、
カウルフラップ周りを削り込んでメリハリをつけてやる。
ここガッバー開きまっせぇ〜、というふうに見えたら幸い。
用水路掘りしてリベット打ってこんな具合。いかにもアメリカはペンシルバニアのグラマン鉄工所製のカウリング!という感じ。
カウリングをつけてみるとなかなか迫力の面構え。どうでえこれでこそ”宿敵グラマン!”って気がしてくるじゃあねえか。主翼の12.7mmx6門は切り飛ばして開口。あとで真鍮パイプを埋め込むつもり。