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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

「透明部品の罠」レベル1/72ファルコ-9

古いキットの場合、透明部品が鬼門となることがよくある。違うキットのキャノピーかと疑うほど胴体と合わない、あるいは箱の中から氷砂糖がコロンと出てきたと思ったらそれがキャノピーだった、もしくはどこを探しても透明部品がなく、そもそも「ハズレ」だった、、、などなど60年代透明闘争における悲惨な事例は枚挙にいとまがない。

しかし、レベルファイターシリーズの美点はここでも健在で、風防は分厚くはあるが透明度や形状、合わせなどはそこまで悪くない。コイツはこのまま使うつもりだった。ファルコは開放座席で風防は小さな風除け程度だし、上翼が被るのでどうせあまりよく見えないんだから、、、

 

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「オレにはよく見えてるぜ」


ああ、それなのに、風防を指でつまんでコンパウンドで磨いていたらパキリと割ってしまったのだ。あっちゃー。いらんことせんかったら良かったー。とっほっほ。と泣いたところでもはや後の祭り、クライイング アフター カーニバル。

単純な形だし前部だけなので塩ビのヒートプレスで新造するほかない。ようやく最後のステージ入り口にたどり着き、話しかけた門番の小動物が凶悪大モンスターに変身、いらんHPを削り取られる、というRPGでありがちなパターンに陥る。


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木型をつくるまでもないから、キットの風防の枠を落として整形、エポキシパテで裏打ちして原型にする。足をつけてバイスで固定したのち、熱した塩ビ板を押し当てて絞り出す。

しかし「風防を絞る」なんて30年ぶりくらいだろうか。さほど難易度が高いテクニックとも言えないが、そんなことをしないといけないキットは避けて通ってきたのだ。それどころかここ十数年はほぼタミヤセガワその他国産キットばかりのヌルい模型人生だったのだ。井の中のカワズ君子危うきに祟りなし、フロッグ プリンス ネバー、、、ええと。。。

 

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後ろに見えるのは加熱用のロウソク。溶剤の染みたティシュなどが散乱している机だから透明カバーがあると少しでも安心かと思ってご仏前の灯明台をちょいと拝借、、、などしたらご先祖様のバチがあたってはいけないので模型専用に買ったカメヤマローソク製。ゆらめくロウソクの炎を見ていると心が鎮まり綺麗な風防が絞れるというご利益が、、、残念ながら煩悩にまみれた自分にはなかった、、、ホ、まだまだじゃの、コオロギよ。

 

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例のごとく、いくつか作って形の良いものを選ぶのだが、どれもいまひとつキレがない。原型がプラなので熱でタレてきて大量生産は無理だからこの辺で手をうつ。普通ならヒートプレスした風防というのは強力なアピールポイントになるのだが、、、完成すると前述のようにほぼ目立たなくなる。

一段上の仕上がりを目指してチャレンジしたわけではなく、自らの至らなさで仕方なく増えた作業というものは精神をいたく蝕むようだ。情熱総カロリーはぶっかけうどんレベルに急降下。

 

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この後サフェーサーを吹き付けて各部のアラを修正後サフを吹き直す、の繰り返し。地道で面倒な作業ではあるが、心を無にして乗り切るほかない。一切苦厄、色即是空、ギャーテーギャーテーハーラーギャーテー、と前述の灯明台が役に立ったことは言うまでもない(,,,ウソ)

ここにいたって我が「情熱カロリー総量」は「冷奴にレンコンの酢のもの、、、もはや精進料理である。

ともかくもここまでたどり着いた。ああこれでようやく内地に帰れる、いや風呂に入れる、いやビールが飲める、いや塗装ができる。。。

 

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「風を切って飛ぶのが飛行機」レベル1/72ファルコ-8

前回、不死鳥の如く復活した模型製作情熱カロリー総量に物を言わせて一気に塗装直前まで持っていきたい、ファルコである。

手始めに情欲の、、、
なんちゅう変換するか「上翼」のエルロン操作ロッド、キットではただの棒だったのをディティールアップ。いささかオーバースケールだが「こういう仕組みでエルロン(補助翼)を動かしているのだ」という模型的表現。あわせて「羽布張りの複葉機独特のクラシカルさ」も強調したい、という意図もある。

ただ単に「細かいことやってるんだぜ!」と自慢したい訳ではないのです。


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プラ板と伸ばしランナーで誰でもできる簡単なお仕事。ただし上下左右で4つあるのでめんどくさい。

 

さあていよいよ、よく監視中だ、、、
なんちゅう変換するか「翼間支柱」だ。キットの支柱をとりあえずパーティングラインだけ落として眺めてみる。

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太めの小学生が腕相撲しているようなボッテリ感と未成熟感がないまぜになった雰囲気。測るとこれも1.3mm程あるから72倍した実機なら9cmか。それじゃあ丸太小屋の柱だ。

これでもファルコは戦闘機だ。最大速度だって400km/h以上出る。「たったの400km/h!?」とスピットさんやメッサーくんは笑うだろうが、スパッドちゃんやソッピース坊やから見れば「夢の400km/h!!」だ。

自分はバイクに乗るので風圧というものを生身で味わう。ファルコの半分くらいのスピードしか出ないが、その速度ですら風圧は凄まじい。丸太を背負って走れば体が吹っ飛んでしまう。ジャンケンしたらグーしか出せない。対向車線の連中はなぜかチョキしか出してこないから負け知らずだ、、、え?ピースサイン?何なんそれ。

 

ともかく、この丸太小屋を少しでも「風を切って飛ぶ飛行機」らしくしてやりたい。

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こういうのを、、、

 

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こんな具合に。。。

 

脚のステー同様に真鍮パイプを潰して一本一本作ることも頭をよぎったが、片側8本左右で合計16本、そんなのきちんと組み上げられる気が全くしない。翼も支柱もてんでに傾くこと請け合いだ。それじゃ「へべれけで帰る磯野波平みたいな複葉機になってしまう。

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ここはキットのままでいくが良策とみた。トラス状の成形と巧みなパーツ割りのおかげで組めば支柱と翼の角度がピタリと決まる事は40年前の経験で知っている。何度も書くが、精密度よりも組み立てやすさ重視なのがレベル・ファイターシリーズの美点だ。これがもしエアフィックスのG50フレッチアだったら手を出す気にさえなっていなかったと思う。

美点は最大限に活かす、それが私の主義だ!と赤い仮面の少佐も言っている(?)

手間は掛かるがキットの支柱を削って薄くしよう。それでも「酔った波平」よりはシャンとするはずだ。つまるところ何の為にディティールアップするのか、だと思う。前述の様に精密さと超絶技巧で「そこまでやるか?!」と言わせたい訳ではない。ただただ、空飛ぶヒコーキらしく見せたいだけだ。手当たり次第に細部を凝りまくった蜘蛛の巣みたいな完成品よりも、ディティールアップは的を絞って極力キットパーツを活かしたスッキリ仕上げの方が自分はお好み。

 

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支柱にアートナイフの刃を立ててヒーヒー削る。

前縁後縁の角を斜めに落とすダマしテクはここでも有効。プラモとしての一定の強度を保たねばならないから、薄くするといっても限度がある。最厚部で0.7mm位までは追い込んだが削っていると支柱がだんだんヒヨヒヨしてきて顔がひきつる。途中で折れたり曲がったりしたら二度と立ち直れなくなりそうだ。

パーツのW字の底の部分は下翼上面にレンガが飛び出てるみたいで目立ってみっともないから可能な限り彫り込むことにした。これも強度と相談しながら慎重に丸ヤスリで削る。やりすぎると完成後に支柱がひん曲がる、なんてことになりかねない。(画像下のパーツの方はまだ削っていない)

ま、なんとか飛行機の支柱らしくなってくれたようだ。

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ファルコ、風を切って飛ぶの図

折れそうで気は使うわ、単調だわ、16本の薄さ加減も揃えないといけないわ、やってられないワ、と最後は百恵ちゃんにまで愛想つかされる難作業をようやく終えつつも「情熱総カロリー」は「汁なし坦々麺の冷やもり」をなんとかキープ。

 

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「汁なし坦々麺 冷や盛り」お上品に頂いては旨くない。グッチャグチャにかき混ぜて食えば至福の味。

 

しかし、これで、これで遂に塗装に入れる、、、

 

 

あっ風防残ってるやん、うそ〜ん。。。

 

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「情熱量保存の法則」レベル1/72ファルコ-7

当初は史上最強(当社比)「カツ丼定食」クラスを誇った我が「ファルコ製作情熱カロリー総量」であったものの、度重なるハードなワークアウトで消耗した結果、、、

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湯川亭 「カツ丼定食」640円

 

今では「茶そば、いなり寿司セット」くらいの細々とした情熱量の有様。夜、早く塗装に入りたいよう、小物なんかもう後回しにしようよう、と泣くのであった。祈るよりほか、わたしには、、、いやいや、じゃあまあそうしようかね。

 

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京都宇治「茶そば いなり寿司セット」1400円 (...カロリーと価格の反比例が激しすぎか)

 

ところがギッチョンチョン、ファルコは複葉固定脚機なものだから脚と支柱は塗装までに仕上げておかないとならない。支柱パーツはただの棒がW型につらなった味気ない部品。いやらしく鋭角の隅にパーティングラインを浮かべて箱の中に並んでるそいつらを思い浮かべるとゲンナリする。

そういう訳でどうにも机に向かう勇気が湧いてこない。夏休みの宿題で無味乾燥な計算問題のドリルだけが手付かずに残っている、あの感じだ。一旦こうなると自分の腰は排気タービンの壊れたP-47並に重い。

そんな時はもう無理をせず、あえて模型作りから離れてしまう。この狭い暗い工房から出て、バイクに乗ったり自転車で出かけたりオムライスを作ったりなどする。

もちろん資料本やwebで実機写真を眺めたりもするのだが。

単に気分転換という意味合いだけでなく、自分が楽しいと感じる事、面白いと思う事をやる。

 

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するといつのまにか「さ、主脚でも付けとこか」と軽く立ち上がれる様になっている。「情熱の炎」を燃やし続けるためには、自らの手で「自分自身」「薪」をくべるものだ。そうして温められて排気タービンが回り始めたP-47はあたかも銀の龍の背に乗ったような上昇をみせることができる。それは〆切やノルマなどで追われてイヤイヤ机に向かうことも多々あるが、好きでやってる趣味なのに他人に尻叩かれるなんてツマラないではないか。

 

さて、その主脚。

複葉固定脚なのに尾輪だけが半引き込みで「理解に苦しむ」なんてひどい言われ方をしているファルコである。旧式の空気抵抗のカタマリのくせに細部を洗練させても無駄無駄、ということであろう。しかし生来の「二枚羽根で足丸出し」の欠点は甘んじて受け入れた上で、他の部分で少しでも空気抵抗を減らそうと出来る限りの努力をしているのだ。アレはアレなりに。。。

 

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ほんでも空気抵抗のカタマリちゃうんコレ!と思わず言いたくなる脚カバー。そんな印象の殆どはしかしこの開口部のプラのブ厚さからくる。見た所1.2mmはありそうで、72倍すれば80mm、これじゃタイガー戦車の側面装甲だ。イタリア上空にはシャーマン戦車は飛んでいなかったはずだからもっと薄くてもいい。

 

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なのでナイフや丸めたペーパーなどでエッジの角を落としてやる。それだけで不思議と板厚も薄く見えてくる。ちなみにタイヤがないのは、挟みこむの忘れた!のではなくて「Cの字」にカットしておいて塗装後に素知らぬ顔してはめ込む段取り。

40年前に製作した時の記憶では脚をささえるステーの強度がフニフニで頼りなかった(意外と覚えているものだナ)。なので真鍮パイプで置き換え補強することにした。せっかくなので真鍮パイプは叩いて平たく潰す。コイツも空を飛ぶ飛行機、風の中で空気の流れと戦っているんだ、精一杯、馬鹿は馬鹿なりに。。という表現だ。

 

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脚カバー開口部の薄さは上からだとほとんどわからない。それで外形の角を丸めて整えてやる。いかにも風を切るためのフェアリングです、という気分で削る。気分?そう気分。そんなこと言うと、やれズメンミローだのシラベローだのウスバカゲローみたいなうすらバカがわいてくる。そんな羽虫は端から叩いて潰す。

実機のカバー上部には滑り止めみたいな謎の”出っ張り”が3本ある。何によらず”出っ張り”というものはすべからくチャームポイントになる。決して見逃してはいけない。それは女性でもイタリア機でも同じことだ。

細い伸ばしランナーをしごいで脚カバーに添わせ、流し込み接着剤をひと塗り、表面がトロけたら前後の端をペーパーで落とす。その上から溶きパテを薄っすら馴染ませる。極細の竹串を使い、京都三条今出川の和菓子職人のごとき繊細さで仕上げる。

 

下翼後縁のオイルクーラーのアウトレット(排気口)

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前半分だけエポキシパテで作ってあった後端部分をプラ板で継ぎ足す。

 

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全部エポパテで造形しておかなかったのは、やはりエッジの薄さ感を強調するための言わば「仕込み」。各開口部のエッジがシャープになるだけで、機体全体が薄い金属板で作られているように思えてくる、すなわち飛行機らしく見えてくる、という、三段論法というかタンタンタヌキのだまし技というか。。。

 

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これが案外上手くいって「スパイ大作戦」のエンディングのめでたくニンマリ状態となる。上手くいくとヤル気も出てくる。下手を打つとテンションが下がる。これがジュールの「情熱量保存の法則」だ。ウソ。

 

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アウトレットの正確な形状もハッキリわからない。わからないから何もしない、では人間生きてて面白みがない。自分なりに「風の流れ」を意識して造形する、というかデッチアゲる。このような勝手気ままが出来るのは資料の少ないマイナー機だからであって、これが零戦、大和、タイガー戦車だとそうはいかない。

 

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この実機のオイルクーラー周りの空力処理の仕方を見ると、複葉機とは思えない洗練度だ。カウリング下の古臭いキャブレターインテークとはもはや別人、いや別機の感すらある。このように古さと新しさが混在しているところがファルコの特徴で、これを理解不能なラテン脳の仕わざと切って捨てるか、未知の世界の不思議な魅力ととるかは、各人次第。自分はもちろん、、、

一方、好敵手のイギリスのグラディエーターなどは全身古式蒼然だ。オイルクーラーなんかインテークどころか平ぺったい本体むき出しで操縦席前にドッカと載っけただけ、といういささか破れかぶれなレイアウトだ。空力とかカッコ悪いとかのレベルですらない。これでは敵弾を受けてしまうだろう、、、とは思わないのが英国式だ。被弾したら風防オイルまみれだろう、とも思わないのが英国式だ。それはそれでまた魅力的かも。。。

 

そんなこんなで我が 情熱カロリー総量は奇跡のV字回復を遂げ「特選親子丼セット」レベルになった。

 

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京都東山 「親子丼 鶏ゆずうどん」 1050円   コレは旨いよ〜

 

といったところで今回はこの辺で、、、

 

 

 

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腰痛ライダーのシート交換

いったん話は飛ぶ。今度はバイクの話題。

前傾姿勢を嫌ってローシートにしていたのを、このたび純正に戻した。自転車の方ではあれほど前傾姿勢を修正していたのになんだか一貫性に欠けるかもしれない。

これでも本人のなかでは理屈は通っているのだけれど。。。

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「小物始末記」レベル1/72 ファルコ -6

懸案のカウリングの目処がついた前回、前々回。

 この勢いの衰えぬうちに小物パーツ共を片っ端から始末する事にする。小物といっても古いキット、何ほどのこともあるまい、とのっけから威勢良く飛び出した威丈高の高飛車だったが、、、

 

それでは手始めに、

エンジン

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レベルのキットのエンジンは後列に排気管などもモールドされていて当時としては力作、ただしころんと小太りのウッカリ八兵衛だ。一方手持ちのハセガワの零戦の「栄」は小股の切れ上がった湯上がりのかげろうお銀といった感じ。

ファルコのエンジンはフィアットA74.RC。MC200サエッタ、G50フレッチアなどと同じで出力は離昇870馬力、というから「栄」と同程度と思い込んでいたが、Wikipedia英語版によると直径1195mm、31.25リッターとある。「栄」よりも一回り大きい「金星」「ツインワスプ」クラスのようだ。

 

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Fiat A74.R.C

A74も「金星」も「ツインワスプ」も初期型は800馬力台で始まっている。みんな遡れば源流は似たようなところの遠縁同士なのかもしれない。本家本元の嫡男「ツインワスプ」の方はスクスク育って1200馬力を得る。東洋の分家筋である「金星」も忍法「みずめた」で1500馬力を絞り出した。A74のみが発展途上のまま足踏みしてしまったようだ。どうやら長靴の国では人生はもうちょっとだけ複雑なのだろう。

 

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プラグコードはあっさり省略。あいにくほとんど見えないものに手間暇掛けるほど律儀でも几帳面でもない。ただし減速機周辺の補機類は伸ばしランナーなどでそれらしく追加した。実機はスピンナが小さいのでこのあたりがチラリと見えるのだよ、むふふ。

 

f:id:sigdesig:20190819212503j:plain、、、ホラネ

カウリングを詰めた分、エンジンが前に出過ぎてしまう。せっかくの後列の排気管だが、んなもなあどうせ見えやしねえんだ、とエンジン後部をばっさりそぎ落とす。すると今度はサイドがつっかえて入らない。なあに構うこたあねえ、とシリンダーヘッドをニッパーでばっちんばっちん切りとばす。なんともひでえ模型作りをしやがる。

  

次は勢いに任せてカットした

排気管

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熱したプラ棒を伸ばして曲げて作る。案の定、左右で太さやカーブが揃わない。ううむ未熟だ。例によって何本も作ってから形の揃ったものを探す。栄えあるベストカップルに選出されて喜ぶプラ棒二本をとっ捕まえて、無慈悲にもドリルで穴を開けリューターでグリグリおし広げる。「あう、そんなご無体な、、、」

 

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フッフッフ、奥まで貫通するまでもあるまい。後はツヤ消し黒でも流し込んどけ。

そして

機銃

ファルコは機首にレダSAFAT12.7mmを2門装備する。このSAFATは名機関銃ブローニングM2のコピーらしい。ただし性能はコピーしきれず、本家M2よりも発射速度も遅く銃弾の威力も弱かったというから、、、ぱちもん?

余談だが、アジアの日出づる処の陸軍は何を思ったかそのブレダ機関銃をさらにコピーしようとした。優等生の答案をカンニングした劣等生をさらにカンニングする様なもので、さすがにそれなら直接写したほうが良かろう、と生まれたのがM2の直接コピー版ホ103。めでたくエンジンの音が轟々いうらしい全金属製低翼単葉戦闘機に搭載されたはいいが、何故か銃弾だけはM2ではなく威力の弱いブレダのものを使った。よほどイタリア娘が好きだったのだろう。いやわかるわかるその気持ち。

 

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実機写真からは銃身の根元に大きなカバーが見て取れるのでこれを再現する。
いきなり鼻に割りばし突っ込まれるファルコ。

「フゴッ。や、やめとくれやす」

 

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安ずるな、機銃の溝も彫っておいてやったわ。

それから機銃の銃身
キットの銃身はただの棒が2本、ランナーにとろけ混んでいる。40年前はボールペンの空芯を使った記憶がある。炙って伸ばしてやるとパイプ状のまま細くなる。小僧、なかなかやるな。
40年後の自分はプラ棒をリューターにくわえ込んで彫刻刀をあてて削る。挽物の要領だ。銃口部分がわずかにラッパ状(フラッシュハイダー)になっているようで、そいつを再現するためだ。小僧とは違うのだよ、小僧とは。

 

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どうも太すぎるような気がしてきた。なあに機関銃なんてもなあ太くて逞しくなくっちゃいけねえ。。。弾痕主義、なんてね、字が違うか。

 

エアインテーク

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下翼付け根のオイルクーラー吸入口はすでにドリルで開口済み。カウリングは排気管の穴を開け、スジボリ、リベットetc.

おお、なんと勇ましい。。。しかし、どことなく日本機みたいにも見えるな。

はてなにゆえ、と実機写真とよく見比べる。とカウリング下のキャブレターインテークがずいぶん違う。実機ではこんなに空力的な滑らかさはなく、鉄板曲げただけの鉄工所の換気筒みたいだ。もっと単純で無骨で素っ気ない。

 

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やはりイメージだけで手を動かしてると見慣れた日の丸飛行機に似てしまうのだろうか。いかんいかん。

 

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そういうことじゃ、覚悟いたせ。

「な、何しやはりますのん」

 

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切る。

「あ〜れ〜」

 

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吸入口をプラ板で作り直し。前半分は丸みを強調し、後ろ半分は角張った形状に削る。

 「もぉ、せっかくエエ格好しとったのにぃ」

次はいよいよ、 

プロペラ

今宵の虎徹は血に飢えておるぞ。

 

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お主、風ぐるまの弥七かナギナタのお千か。実機に似てる似てない以前に、そもそもプロペラに見えんではないか。 

 

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試しに削ってはみたものの、だんだんとチビてくる割には一向に似てこない。

「似いひんて、ウチ伊太利屋生まれやし」

嘘を申せ。その方、ハミルトン・スタンダードのライセンス生産と調べはついておる。。。はて、待てよ、確か同じハミルトン・スタンダードの1000馬力級戦闘機がアジアのどこかにあったような。。。

やおら長谷川の零戦52のフタを開けると、やはりにらんだ通りプロペラが2組。しめしめ、ひとつ頂くことにしよう。他キットからの流用はご法度だが、どうせ片方は余るのだから無駄な殺生ではない。なあに52は必ず成仏させてやるゆえ。。。

 

f:id:sigdesig:20190807175201j:plainセガワ1/72零戦52型の余ったプロペラ(21型用)

ほお、なかなかの器量ではないか、引っ立てい。

「いや堪忍え〜」

 

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でこっちはもうお払い箱、パッツン。

「は〜れ〜」

 

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少し根元を詰め、形を整えてスピンナもつける。

「ヨヨヨ、イタ公のとこに売られてしもて〜」

 

 なんだか極悪非道の京都所司代という感じになってきた。
ここで息切れ。まだ脚と支柱が残ってるが。。。

 

といったところで今回はこの辺で。

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「バルジ大作戦」レベル1/72 ファルコ -5

ファルコのカウリングには小さなバルジ(出っ張り)がたくさんある。

これはエンジンのシリンダーヘッドをクリアするもので、この時代の機体にはよく見られる、カウリングの直径を可能な限り小さくして空気抵抗を減少する効果を狙ったもの、とされているが、果たして。

確かに同じイタリア機のMC200サエッタなどはカウリングがグラマラスにボインと出っ張っていてカウリング直径は随分小さくなっている。(あのボインボインはそれはそれで抵抗になりそうだが)

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MC200サエッタ

 

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CR42ファルコ

サエッタ姉さんのゴージャスボディに比べるとファルコのバルジはチョボチョボで小学生、、、が蚊に刺された程度。カウリングもさほど絞られていない。空力の他に何か理由があるのだろうか?熱膨張の為のクリアランス?、あるいはそもそもエンジン寸法にバラツキがあるとか?、、、製造工数は確実に増えるはずだから当時の工員は喜ばなかったろう。後世のモデラーだって嬉しくないゾ。

1960年代のレベル社はこのバルジの存在をあっさり無視してくれている。1980年代の自分もスルーした。さて2019年の君はどうする?

折角いい形になったカウリングを台無しにしたくないが、ここまできたら乗りかかったイタリア機だ。カウリングが温存できて、工作が簡単で、なおかつ実感がありそうな、、、そんな都合のいい方法があるものか、いやないものか、夜な夜な考えた。

まず思いつくのは、プラペーパー上に瞬間パテをぽつぽつっと垂らしてみて、上手くいったらそれを貼り付けちゃおう、という安直かつ姑息なニホンカワウソ的手法
 

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試してみたら小学生の夏休みの工作か、といった有り様で自分の技術レベルがよくわかって泣ける。いや、そもそもフリーハンドじゃ間隔が揃わんのだ。

問1) ファルコのバルジの間隔を計算して求めなさい

ええと、まずカウリングにノギスをあて、測った直径に3.14を掛けて円周を求めます。前列の気筒数は7、バルブヘッドは1気筒あたり2カ所あるから、円周を7x2の14で割る。最後にスケールの72で割ります。ゼエゼエ。これをデバイダーで測って鉛筆で下書き。

 

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間隔はOKだがやはり瞬間パテでは形が揃わない。複列14気筒でつごう28個もあるのだから腕が足らぬ根気が足らぬ。足らぬ足らぬは気合が足らぬ。

さてそれではどうするか?

真正直に伸ばしランナーから切り出して一個一個貼り付けようか、、、28個もか、そんなド根性ガエルではない。テンプレートを作ってスジボリで逃げるか?いや手間の割には効果が少ない。

ある夜、寝床の中で思いつく。

「薄く伸ばした金属板の裏側からキットのエンジンを転がして跡をつける、てのはどうだろう?」

 

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これはこれで味があるけれど、ちょっと笑える仕上がりとなった。

ある晩、布団の中で思いつく。
「金属板ではなくプラペーパーの裏側から、エンジンではなくスパチュラで押し出したらどうだろう?」

 

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これはよさそう。色々試して半田付け用のアシスト棒の先を削ったものでクイクイ。最初は力加減がよくわからないが、慣れてくると形も揃ってくる。

何枚か作って出来の良いのを選抜しよう。となると、いちいちプラペーパーに線を引いてると大変だ。なので手前のマスキングテープ上にあらかじめラインを引いて定規にする、という大量生産システムを思いつく。

次に備えてカウリングバルジをもう1セットくらい作っておいてもいいが、今度レベルのファルコを作りたくなるのはたぶん令和40年くらいになるだろうからやめた。その頃までこっちの心臓が動いている保証もない。

 

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よおしイイ感じ。上の二つの失敗トライからのいいとこ取りで、まったく失敗は成功の母である(一体母が何人必要???)

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コイツをカウリングに合わせて曲げて、、、

 

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どない?

チョボチョボがややオーバーだが、これは確信犯。塗装したら結構ノッペリするからこれくらいのメリハリはあってもいい、という模型的表現、味付け、デフォルメ、外連味。。。

 

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流し込み接着剤で固定。上出来上出来。

しかしカウリングはわずかにすぼまっている様で、円周の終わりの方はバルジの並びが斜めになってしまった。胴体の白帯デカールなどでよく見られる様に直線ではなくわずかにRがかかってないといけないのか。理系の方なら自明の理だろうが当方の数学力はツルカメ算でストップしている。ここまでになると、もはやどうやって計算したらいいのか見当もつかない。結局下の方のバルジは瞬間パテで誤魔化すことに。。。

 

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丸めたカウリングと相まってだいぶと雰囲気が似てきた。

 

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ファルコの三男坊のファルボ、くらいかの。

こうやって手作り感溢れるDIY的な創意工夫で少しづつ実機に近づいていく面白さは、メジャーな機体の現代的な精密プラモ作りではなかなか味わえない。近年稀にみる愉しさだ。いや愉快愉快。ブラビッシモー!

 

 といったところで今回はこの辺で。

 


 

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「飛行機はカウリングが命」レベル1/72 ファルコ -4

さていよいよこのキットの最大懸案事項のカウリングを料理する。40年前の自分ですら「機首がもひとっちゃのう」などと思っていた。生意気なマセガキだったと我ながら思う。だからこそリベンジを期したわけで、今回は何とかしてファルコに近づけたい。

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これが実機のカウリング。

 

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そしてこちら、底の抜けたバケツ 、、、ではなくてキットのカウリング。

実機写真を眺め、ペットボトルのキャップほどの小さな部品をひねくり回し、どうしたものかと数日悩む。イイ歳してちいせえ男だと我ながら思う。

社外品のディティールアップパーツもあるらしいが、そういうのは今回の趣旨から逸脱しているし、そもそも何でもかんでも自分でしたいという自らの信条に反する模型製作において肉、魚、レジン、エッチングパーツ、美少女アニメフィギュアなどを用いることは一切禁忌。なにを隠そう自分は「唯我独尊自家発電」を旨とする鶯谷宗 九条OS派 DX東寺一門である。

馬鹿な事を言ってないでとりかかろう。

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カウリングの先端を落として丸めてみた。まだ実機とは別人だが、とりあえずの方向性はよさそうだ。バリが出ていて窒息しそうな空気取入口もこの際だから切って斜めに削いでおく。豪胆にもカウリングと一体成型の排気管もニッパーでこの際切りとばす。
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開状態の眠たいカウルフラップもこの際切りとばす。どうも「この際」切りとばしてばかりでふと不安が頭をよぎる。フラップをプラ板で作り直したカウリングを胴体に仮組みして様子を見てみよう。 

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ん、悪くない。

カウルフラップの後縁が歪んで(へたっぴ〜)胴体にぴったり合ってないからカウリング直後の胴体を削り込んで誤魔化す。いやなに実機もここは絞り込まれていて、零戦など空冷機によくある、タウネンドリング時代を引きずっている設計だからあながちウソッぱちやってるわけではない。戦間期〜大戦初期の機体はこの様にあたかも空気の流れが見えるようなデザインで自分は好きだ。層流翼、境界層剥離など目に見えない概念的なものになるとわれわれ文系モデラーには理解の域を越えてしまう。

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ドンドン削る。似てきた似てきた、ファルコのいとこのマルコくらいだな。楽しい楽しい。

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もう一息、丸みが欲しい。開口部に真円に丸めて固定したプラ板を裏打ちし、隙間に瞬間パテを盛る。削っていくうちに前縁がヨレてしまう(へたっぴ〜)のでこのプラ板をガイドにする。

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色々な角度から撮った実機写真を眺めながら、先が丸っこいNACAカウリング独特の形状をイメージして削り込んでいく。こういう時に作業場の横に据付けているiPadが大変役に立ってくれる。バッテリーがへたって各種アプリが対応しなくなって家人から見捨てられてクンクン鳴いてた9年目の初代iPad、なのだが、我が工房ではまだまだ現役。

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さらに削る。よおし。ファルコのひ孫のバルゴくらいにはなったかね。
なにより空冷エンジンの飛行機らしい顔つきだ、と思う。
ややイビツだが、空飛ぶポリバケツよりゃマシだろうぜ。

 

といったところで、今回はこの辺で。 

 

 

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